(本記事は、原 マサヒコ氏の著書『入社1年目の心得』総合法令出版の中から一部を抜粋・編集しています)

コミュニケーション
(画像=PIXTA)

コミュニケーションは目的を重視せよ

何のためにコミュニケーションを取るのか

皆さんはコミュニケーションに自信がありますか?

日本経済団体連合会(経団連)が2017年に実施した「新卒採用に関するアンケート調査結果」では、新卒採用の選考の際に重視する点として「コミュニケーション能力」が15年連続で1位となっています。皆さんには「コミュニケーション能力」が期待されているのです。

昔は家に置かれた電話機で会話するような時代がありましたが、今ではメールやLINE、メッセンジャーやスラックなどあらゆる方法があります。しかし、これらはコミュニケーションの「手段」にすぎません。重要なのは、「何のためのコミュニケーションなのか」を意識するということです。

そもそも、人は何のためにコミュニケーションを取るのでしょうか。当たり前のような話かも知れませんが、まずは「コミュニケーションの目的」を改めて考えてみましょう。

①人間関係を構築する
朝、会社に行くと「おはようございます」と挨拶をしますが、これもコミュニケーションのひとつです。挨拶をしなかったらどうなるかを考えてみると、「何でアイツは挨拶をしないんだ」「無視された。意味がわからない」などと言って、あっという間に人間関係がめちゃくちゃになります。つまり、コミュニケーションは日常的な人と人とのつながりを構築するために必要なものです。人間関係を構築するには、挨拶から始まり、自分を知ってもらうことや相手を理解する姿勢が重要になってきます。
②情報交換や情報共有
会社というのは様々な情報が飛び交い、それらの情報を共有しながら組織として前進していきます。そのためにも起きたことを報告したり、状況を説明したり、チームに連絡をしたりします。そういったコミュニケーションによって、情報に対する理解がより深まり、組織として結果を出すことや良好な人間関係を築くことにもつながっていきます。
③相手に対して行動を促す
コミュニケーションは、相手が存在します。その相手を導いて自分の意図する方向へ行動してもらうためにも、コミュニケーションは重要です。それが直接的な行動でも間接的な行動でも同様です。指示や命令をして実行してもらうこと、依頼をして動いていただくこと、説得をして皆に協力してもらうこと、すべて相手に対して行動を促しています

こういった目的があるにもかかわらず、実際に仕事の現場では目的が忘れられてしまい、「メールで伝えよう」「電話したほうが早い」などと手段の話をしがちです。

続いて「コミュニケーションの目的を意識するコツ」について考えてみたいと思います。

自分の状況を客観的に眺める習慣のつけ方

人間関係でトラブルが起きてしまったり、仕事で伝達ミスがあった際は、コミュニケーションの目的を忘れないことが重要です。そのためにも、自分の置かれた状況を客観的に眺める習慣をつけてほしいと思います。トラブルやミスがある時ほど、自分を客観視できなくなっていることが往々にしてあるからです。自分の置かれた状況を客観的に眺める習慣としては次のような動きがポイントになります。

  • 目的を具体化して可視化する
    コミュニケーションでトラブルが起きた時、最終的に何をしようとしているのかを具体的にしましょう。例えば「問題を上司に伝える」だけではなく、「社内システムの問題点について上司に把握してもらい、次の打つ手として何をすべきか判断できるような状態にしようとしている」などと具体的にしておくのです。そのうえで、その具体的なことを紙などに書いておくと、より客観視できると思います。

  • 自分の立場と置かれている状況を明確にする
    さらに、そのトラブルに関して自分の立場はどこなのか(担当者やメンバーの一人など)、上司はこの問題を把握しているのか、この問題を早く伝えなければいけない理由は何なのかなど、状況を明確にしておくことが重要です。仮に同じ状況だとしても、立場が違うと考えるべきことも違ってきますし、同じ立場の人であっても状況に応じて目的を柔軟に変える必要があるからです。

コミュニケーションというと、どうしても最新のツールやテクノロジーに目が行きますが、根底にあるのは人と人とのつながりであり、求められるのは冷静かつ的確な対応です。自分を客観視しながら、状況に応じてベストなコミュニケーションができるよう意識していきましょう。

本業支援・事業性評価の指南書【第3回】上席が本業支援の重要性を理解していない
(画像=PIXTA)

「同期」の意味を理解しよう

「同期」とのかかわり方次第で、自己成長は止まる

皆さんが1年目を迎える時、同じ会社に同期入社の仲間がいるかも知れません。「同期で一緒に入る仲間」というのはどういう意味を持つのか考えてみます。

これから社会に出るにあたって不安もあるでしょうから、同期の仲間がいるというのは「心強い」と思うかも知れません。しかし、同期の存在というのはメリットもあればデメリットもあります。この辺りをしっかり理解しておく必要があります。

まずメリットとしては、前述した「心強さ」があるかもしれません。それに、人にもよりますが困った時に助け合ったり支え合ったり、良き仲間になってくれる人がいるかも知れません。大きな会社になると「同期会」などといって定期的に集まって飲み会をしたり、愚痴を言い合ったりもするでしょう。

しかし、デメリットも多くあります。同時期に入社しているということは比較対象になりやすいということが挙げられます。同期が先に新しい仕事を覚えていると焦ってしまうこともあるでしょう。先に何らかの役職に就いたりしても同様です。また、自らの視点だけでなく、他者から見てもそうです。上司から「同期のアイツと比べてお前の仕事は遅いなあ」などと言われて悔しい思いをすることもあるかも知れません。実際、私は同じことを経験したことがあります。初めは同期の存在が心強かったのですが、上司から優秀な同期と自分を比較されるたびに悔しくて仕方がありませんでした。

けれど、今思えば人と比べても、何も良いことなんてありません。つまり、「気にするな」ということです。自分は自分、人は人ですから、何かの目安になることはあっても、いちいち比較をして一喜一憂するなど時間の無駄だと思います。

ほかにもデメリットとして、先ほど例に挙げた「同期会」などでみんなと愚痴を言い合ったりするのが実は非常に危険な行為です。こういった場に居続けてしまうと居心地が良くなってきます。同じ歳で同じ時期に入社した皆といつまでも顔を合わせ、会社や上司の愚痴を言い合うと居心地は良いのかも知れませんが、あなたが成長することはなく、むしろ破滅の道を進んでいると言えるかも知れません。

3つのゾーンとは

この「居心地の良い場所」というのは一般的に「コンフォートゾーン」と呼ばれています。ビジネスの世界では「コンフォートゾーン」を含め次の3つのゾーンがあると言われています。これは、もともと大手電機メーカーGEの成長を支えたノエル・ティシー氏がまとめたフレームワークとして有名なものです。

  • コンフォートゾーン(Comfort zone)
  • ラーニングゾーン(Learning zone)
  • パニックゾーン(Panic zone)

ひとつ目の「コンフォートゾーン」というのは、日常的に何もチャレンジしていない場のことです。いつも通りの慣れた仕事や気心の知れた仲間たちに囲まれ、自分の能力を高める必要性が特にない状態です。

2つ目の「ラーニングゾーン」というのは、コンフォートゾーンから一歩外に出ている場所です。仕事の手順もわからず、新しい人間関係がある。まるでアウェイの感覚ですが、それでも自分のことはコントロールでき、対応可能な状態です。そして3つ目の「パニックゾーン」というのは、ラーニングゾーンからさらに外に出た過酷な場所です。自分自身ではコントロールもできない状態に陥り、何をすれば良いのかまったく考えられません。前進も後退もできず、まさにパニックになりそうな環境です。

入社1年目に最適なゾーン

これら3つのゾーンのうち、入社1年目の皆さんが成長していくためには「ラーニングゾーン」に身を置くべきです。いつまでも同期の仲間と肩を並べて愚痴を言い合ったり、傷をなめ合ったりしていても「コンフォートゾーン」から抜け出すことはできません。居心地が良いので、上を目指す気力もなくなり、新しいスキルを身につけようとするモチベーションも削ぎ落とされかねません。

一方で「パニックゾーン」でも、あまり学びを得ることはできません。また、「コンフォートゾーン」と同様にモチベーションは削ぎ落とされてしまいます。ストレスを抱えて身体に不調をきたしたり、精神的に疲れてしまうなど、生産的な活動ができなくなってしまうからです。ですから、コンフォートゾーンとパニックゾーンの中間に位置するラーニングゾーンに身を置くことが、成長のためには最適と言えるでしょう。

皆さんに意識してほしいのは、「自分は今どういう環境に身を置いていて、どこのゾーンにいるのか」ということです。そして、比較すべきは同期ではなく「自分が描く理想の姿」であったり、「目指す上司」や「過去の自分」などと比較しながら、自分自身がコンフォートゾーンに留まっていないかを判断してもらいたいものです。

ただ単に毎日忙しいから「ラーニングゾーン」というわけでもないですし、仕事でパニックになったから「パニックゾーン」だというわけでもありません。同期は気にせず、アウェイの感覚で自分を磨きながら成長していきましょう。

入社1年目の心得
原 マサヒコ
プラス・ドライブ株式会社 代表取締役。1996年、神奈川トヨタ自動車株式会社に現場メカニックとして入社。5000台もの自動車修理に携わりながらも、技術力を競う「技能オリンピック」で最年少優勝に輝く。さらに、カイゼンのアイデアを競う「アイデアツールコンテスト」でも2年連続全国大会出場を果たすなど活躍。活動の場をIT業界に変えると、PCサポートを担当したデルコンピュータでは「5年連続顧客満足度NO.1」に貢献。インターネットベンチャーや1年間のニート、フリーランスなどの経験を経て2015年にライティングに特化した会社を設立し、現在は多くのクライアント先に対して付加価値を提供している。また、全国から講演依頼を年間で50回以上受け、「トヨタの現場ノウハウ」や「若手のキャリア構築」について講演することをライフワークとしている。著書に、『人生で大切なことはすべてプラスドライバーが教えてくれた』(経済界)、『どんな仕事でも必ず成果が出せる トヨタの自分で考える力』(ダイヤモンド社)、『Action!トヨタの現場の「やりきる力」』(プレジデント社)などがある。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)