(本記事は、本間卓哉氏の著書『売上が上がるバックオフィス最適化マップ ーーテレワーク・コスト減・利益増・DXを一気に実現する経営戦略』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

土台を固める―グループウェア「コミュニケーション」編

コミュニケーション
(画像=PIXTA)

ここからは、この章と、続く第3章で取り上げるさまざまなITツールの活用に必要な、グループウェアやインフラについてお伝えします。

「電話・面談」以外のコミュニケーションを円滑にする要の役割

まずはグループウェアから解説します。

第1章でも説明しましたが、グループウェアとは、チャットやウェブ会議、スケジュール管理、クラウドサーバーなど、企業内のさまざまな業務効率をアップする機能を持つツールです。ITツールには、経費申請や承認をシステム上で完結するワークフロー機能を持つものが多いのですが、さまざまな用途にカスタマイズして使用できる、ワークフロー機能に特化したグループウェアもあります。

このようなグループウェアが重要なのは、先述したように、バックオフィスの最適化は掛け算で実現されるものだからです。優れたITシステム(x)の効果を最大限に発揮するには、グループウェアやインフラ(y)の質と的確な運用が必要不可欠です。

多機能なグループウェアですが、中でも特に使われているのはコミュニケーションについての機能です。やり取りのスピードアップや、ムダなやり取り自体をなくす効果が期待できます。

ひと昔前、ビジネス上のコミュニケーション手段は、手間や重みの少ない順から、メール→電話→会って話す―という3種類が考えられました。さらに、数年前からメールと電話の間にチャットが、そして近年急激に使い勝手が良くなり、実用の機会が増えているウェブ会議が加わり、現在は次の5種類が主な選択肢となっています。

①メール→②チャット→③電話→④ウェブ会議→⑤会って話す

バックオオフィス最適化マップ
(画像=バックオオフィス最適化マップ)

グループウェアは、③電話と⑤会って話す以外のコミュニケーションを円滑にする機能を多く備えていますが、多機能なものから、機能が絞り込まれたものまで多種多様です。第1章で触れたように、多くの部分をカバーするツールを選ぶ必要はありません。

むしろ、メールはG Suite(Gmail)、チャットはSlack、ウェブ会議はZoomといった形で、複数社のサービスを組み合わせる運用のほうが一般的です。とはいえ、G Suiteはチャットやウェブ会議の機能もあるので、すべてG Suiteでまかなうことも可能です。使い勝手を試して、自社なりのベストな組み合わせを検討してみてください。

ちなみに、メールはどんな企業でも最低限、メーラーを使用しているかと思います。

そのため、わざわざG Suiteのようなグループウェアを新たに導入するメリットが感じられないかもしれません。しかし、Gmailのようなウェブメールは検索性に秀でています。ウェブをグーグル検索する感覚でキーワード検索ができ、検索結果も瞬時に出るので、過去のメールから情報を探すときに非常に便利です。メールを見返す機会の多い人なら、明らかに生産性が変わる便利さなので、導入を検討する価値は大いにあると思います。

この①~⑤のコミュニケーション手段は、グループウェアのサービス選びと同様に、どれか1つに集約すればいい―というものではありません。それぞれ一長一短があるので、以下に紹介するメリットとデメリットを鑑みて、適切な手段を都度選んでください。

①メール

世界共通の規格で情報の送受信ができ、送受信者のデータやタイムスタンプが残るので、情報を確実に残すのに優れています。相手が読みたいときにメールを開けばいいので、相手の時間を奪うこともありません。

ただし、その分、急いで読んでもらえなかったり、必要なメールが迷惑フォルダに行ってしまったりと、確実に見てほしい情報の既読がわからないので、絶対に見て欲しいメールの場合、開封確認機能を使う、急ぎなら電話を併用する、といった手間を要することもあります。

②チャット

チャットはメールと電話の「いいとこ取り」のような性質があり、バックオフィス最適化における重要なツールです。

そのため、ぜひ活用していただきたいのですが、すでに述べたように、社内のチャットツールは必ず1つに統一してください(取引先の要望には合わせる)。

バックオフィス最適化における重要なポイントは、部門の壁を越えることです。

たとえば、経費申請で何か疑問点があった場合、書類による申請なら、経理担当者は申請書類を持って、申請者本人に会いに行くしかありません。しかも、申請者が不在で、処理が進められなかったりします。そこで経費精算システムとチャットを併用すれば、ミスが見つかっても、申請画面をキャプチャして、その画像と一緒に「この解釈で合っていますか?」などと尋ねれば済みます。質問されたほうも、返答や修正をスマートフォン・PC上で完結できます。

またチャットの真価は、対社外のやり取りでも存分に発揮されます。プロジェクトの進捗の把握などは、メールよりも明らかにチャットのほうが効率的です。ウェブメールのように過去ログの検索も簡単かつスピーディーにできますし、メール添付では大きすぎる大容量のファイル送信も可能です。

そして、それらの利点に勝るとも劣らない、チャットだけの大きなメリットが「すぐに修正・削除ができる」という点です。相手の名前を間違えたメールに送信直後に気づいても、できることは謝罪メールを新たに送ることのみですが、チャットなら投稿の削除、名前の修正といった対応が即座にできます。

ただし、リカバリーが容易な分だけ、記録としての重みは減ります。本当に重要な情報の送信はメールでしたり、「アーカイブとして同じ内容をメールしておきます」とチャットしてメールも送る、といった使い分けも大切です。

ちなみに、社外との連絡でも、こちらがイニシアチブを握れるケースもあるので、「社外連絡用のチャットツールのファーストチョイス」も決めておくべきでしょう(基本的には社内用の統一チャットツールと同じで問題ありません)。

■ここもチェック!
ツールの選定にも注意が必要です。
近年、仕事でもLINEを使いたがる人が増えています。便利なので気持ちは理解できますが、少なくとも別アカウントをつくるか、ビジネス版の「LINE WORKS」を使うべきです。そうしなければ、仕事中にプライベートの連絡が入って集中を乱されますし、古いやり取りも消えていきます。
これは企業側から見てもハイリスクです。従業員が退職する場合、セキュリティ上過去の仕事のやり取りは削除しなければいけません。しかし、プライベートに使うLINEアカウントを消してくれ、と言って了承してくれる人などそういません。Facebookのメッセンジャーも、タイムスタンプ等の管理がゆるく、過去ログを参照しにくいなど、仕事で本格的に活用するのは不安があります。

③電話

相手と直接話すことで明確な意思疎通が可能な反面、記録を残しにくい、相手の時間を強制的に奪う―といった欠点もあります。

とはいえ、電話でなければいけない用事はありますし、線引きをしっかりすれば有用なコミュニケーション手段となります。私の在籍当時のChatwork株式会社では、緊急性が本当に高い用事以外は電話を使わない、というルールがありました。これなら、仕事に集中したい時間はメールやチャットも見なくて済みます。電話が来たら出る必要がありますが、そうすべき用事の連絡だとわかるので余計なストレスはありません。

④ウェブ会議

③と⑤の間をつなぐ手段です。直接会うわけではないが、表情やジェスチャーなども含めて豊富な情報量を伝えられます。

ただ、モニターとインターネット回線を挟むことで緊張が生じたり、直接話せば伝わるニュアンスが失われる可能性はあります。そんなデメリットもあるので、ITに馴染みがない方には避けられがちな手段でしたが、近年の目覚ましいツールの進化と、新型コロナウイルスの影響による社会的要請から急激に広がっています。

何よりも、移動の時間や交通費がなくなるという大きなメリットがあるので、慣れた人が増えることで、今後も加速度的に広がっていくでしょう。社内だけでなく社外との利用も増えており、ウェブ面接で採用を行う企業もあります。今後、チャットや電話よりも濃密なやり取りをウェブ会議で交わし、本当にここぞ、という用事のみ会いに行くのが、アフターコロナのスタンダードとなるかもしれません。

⑤会って話す

最も直接的なコミュニケーションで、ウェブ会議で削ぎ落とされる可能性がある情報も余すところなく伝えられる手段です。相手の時間を最も多く奪い、そのために費用が発生することも多い代わりに、ここぞというときに用いられる手段です。

見方を変えれば、何でもかんでも会って話していては、その重みが減ってしまいます。チャット等の手段を活用することで、「会って話す」ことの価値をより高める効果も期待できるのです。

テキストだけに頼らない

テキストには向き不向きがあります。文字だけを受け取っても、感情が見えずに深刻さが的確に把握できませんし、反対に、自分の本意ではない冷たさや怒りを、相手が受け取ってしまう可能性もあるからです。とはいえ、スマートフォンなどのやり取りでは感情を表すために入れることの多い絵文字やスタンプが使えない社外の方なども多いので、そのような懸念がある場合は、簡単な用事でもメールやチャットではなく、③~⑤のコミュニケーション手段を用いたほうがよいケースもあると思います。

私の場合は、どうしても誰かを叱らねばならないとき、不平・不満・苦しい話があるときなどは、できる限り会って話すか、最低でも電話をするようにしています。

いずれにせよ、適切なコミュニケーションをするには、「相手を思いやること」が大切です。

その手段を選んだら、相手がどう思うか。まず、相手の時間を極力奪わない発想は大切ですが、かといって大変な金額の取引をメールやチャットだけで進めるのも問題かもしれません。

同僚や取引先のことを思いやって最適なコミュニケーション手段を選んでいけば、自ずとバックオフィス最適化につながるコミュニケーションの方法論ができあがっていくはずです。

代表的なグループウェアとその機能的な特徴を、下の表に簡単にまとめておきます。

バックオオフィス最適化マップ
(画像=バックオオフィス最適化マップ)
バックオフィス最適化マップ
本間 卓哉
1981年秋田県生まれ。一般社団法人IT顧問化協会 代表理事、株式会社IT経営ワークス 代表取締役、株式会社DXソリューション 代表取締役。使命は「人×IT=笑顔に」。中小企業に向けて、その企業に適切なITツールの選定から導入・サポート、ウェブマーケティング支援までを担うITの総合専門機関として、「IT顧問サービス」を主軸に、数多くの企業で業務効率化と売上アップを実現。これらのノウハウを共有し、より多くの企業での活用促進を図るために、2015年にIT顧問化協会(eCIO)を発足。「経営にITを活かし、企業利益を上げる架け橋に」を理念に、専門家向けにeCIO認定講座を開始。これにより、IT活用の専門家ネットワークを形成し、IT活用・デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を望む全国の企業からの相談を受け、中立的な立場で的確な支援ができる体制を構築している。2020年には、経済産業省より「情報処理支援機関(スマートSMEサポーター)」として認定を受ける。著書に『全社員生産性10倍計画』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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