(本記事は、原 マサヒコ氏の著書『入社1年目の心得』総合法令出版の中から一部を抜粋・編集しています)

多様化
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会社の常識に染まるな

意識的にインプットを多様化させる

目先のことに本気で臨むうえでひとつ注意してほしいのは、「会社の常識に染まるな」ということです。本気で仕事に臨むのに、会社に染まるなというのは矛盾しているように感じるかも知れませんが、これはとても大事なことなのです。実は、会社に入って染まるというのはとても簡単なのですが、特定の会社に染まってしまうと染まった色以外の色が出せなくなってしまいます。逆に、染まらなければ色々な色が出せるのですが、染まらないというのは意識していないと難しい。先ほども書いたように、変化の激しい時代を生き抜くためには、色々な色を出していかなければならないのです。

では、染まってしまうとはどういう状態なのかというと、例えば次のようなことです。

  • 「とりあえず打ち合わせをしておこう」と考える
  • あとで責められたくないので、とりあえず反対意見だけ軽く言っておく
  • 上司の顔色を伺いながら何事も判断してしまう
  • 「言ってもどうせダメだから」とアイデアを出すこともやめてしまう

まだ会社の状況がわからない皆さんからすると、「こんな大人になってたまるか」と思うかも知れません。しかし、このような人が周りにいれば、知らず知らずに染まっていってしまうものなのです。会社に入ると、「ビジネスパーソン専用ギプス」をつけられたようになります。ギプスというのは、少しずつ補正していくものですから、あなた自身も少しずつ変化していき、数年もすると「なってたまるか」と思っていた大人になってしまうものなのです。

ですから、染まらないためにも強く意識をしてほしいのです。また、何度か書いてきたように自分を客観視できるよう社外の人との交流を欠かさないようにしましょう。同じ職場の人とばかり顔を合わせて愚痴を言っていても、根本的な解決にはなりません。現状に不満を持ちながら、馴れ合いによっていずれ同質化されてしまいます。社外の人と触れたり、外に出て学びを深めたりしながら、意識的にインプットを多様化しておきましょう。そうしなければ、自分自身の常識でさえも思っている以上に影響されてしまいます

黒以外の色を知ること

社会では、ブラック企業が問題になっていますが、客観的に見れば「逃げ出せばいいじゃないか」と思うものです。しかし、実際に入社1年目でそういった会社に入ってしまうと、すぐに染まってしまい「これが社会というものだ」「どんな会社でもこのぐらい厳しいものなのだ」などと感じてしまうのです。ブラック企業をブラックだと認識できるのは、黒以外の色を知っているからこそできるのです。ですから、自分がいる位置や常識を理解するためにも、それとは違う価値観を理解するための複数の視点を持っておく必要があります。

皆さんはまず目の前の仕事を覚えようと必死になるかも知れませんが、私は自分自身の常識を保つという意味でも「早いうちから副業を考えても良いのではないか」と思うくらいです。

会社の常識に染まらないためにも、視点をいくつも持ったうえで、自分で判断していくしかありません。染まる、染まらないについて書いてきましたが、結局は「自分の心に素直になること」「無理をしないこと」「できることをやっていくこと」などが大事なのではないかと思います。

投資
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貯金なんかせず投資せよ

貯金をしても意味がない

「年収が増えても幸福になるとは限らない」ということを先ほど書きましたが、皆さんはお金があったら何に使いますか。ある調査では、20代の7割が「お金を使うことより、貯めることに喜びを感じる」という結果でした。皆さんも給料は貯金したいと考えますか?

もし貯金を真っ先に考えるという場合、私からは「絶対にやめたほうが良い」と言いたいです。20代で貯金をしても意味がないからです。その理由を説明していきましょう。

①お金に縛られた思考になってしまう
若い頃から銀行口座の残高を意識するようになると、様々な判断基準が「お金」に偏ってしまいます。やりたいことやほしいものが見つかっても、「お金がもったいない」という理由で手を出さなくなります。むしろ、その考え方自体がもったいないのです。お金に縛られて思考を狭めてしまうことは、大きな機会損失です。
②お金に縛られた行動を取ってしまう
貯金をしようとすると支出を切り詰めますから、思考だけでなく行動も慎重になります。慎重な行動を取り続けてしまうと、当然ながら誘いも減ってしまい、若いうちにできるはずの経験を逃してしまいます。これもやはり損失として非常に大きなものと言えます。
③貯金をするよりも大切なことがある
よほどの技術や経験でも持っていない限り、一般的には20代で会社から支給される給料はそこまで多くないと思います。ですから、頑張って貯金をしたとしても、貯められる金額というのはたかが知れています。貯金というのは、年齢を重ねてからいくらでもできますが、逆に環境的にも体力的にも20代でしかできないことも山ほどあります。20代のうちに貯金ばかりに精を出してしまい、さほど幸せを感じない大人になってしまうのは絶対に避けてほしいものです。20代では貯金をするよりも大切なことがあります。

何にお金を使うか

では20代では何が大切でどんなことにお金を使うべきなのか、説明していきましょう。

①経験してみたいことに使う
若いうちは経験値を貯めることが重要です。そのため「やってみたい」と思うことを大切にしてください。やってみたいことを経験することが、今後の人生で何より大事です。
②仲間との思い出に使う
自分自身の経験だけでなく、友人知人との思い出のために何か企画したり、楽しいイベントに参加したりするというのも生きたお金の使い方と言えます。自分が企画する際には「どうしたら人を楽しませることができるか」を考えますし、自分が参加者側であれば「どういったことなら楽しめるか」ということを学びながら経験することができます。これからは体験価値が上がっていく時代ですから、そんな経験は必ず役に立ちます。
③自分に対して使う
経験や思い出も良い投資と言えますが、最もオススメしたいのが自分自身のビジネススキルへの投資です。皆さんが経営者になるかどうかはさて置き、将来的に会社だけでなく個人でも収入を得ようとしたらスキルが必要です。そういったビジネススキルを早くから学ぶことで確実に人生の選択肢が増えていきますし、20代でできる貯金額など一気に上回ることも可能でしょう。20代は学びの吸収率も高いですから、この時期に「自分の学び」に投資をすることで、より効率の良いリターンが得られるはずです。

とにかく、行動して自分の価値を高めることにお金も時間も使っていってください。

入社1年目の心得
原 マサヒコ
プラス・ドライブ株式会社 代表取締役。1996年、神奈川トヨタ自動車株式会社に現場メカニックとして入社。5000台もの自動車修理に携わりながらも、技術力を競う「技能オリンピック」で最年少優勝に輝く。さらに、カイゼンのアイデアを競う「アイデアツールコンテスト」でも2年連続全国大会出場を果たすなど活躍。活動の場をIT業界に変えると、PCサポートを担当したデルコンピュータでは「5年連続顧客満足度NO.1」に貢献。インターネットベンチャーや1年間のニート、フリーランスなどの経験を経て2015年にライティングに特化した会社を設立し、現在は多くのクライアント先に対して付加価値を提供している。また、全国から講演依頼を年間で50回以上受け、「トヨタの現場ノウハウ」や「若手のキャリア構築」について講演することをライフワークとしている。著書に、『人生で大切なことはすべてプラスドライバーが教えてくれた』(経済界)、『どんな仕事でも必ず成果が出せる トヨタの自分で考える力』(ダイヤモンド社)、『Action!トヨタの現場の「やりきる力」』(プレジデント社)などがある。

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