(本記事は、原 マサヒコ氏の著書『入社1年目の心得』総合法令出版の中から一部を抜粋・編集しています)

ミス
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どうしたら同じミスをしないか

ミスの原因を明確にする「5つのM」とは

「失敗を重ねて経験を積みましょう」と書きましたが、経験を積むだけでなく重要なのは「いかに同じミスをしないか」です。いくら失敗の経験も大事だとはいえ、同じ失敗をくり返してしまうのはいけません。ミスしたことを受け止めて、再発しないためにはどうしたら良いかを熟考していきましょう。再発しないためには、根本から仕事のやり方を変えることが重要です。ミスが起こらないような仕組みを作るためには、今までのやり方を変える必要があるのです。私も入社1年目の時には会社の上司から「人を責めるな、仕組みを責めろ」という言葉を言われました。「何かミスが起きたら人を責めても仕方がない。そのミスが起きてしまった仕組みに問題がある」と考えるわけです。

ですから、ミスについて上司が部下に叱責するのも意味がないと思いますし、ミスをしてしまったからといって自分自身を必要以上に責めても仕方がありません。ぜひとも仕事のやり方や進め方にフォーカスして、どう変えればミスが起きないかを考えてみるようにしましょう。

そのためにも、まずはミスが起きた時に原因を明確にする必要があります。ミスや失敗というのはほとんどが人為的なものですが、まずは「コト」としてとらえていくことです。コトとしてとらえるためにも、次の「5つのM」の順に原因を探っていくと良いでしょう。

①Mission……使命や目的を取り違えていないか? 目的と手段の混同はないか?
②Machine……使用したツールや機械に不備やトラブルはなかったか?
③Media……関係者とのコミュニケーションや情報伝達の仕方に問題はなかったか?
④Management……業務を遂行する際のマネジメント手法に問題はなかったか?
⑤Man……実行した人のコンディションやモチベーションに問題はなかったか?

4つ目の「Management」については、立場的に入社1年目の皆さんが考えることではありませんが、それ以外についてはしっかりと確認しましょう。そのうえで、該当するものがあればしっかりと向き合って追求していきましょう。ミスが起きた時に、とりあえずその場をやりすごして仕事を進めるケースがよくありますが、それでは原因がそのまま放置されてしまい、再び同じミスが起きる可能性は残ります。しっかりと向き合って追求する姿勢がとても重要なのです。

「ミス専用ノート」でミスを可視化する

多くの職場では、小さなミスや初めてのミスの場合は「なぜミスが起きたのか」といった原因解明に時間をかけられることはなく、「以後、ミスをしないように気をつけます」という対策とは呼べない対策で片づけてしまう傾向があるように思います。上司も「これから気をつけてね」などと言っていますが、「気をつける」というのは実は何の解決にもなっていません。

オススメしたいのは「ミス専用ノート」を作って書いていくことです。どんなミスにも必ず原因があるものです。その原因を追求することなく「気をつけて」などと言っても、ミスをくり返すだけです。ですから、ミスをしたあとには以下の3点をノートに書きます。

  • どのようなミスだったのか(状況)
  • なぜそのミスが起きたのか(原因)
  • 同じミスをしないために何をすべきか(対策)

もちろん、初めてミスをしていますから「対策」といっても正解がわからず、何を書いていいか迷ってしまうかも知れません。その際には経験豊富な先輩や上司に相談し、どのような対策が考えられるかを聞けば良いのです。

このノートのポイントは2つあります。ひとつは「ミスに向き合う」ということ。そしてもうひとつは、「可視化する」ことです。ミスというのは誰しも目をそむけたくなったり、なかったことにしたくなるものです。しかし、ミスは隠すとあとで何倍にもなって返ってきます。

大事なのは同じミスをしないことですから、そのためには一度してしまったミスをしっかりと可視化して向き合うのです。そうすることで、対策をじっくり考えていきやすくなります。対策をくり返しながら同じミスを防止していきましょう。そうすれば、気がついた時にはあなた自身が成長を遂げているはずです。

ファイナンシャル・アドバイザー
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「振り返り」が物を言う

PDCAサイクルの「C」が重要

先ほど、「ミスを可視化して向き合う」ということを書きました。これはミスに限らず重要な姿勢なので、さらに解説しましょう。

仕事をするうえで押さえておきたいフレームワークに「PDCAサイクル」というものがあります。PDCAサイクルとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)をくり返すことによって、目の前の仕事を継続的に改善していく手法のことです。

このPDCAサイクルの中で、特に重要なのがCheckです。誰しもが日々仕事をしますのでDoは行うかと思います。しかし、それを振り返るということをしている人は非常に少ないのです。自分が行った仕事と向き合い、振り返ることをしていただきたいと思うのですが、振り返る際の注意点を紹介したいと思います。

①振り返りと感想は違う
PDCAサイクルにおけるCheckというのは、「振り返り」のことです。PDCAサイクルのPlanに対して、どこまでDoすることができたのかをしっかりと振り返ることが「検証」というわけです。しかし、実際には検証作業をしているように見えてそうではないケースが多いものです。例えば、事実を検証するのではなく関係者たちの「感想の言い合い」になってしまうパターンがあります。

「いやあ、苦労したけど、充実していたよね」「大変だったけど成長できましたね」などと感想をいくら言い合ったところで、サイクルは回っていきません。振り返りをして「次に何をするか」「どう改善していくのか」という発想になることが重要なのですが、感想を言っているだけでは前に進みませんので注意が必要です。
②「PlanとDoのギャップ」を特定する
Checkは「計画と取り組み内容の整合性が取れているかを把握すること」が非常に重要です。そこには明確な判断基準も必要ですし、ギャップをどう理解するかもポイントです。人間というのはどうしても事実を「自分が見たいように見てしまう」というクセがありますから、「まあこんなもんでしょう」と安易に考えるのではなく、周囲の人たちにも協力を求めながら事実をしっかりと振り返っていくべきです。
③「振り返るタイミング」を細かくする
振り返りが大事です、とは言っても年に1回などというタイミングではダメです。振り返りをする目的は、正しい改善策を導き出して成果につなげていくことです。であれば、そのタイミングは細かいほど良いということになります。具体的には、月に一度ではなく「今週の目標に対する結果はどうか」「今日の目標に対する結果はどうか」などと間隔を縮めていくと良いでしょう。また、検証のタイミングを固定してしまい習慣化するのも良いと思います。例えば「毎週金曜17時」などの固定スケジュールにしてしまうことで、歯を磨くかのように振り返りをするような仕組みにしてしまうのです。そうすることで、PDCAサイクルの回転は速度を増していくはずです。

3つ目のポイントは本当に重要で、近年PDCAサイクルを高速回転させる企業は増えています。特にインターネット系企業は凄まじい速さになってきていて、朝に設定した一日の目標を午後には検証して夕方には改善策を検討する、などという部署があるほどです。いずれにしても、早いタイミングで仕事を振り返るほど成果は出しやすくなります。もともとの振り返りの間隔を縮め、できる限りタイミングを早めてみると良いでしょう。それが、新しいサイクルのスタートにもなるのです。

振り返るために「記録」を

また、仕事をしながらメモを取ることはあると思いますが、そのメモを振り返って読むことも大事です。くり返し読むことでメモが頭に定着しますし、そこで発生した新たな気づきを書き加えたりすることでブラッシュアップされていきます。振り返りをしなければ流れていってしまうでしょう。

さらに、自分がどんな仕事をしたのか、そしてそれぞれにどれだけの時間を使ったかという実績を記録しても良いでしょう。私たちは普段、何にどれぐらいの時間を使ったか正確に把握していないことがほとんどです。「普段やっている業務に関してどのくらい時間をかけていますか?」と聞いても、正確に答えられる人はほとんどいません。そもそも私たちの時間の感覚には曖昧な部分があり、同じ1時間でもその内容によって長く感じたり短く感じたりします。

ですから、自分の時間の使い方を振り返るために記録するようにすると、自分の仕事の所要時間を正確に見積もれるようになっていきます。そうすると、次により上手く計画を立てるためにも役立ってくるのです。振り返ることで時間の使い方の改善につながる発見もあるでしょう。ぜひ「振り返り」を意識していってもらいたいものです。

入社1年目の心得
原 マサヒコ
プラス・ドライブ株式会社 代表取締役。1996年、神奈川トヨタ自動車株式会社に現場メカニックとして入社。5000台もの自動車修理に携わりながらも、技術力を競う「技能オリンピック」で最年少優勝に輝く。さらに、カイゼンのアイデアを競う「アイデアツールコンテスト」でも2年連続全国大会出場を果たすなど活躍。活動の場をIT業界に変えると、PCサポートを担当したデルコンピュータでは「5年連続顧客満足度NO.1」に貢献。インターネットベンチャーや1年間のニート、フリーランスなどの経験を経て2015年にライティングに特化した会社を設立し、現在は多くのクライアント先に対して付加価値を提供している。また、全国から講演依頼を年間で50回以上受け、「トヨタの現場ノウハウ」や「若手のキャリア構築」について講演することをライフワークとしている。著書に、『人生で大切なことはすべてプラスドライバーが教えてくれた』(経済界)、『どんな仕事でも必ず成果が出せる トヨタの自分で考える力』(ダイヤモンド社)、『Action!トヨタの現場の「やりきる力」』(プレジデント社)などがある。

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