相続により更地を所有している場合、さまざまな費用や手間がかかる。土地の運用を考えるにあたっても、現金や証券などの資産と比べて、税金や管理に関する専門的な知識が必要になる。
図らずも土地だけを所有することになり、そのまま放置しているような場合は、まずは固定資産税を含めてどのくらいの維持費が発生しているのかを把握することが大切だ。ここでは、節税などにつながる土地の有効活用法も併せて紹介する。
土地のみ所有している場合の維持費は何がかかる?
土地だけを所有している場合でも、管理や維持において以下に挙げるような費用が発生している。それぞれについて理解しておこう。
固定資産税
固定資産税は、住宅・マンション・土地といった不動産の所有者全員に課される税金である。不動産を所有している限り、支払い続けなければならない。毎年1月1日時点で土地や建物を所有している人に対し、その年の4~6月頃に納税通知書が届き、4月から始まる1年分の税金が徴収される。
固定資産税は、「課税標準×標準税率」で算出される。標準税率は原則1.4%だが、市区町村によって異なる場合がある。所有地が更地の場合、課税標準は各市区町村の固定資産課税台帳に記載されている「固定資産税評価額」に、負担調整措置を適用した額だ。
固定資産税評価額は、毎年1月1日時点における標準値の正常価格である「地価公示価格」に相当するものであり、3年ごとに見直される。都市計画税・不動産取得税・登録免許税などの税金を算出する際にも基準とされる。
詳しくは後述するが、固定資産税は更地に対して厳しく設定されている税金である。土地に建物を建てると固定資産税が安くなるような税制により、土地をそのままにせず、住宅などに活用するよう誘導されているのだ。
都市計画税
都市計画税は、土地区画整理事業や都市計画事業に必要な費用に充てることを目的として徴収される税金である。固定資産税と同様に、土地を所有しているだけで課される税金だ。毎年1月1日時点で土地を所有している人に対し、固定資産税と併せて徴収される。4~6月頃に届く納税通知書には、固定資産税と都市計画税の両方が記載されている。
都市計画税は、「課税標準×制限税率」で算出される。制限税率は原則0.3%であり、自治体によって異なる場合がある。課税標準は固定資産税の場合と同じく、固定資産税評価額に負担調整措置を適用した額だ。
都市計画税も固定資産税と同様に、土地に建物を建てることで安くなる。税負担がどのくらい軽減されるのかは、後述する。
電気・水道代
所有している土地が更地であったとしても、電気代や水道代が発生している可能性がある。更地はそのまま放置していると草木が際限なく生い茂ってしまい、景観を損ねたり周辺にさまざまな悪影響を及ぼしたりする恐れがあるため、定期的な管理が必要だ。
草刈りをするためには、各種農機具などを用いる必要があり、それらには電気代がかかる。鳥獣などの侵入を防ぐために、電気柵を設置するケースもあるだろう。あまりにも地面が乾いていると、草刈りがしづらかったり、ホコリが舞って近隣に迷惑をかけたりする可能性もある。地面を濡らすには、水も必要だ。
このように、更地であっても放置しておくわけにはいかないケースが多く、電気代や水道代の負担が発生する。電気や水道を使う際は基本料金の支払いも発生するため、使用した分の他にそれも負担しなければならない。
自宅の電気や水道を使える環境なら問題ないだろうが、離れた土地で電気代や水道代を維持費として別に支払っているなら、その負担は決して軽くないはずだ。
管理委託
更地を管理するためには、草木や地面の手入れに加え、柔らかくなった土壌の流出を防ぐ対策や、不法投棄への対策なども必要になることがある。これらにはすべて費用が発生し、自分で対策を行うとなれば手間と時間がかかる。
このようなケースでよく利用されているのが、更地や空き家の維持管理を委託できるサービスだ。土地所有者に時間がなく手入れが行き届かない場合に、草刈りなどの管理や土壌確認、不法投棄によるゴミの処分まで代行してくれる。
更地の委託管理サービスは、月々の費用が発生するものと、管理を依頼するたびに費用が発生するものがある。いずれにしても更地を管理するために発生する費用であり、土地を持っているだけで積み重なっていく維持費であることに変わりはない。
保険
土地を持っているだけで発生する費用には、保険料もある。ここまで解説してきた土地のみの維持費ではないが、土地を所有しているだけでかかる費用の一例として紹介する。
土地と住宅をセットで相続した場合などで、空き家となった建物を取り壊さずに所有するケースでは、万一に備えて空き家に保険をかけておく人が多い。地震や自然災害、放火などに備える意味で保険をかけること自体は問題ないのだが、当然保険料の支払いが発生することになる。
つまり、空き家があることにより発生している保険料に関しても、空き家や土地を活用することで負担をなくすことができると考えられる。これは更地ではないため例外的なケースだが、維持費を見直すという点では意味がある。
固定資産税と都市計画税の軽減措置
前述のとおり、更地にかかる固定資産税と都市計画税は、建物を建てることで軽減措置を受けられる。
建物1戸につき土地が200平方メートルを超えない「小規模住宅用地」なら、固定資産税は1/6まで減額される。また、建物1戸あたりの土地が200平方メートルを超える「一般住宅用地」でも、200平方メートルまでの部分は1/6、それ以上の部分は建物の床面積の10倍までの部分は1/3まで減額される。
さらに、土地の上に建てる建物が新築であれば、戸建て住宅の場合は3年間、マンションなどであれば5年間、固定資産税が1/2に減額される。
都市計画税に関しては、新築の建物を建てた場合の軽減措置は受けられないものの、土地にかかる税額は小規模住宅用地で1/3、一般住宅用地で1/2まで軽減される。
更地の有効活用法
所有しているだけで税金などの維持費がかかる更地は、建物を建てることで固定資産税と都市計画税の軽減措置が受けられる。ここまで紹介したような、その他の維持費もかからなくなるだろう。
建物を建てるからには、単なる節税対策のためだけでなく、その建物を有効活用できるような方法を考えたい。ここからは、更地の有効活用法を紹介しよう。
アパートを建てれば相続でも有利
土地を長期間所有するならば、相続税も頭に入れておく必要があるだろう。相続税はあくまでも相続時に発生する税金であり、土地に関しては優遇される特例も多いが、相続においては必ず課される税金である。
相続税では、現金を相続するより土地を相続したほうが有利になるケースがある。たとえば、所有地に賃貸アパートを建て、貸家建付地の評価制度を利用すれば、土地の評価額を約8割まで下げることができる。また、賃貸アパート自体の評価額も約6割になる。
現金のまま相続するより、その現金であらかじめ土地を購入し賃貸アパートを建てて相続したほうが、相続税を何割か安くできるのだ。
ただし賃貸アパートを建てる場合は、アパートを所有・管理することに対してもさまざまな費用が発生することに注意したい。建物には固定資産税などがかかり、家賃収入には所得税がかかる。アパート自体にも維持費がかかるが、安定した家賃収入が約束されているわけではない。
税制面や家賃収入のメリットと、賃貸アパートの管理面におけるデメリットを総合的に考慮した上で、利益を生み出せるような計画を立てることが重要である。アパートを建てると、不動産投資の分野でも知恵を絞らなければならなくなる。
住宅以外にも可能性が広がっている
アパートなどの住宅を建てる方法以外にも、土地を有効に活用できる方法はある。
単に固定資産税などの維持費を無駄に払いたくないと思うなら、簡単な構造の建物を建て、自分専用の倉庫として利用するのも手だ。太陽光発電システムを設置して、売電収入を得る方法もある。
月極駐車場やコインパーキングなら、比較的安価な費用で始められる上に、管理にもそれほど手間がかからない。比較的狭い土地であれば、コインランドリーを建てて設備を導入すれば、利用者から収入を得ることができる。
十分な広さがあり、立地が良い土地であれば、定期借地権付きマンションとして土地を貸し出す方法もある。マンションの所有者から地代が受け取れる上に、土地の所有権も自分が保有したままでいられる。介護施設や老人ホームなどを建設し、企業向けに貸し出せば、地域に貢献することもできるだろう。
郊外でもロードサイドの土地であれば、コンビニなど商業系の店舗を建てることで、交通量の多さやアクセスの良さを活かせる。トランクルームなどの倉庫もニーズが高く、近年人気を博しているシェアハウスなども面白いだろう。
売却する前に活用方法を模索してみよう!
何かと維持費がかかる更地は、いっそ売却してしまいたいと思うかもしれない。しかし、特に先祖代々受け継がれた土地であれば、そう簡単に手放せないだろう。
持っているだけで維持費がかかるので、無駄な出費を抑えるためにも有効活用できる方法を模索してみてはいかがだろうか。(提供:THE OWNER)
文・八木真琴(ダリコーポレーション ライター)