コロナの影響を最も大きく受けた第1四半期決算

日本株銘柄フォーカス
(画像=cosma/Shutterstock.com)

3月決算企業の第1四半期決算が概ね終了しました。予想されたとおり、全体としては非常に厳しい決算となりました。4-6月は日本が緊急事態宣言を発令し、外出自粛が求められていた時期ですから厳しい決算なのはやむを得ないと言えるでしょう。ただし、こうした厳しい状況に置かれても力強い成長を遂げている企業は存在します。本日のレポートでは第1四半期の決算概況と好決算企業についてお伝えします。

3月末決算を採用しており前年同期と比較可能な2,259社について業績の集計を行いました。表に示したとおり全体としては17.4%の減収、50.9%の経常減益と非常に厳しい結果となりました。業種別に見ていくと、増収増益は保険業とその他製品の2業種のみ、増益は6業種のみにとどまっています。

業種別決算集計

業種別決算集計
(画像=マネックス証券)

特に厳しかったのが空運業、輸送用機器、石油・石炭製品、鉱業といったところです。国家間や都市間の移動が大きく制限され、原油先物価格がマイナスとなるといった異常事態でしたから、これらの業種の決算がボロボロになってしまうのは仕方のないことでしょう。

コロナ禍でも業績好調な銘柄とは?

ただこうした厳しい状況下でもしっかりと成長している企業は存在します。「保険業」「その他製品」「医薬品」「証券・商品先物取引業」「食料品」「電気機器」の6業種は増益を達成しました。また、2,259銘柄の中で前年同期と比べて増収増益を達成したのは496銘柄(約22%)ありました。この状況下で増収増益を達成できたのが2割以上あるわけですから、日本企業の底力は捨てたものではありません。

それではどういった企業が好調だったのでしょうか?約500社あるのですべてを網羅しているわけではありませんがざっくりとした傾向を申し上げると、「食品」「ネットサービス」「製薬会社」「巣ごもり消費・在宅勤務関連」「証券会社」「システム開発会社」などが好調です。いずれもコロナの影響が逆風になりにくい、または追い風になりそうな業種で納得感があります。いくつか銘柄の例をご紹介します。

●食品
ブルボン(2208)、カルビー(2229)、ブルドッグ(2804)、東洋水産(2875)、日清食品ホールディングス(2897)

●ネットサービス
アイティメディア(2148)、アドウェイズ(2489)、ZOZO(3092)、イーブックイニシアティブジャパン(3658)、インフォコム(4348)、レアジョブ(6096)

●製薬会社
エーザイ(4523)、小野薬品工業(4528)、ツムラ(4540)、大正製薬ホールディングス(4581)

●巣ごもり消費・在宅勤務関連
ゲオホールディングス(2681)/ゲーム販売やレンタルDVD等、エディオン(2730)/PCやスマホ関連機器等)、オイシックス・ラ・大地(3182)/食品や食材の宅配、インフォコム(4348)/電子書籍サービス等、エレコム(6750)/PCやスマホ関連機器等、ソニー(6758)/ゲーム機等、任天堂(7974)/ゲーム機等、スクウェア・エニックス・ホールディングス(9684)/ゲームソフト等、カプコン(9697)/ゲームソフト等

●証券会社
SBI(8473)、野村證券(8604)、東海東京証券(8616)、松井証券(8628)、マネックスグループ(8698)

●システム開発会社
オービック(4684)、伊藤忠テクノソリューションズ(4739)、SCSK(9719)、NSD(9759)

通期予想も増収増益の好調企業とは?

今期はコロナが業績に与える影響が不透明として本決算発表時に業績予想の発表を見送る企業が非常に多かったことも特徴の1つですが、第1四半期の決算発表時に業績予想を発表した企業も多くありました。以下では「第1四半期が増収増益で、今期の通期予想も増収増益」の銘柄のなかから「コロナ禍でも力強く成長している銘柄」をいくつかご紹介します。

第1四半期に増収増益だった496柄のうち、通期予想も増収増益予想を発表している銘柄は189銘柄ありました。数が多すぎるのでいくつか条件を加えて絞り込んでみました。具体的な条件は以下のとおりです。

●スクリーニング条件
・東証上場銘柄
・8月14日までに第1四半期決算を発表済みの3月決算企業
・第1四半期の売上高・経常利益が前年同期比で増収増益
・今期の通期業績予想が前期比増収増益
・前期の通期実績が前々期比増収増益
・前期の第4四半期の売上高・経常利益が前年同期比で増収増益
・8月14日時点の予想PERが30倍以下と過度な割高感がない

上記でスクリーニングしたところ、表に示したとおり、ケー・エフ・シー(3420)、アグレ都市デザイン(3467)、芙蓉総合リース(8424)、電業社機械製作所(6365)、アサヒホールディングス(5857)、石井鉄工所(6362)、旭情報サービス(9799)、アサヒペン(4623)、沖縄セルラー電話(9436)、あらた(2733)、クエスト(2332)、C&Fロジホールディングス(9099)、ショーエイコーポレーション(9385)、ベネフィットジャパン(3934)、遠州トラック(9057)、SIG(4386)、コメリ(8218)、タケエイ(2151)、G-7ホールディングス(7508)、田中建設工業(1450)、川本産業(3604)、イマジニア(4644)、アルテリア・ネットワークス(4423)、田岡化学工業(4113)、リスクモンスター(3768)、中電工(1941)、バローホールディングス(9956)、マキヤ(9890)、朝日ネット(3834)、関西スーパーマーケット(9919)、大幸薬品(4574)、フマキラー(4998)、日本瓦斯(8174)、エレコム(6750)、亀田製菓(2220)、太陽ホールディングス(4626)、アンリツ(6754)、JALCOホールディングス(6625)、東洋水産(2875)、アルファポリス(9467)、ヤオコー(8279)、日産化学(4021)、イントラスト(7191)、多摩川ホールディングス(6838)、グリムス(3150)、ミダック(6564)、小野薬品工業(4528)、ライドオンエクスプレスホールディングス(6082)、重松製作所(7980)、セリア(2782)、SGホールディングス(9143)の51銘柄が抽出されました。

通期予想も増収増益の好調企業
(画像=マネックス証券)

もちろんこれらの銘柄すべてがということにはならないと思いますが、コロナの影響が最も大きかった時期に好業績を達成できた企業たちですから、一定の社会的ニーズや競争力の高さが予想され、今後もある程度好業績を期待しても良いのかもしれません。反対に航空会社や鉄道会社の業績は絶不調で株価も低迷していますが、これらの企業の業績や株価が本格的に上向いてくるのはまだ先のことなのかなと想定しています。

最後に筆者が特に注目している5銘柄について事業概要や業績の推移をご紹介します。

●沖縄セルラー電話(9436)

■企業概要

電気通信事業サービス会社、KDDIの子会社。沖縄県内で「au沖縄セルラー」として「auショップ」運営(携帯電話販売&サービス)と光インターネットサービス「auひかりちゅらサービス」提供。子会社UQモバイル沖縄は格安スマホ関連を販売。沖縄県内トップの店舗網により県内トップシェア(約50%、契約台数72万)を確立。5Gの整備や離島を含む県内全域の通信インフラの強化・拡充に取り組む。その他、Skypeサポートやマンゴー栽培などのソリューション営業、家庭用IoT水耕栽培キット開発・販売等を営む。2014年MVNO(仮想移動体通信)会社設立(現UQモバイル沖縄)。2019年沖縄電力<9511>と電気と通信を組み合せた新サービス「auでんき」提供で業務提携。2020年九州ー沖縄の海底ケーブル竣工。

■業績推移

沖縄セルラー電話
(画像=マネックス証券)

●遠州トラック(9057)

■企業概要

貨物運送会社、静岡県袋井市本社、住友倉庫の子会社。一般貨物自動車運送(トラック運送)、共同配送、3PL、SCM、輸配送、生活関連の引越・不動産業など国内物流サービスを提供。ネット通販向け幹線輸送業務、家電品や食品、日用品・衛生用品等の生活関連貨物の取り扱いが主力。倉庫施設を介さない無在庫方式のノンストック輸送システム、共同配送システムの範囲拡大、3PLを機軸に流通系分野への取引開拓を推進。海外は中国での物流サービスが中心。2006年住友倉庫の子会社となる。2014年太陽光発電による売電事業に参入。2017年インターネット通販の宅配業務に参入。2018年NEXCO中日本と中継物流拠点「コネクトエリア浜松」を共同設立・運営。主要取引先はアマゾンジャパン合同会社、生活協同組合ユーコープ。

■業績推移

遠州トラック
(画像=マネックス証券)

●G-7ホールディングス(7508)

■企業概要

カー用品店・スーパー等を運営、神戸市本社。「オートバックス」と「業務スーパー」を中核にオートバックス・車関連事業(車関連用品・部品・車両販売)、食品・雑貨販売、厳選食品卸売事業を営む。グループ店舗数433(2020年3月)。主力の自動車用品販売店「オートバックス」(68店舗)、業務用食材を小売販売する「業務スーパー」(145店舗)を全国展開、それぞれ国内最大のフランチャイジー。その他、自社ブランドのバイク専門店「バイクワールド」運営。農家直販の農産物直売所「めぐみの郷」の出店拡大、不動産賃貸の複合商業施設「G-7モール」に注力。2012年マレーシアにオートバックス店進出。2014年グループ店舗が複数集合拠点を「G-7モール」に統一。2016年バイク王&カンパニー<3377>と資本業務提携。2020年ユニーから99イチバ(ミニスーパー「mini ピアゴ」の店舗運営)を譲受。

■業績推移

G-7ホールディングス
(画像=マネックス証券)

●リスクモンスター(3768)

■企業概要

与信管理サービス会社。法人会員向けASP・クラウドによる与信管理情報・業務(企業格付・与信限度・与信判断指標・信用力・営業支援)のリスク・マネジメント・システムによる分析・提供。主力商品は「e-与信ナビ」(企業格付や推奨与信限度額などの与信判断指標を提供)、「e-管理ファイル」(一括動態管理)。その他、ビジネスポータルサイトでのグループウェアサービス、営業支援サービス、社員研修支援、BPOサービス(データエントリー業務等)を展開。信用調査会社(東京商工リサーチ・レンゴー調査・東京信用調査・信用交換所グループ)と連携、法人会員数約5000社に440万社の与信情報を提供。2016年「リスクモンスター共済サービス」提供開始。2019年テクマトリックス<3762>とAI活用によるRM格付精度向上を共同で調査研究。

■業績推移

リスクモンスター
(画像=マネックス証券)

●東洋水産(2875)

■企業概要

「マルちゃん」ブランドの即席ラーメン・カップ麺大手。食品(即席カップ麺、即席袋麺、生麺、チルド食品、スープ、チルド食品、加工食品)の製造・販売、水産食品/冷凍魚介類の仕入・加工・販売。創業来の水産物取引・輸出入と加工食品(魚肉ハム・魚肉ソーセージなど)から即席麺主力に変遷。主力商品は「赤いきつね」「緑のたぬき」「マルちゃん正麺」「麺づくり」「あったかごはん」など。アメリカ・メキシコの即席麺市場ではトップシェア。傘下に子会社のユタカフーズ<2806>、持分法適用会社の仙波糖化工業<2916>を持つ。2018年縦型カップ麺「QTTA」発売。主要取引先は三井物産。

■業績推移

東洋水産
(画像=マネックス証券)

益嶋 裕
マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー
早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2008年にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツ作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。

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