明確に言語化し、細かいことでも質問すること
チャットの基本は、上司に対しても、部下に対しても、自分の考えをしっかりと丁寧に言語化して伝えることです。チャットと言うと、短い言葉のやり取りだけをイメージする人もいるかもしれませんが、必要なことは長くなってもきちんと書くべき。「空気を読め」「行間を読め」はNGです。
これは、普段からLINEで友人たちとコミュニケーションを取り、チャットになれている若者にも、できていない人が多いかもしれません。若者のチャットや会話でよく見られるのは、単語だけでのやり取り。ビジネスで使うには、言葉があまりにも足りません。もし、主語を省略してやり取りをしていて、相手と主語の認識が違っていたら、ビジネスなら大問題になります。ですから、もしそういう若者が部下にいたら、「チャットは若者のほうが得意だから……」などと気後れせずに、主語や述語、目的語がはっきりとした文章を書くよう指導してください。
そして、もう一つ、重要なのが、相手からのメッセージにわからないところがあれば、細かいことであっても、きちんと尋ねること。
対面でもチャットでも、つい、「質問をしていいのだろうか?」「相手を煩わせるのは申し訳ない」という気持ちになってしまうことがありますが、それが結果的に仕事の生産性を下げてしまうことが多々あります。
細かい確認を何度もすることは、メールだとまどろっこしいですし、電話だと記録が残りませんが、チャットならスピーディにでき、記録に残して他のメンバーと共有することもできます。
逆に、部下に指示を出したり、何かを伝えたりしたのに、何も質問が出てこないようなら、本当に伝わっているのかを確認したほうがいいでしょう。理解しようとしているのなら、何かしら疑問が出てくるはずですから。
ビデオ会議のチャット機能も活用しよう
ビデオ会議も、チャットツールと同じく、ニューノーマルな働き方に必須のビジネススキルです。多くのビデオ会議システムについているチャット機能の使い方についても、最後にお話ししたいと思います。
この機能が特に有効なのは、セミナーや報告会のように、誰かが発表をして、他の参加者はそれを聞く形式の会議の場合です。こうした会議では、ともすれば一方的に話を聞くだけで終わってしまいがちですが、話を聞きながら、質問や意見、あるいは補足情報などを、参加者がリアルタイムでチャットに書き込むことで、参加者同士で気づきを与え合うことができます。また、参加意識が高まって自分事として考えるようになり、理解を深めることにもなります。会議後に、発表者が振り返りするのにも役立ちます。
イベントの内容をリアルタイムで発信することは、10年以上前から津田大介さんがしていて、「tsudaる」と呼ばれていましたし、今も「ハッシュタグをつけて実況中継してください」というイベントは数多く開催されています。それを、社内のビデオ会議の場で行なうわけです。
当社でも実践してみたところ、誰かがやり始めると、チャットに書き込む人がどんどん増えて、面識のない社員同士にもコミュニケーションが生まれるという効果もありました。
話を聞きながら、考えて、キーボードを打つというのは、慣れないと難しいですし、マルチタスクで疲れるのですが、理解が深まり、充実感が得られるはずです。ぜひ、試してみてください。
伊藤直子(働き方改革エバンジェリスト)
(『THE21オンライン』2020年06月30日 公開)
【関連記事THE21オンラインより】
・「Web会議」「ビジネスチャット」人気のあるサービスは?
・シリコンバレーから世界のビジネスコミュニケーションを変える
・コロナショックの今こそ働き方改革の実態が明らかに。行動実験が実証する「再現性のある時短術」