(本記事は、本間卓哉氏の著書『売上が上がるバックオフィス最適化マップ ーーテレワーク・コスト減・利益増・DXを一気に実現する経営戦略』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

その顧客、別の担当にすぐ引き継ぎできますか?―営業管理

引継ぎ
(画像=PIXTA)

営業管理の主な問題点は、次に示した通りです。顧客管理という観点では共通点が多いので、名刺管理と重複する部分もあります。

問題点① 個人で顧客管理をしているので、管理や引き継ぎが大変
問題点② 将来の売上予測や現状の数値が、正確かつリアルタイムに把握できない
問題点③ お客様の情報が社内PCでしか参照できず、共有もうまくできていない

名刺管理の問題点①と同じように、各担当者が顧客管理を個人で行う企業は少なくありません。そのため、営業先でバッティングしてしまうこともあります。

また、頭の中にしかない情報も多く、引き継ぎなどの際に不備があり、お客様に迷惑をかけて失注やクレームにつながってしまうこともあります。

②も、正式な契約に進みそうな取引が複数あったとしても、その情報管理は、各担当者や各部署がエクセルなどで行っている企業が多いです。

そんな企業の場合、請求書を出して、経理上の正式な売上が立つまでの売上予測や、正確な売掛金の額などをタイムリーに把握できないので、精度の高い経営分析は難しくなります。

顧客管理ができている企業であっても、その使用ツールがエクセルやレガシーな基幹システムなどだと、③のように出先で情報を参照できない場合が多いです。外回りの担当者から電話が鳴って、「私のPC立ち上げて!」と、パスワードを伝えられた経験がある方もおられるのではないでしょうか。

また、当たり前ですが他の人が気軽に使えないので共有も難しく、総務担当者やカスタマーセンターが顧客情報を参照できず、クレームやお問い合わせにうまく対応できないこともあります。

①「個人で顧客管理をしているので、管理や引き継ぎが大変」の解決方法

これは名刺管理システムとまったく同じ話ですが、システム上で、なおかつ社内のメンバーで顧客情報を共有できるので、管理や引き継ぎも容易になります。

特に「日本企業あるある」と言えるのが、退職者が出たときの引き継ぎで問題が発生することです。

ITシステムの利用を抜きにしても、日本企業は情報管理が属人的になりがちです。海外の場合、すぐに辞める人も多く、長期バカンスをとるのが当たり前なので、情報共有ができているのは仕事をする上で大前提です。

また、これには「情報を自分だけで囲うほうが得」という考えもあるでしょう。しかし、それが成立するのは狭い範囲の競い合いまでだと思います。優秀な経営者は、ギブ・アンド・ギブが得をする秘訣で、情報を惜しまずシェアする人に、より質の高い情報が集まってくることを理解しています。滅多なことでは囲い込みをしません。

一人でカバーできる範囲には限界があります。自身のステージを上げるためにも、周囲と情報共有するべきだという空気を社内に醸成できると、システム化を推進しやすくなります。

②「将来の売上予測や現状の数値が、正確かつリアルタイムに把握できない」の解決方法

ITによる営業管理のない企業が、具体的な取引に至っていない案件に対する経営判断を下すタイミングは、定例の会議やミーティングのときです。

営業担当者の報告を聞いて、経営者が行けると判断すればプッシュして売上予測に反映し、反対に難しそうだと感じたら、撤退やリソースを減らす判断を下します。

前者ならまだしも、後者の場合、たとえばそのミーティングが週1回なら、1~6日分、他の案件に回せたリソースがムダになる可能性もあります。タイムリーな営業管理ができていれば、そのムダを減らせますし、売上予測もより正確になります。密度の高い対話を要する経営判断もありますが、営業管理システムの情報をチェックして、臨時ミーティングを行う判断をすることも可能です。

③「お客様の情報が社内PCでしか参照できず、共有もうまくできていない」の解決方法

社外でデジタル化した情報を参照できない企業は多いです。近年はVPNを導入し、社内PCの情報を外でも見られる企業も増えていますが、その場で見積書を作成する―といった作業まで可能な環境はそう多くありません。

営業管理システムなら、情報のチェックはスマートフォンで簡単にできますし、見積書の作成機能を持つツールも多いです。場合によっては「帰社して見積もりをつくってお送りします」と言っていたところを、「この後簡単な見積書をつくってすぐメールします」とできます。

このスピードが案件の成否を分けることもあるので、地味に重要なポイントです。

以上のように、非常に重要な営業管理の実施およびIT化ですが、効果が大きい薬だけに、用法を誤ると毒にもなりかねません。経費精算システムと同じく、特に導入・利用にあたって、現場の理解と同意を得ることが重要になります。

バックオオフィス最適化マップ
(画像=バックオオフィス最適化マップ)

営業管理システムを導入し、そのような情報を社内の財産とするには、各担当者にデータ入力をしてもらう必要があります。自分の頭の中で情報管理をしていた人は、データをまとめ、報告等をする習慣を持っていないこともあります。

そこで重要になるのが、ファシリテートです。営業管理とは、「これまでなかった面倒な入力をさせる」ことではなく、「入力した情報を蓄積して売上をアップさせる」ことだと伝え、理解を得ましょう。

加えて、もう1つの重要なポイントが、報酬体系などのチェックです。

先ほどのコラムで触れたように、自分の売上が下がり、報酬に影響するから情報をシェアしたくない、と考える人も出てくるかもしれません。

そうではなく、その情報の価値を最大化するのが営業管理であることを伝え、理解してもらうだけでなく、その人が開拓した相手を受け継ぎ、同僚が契約を獲得したら、両人にインセンティブが入るような、チームでの評価方法も必要になるかもしれません。

実際、営業管理システムを効果的に活用するには、チームで動くことも大切になります。

多くのツールには、経営判断のために、現在の見積もりを重要度や確度ごとに分けて評価する機能があります。ほぼ受注できると見込んだ見積もりは、売上予測に組み込めます。

そのような分類をした上で、現時点の見積もりを段階ごとにグラフ等で可視化すると、非常に効果的な経営判断ができます。

確度ごとに受注の可能性が「高」「中」「低」に分類した見積もりが計10件あり、「高」4件、「中」4件、「低」2件に分かれていたとしましょう。そして、営業のエースが担当する案件がすべて「高」だった場合、そのエースのリソースを「中」や「低」の案件に回すと売上が大きく変わる可能性があります。

この場合、仮にそのようにして、「高」の案件のクロージングはエース以外の営業マンがやったとしても、「中」や「低」案件の結果にかかわらず、エースの評価はしっかりとなされるべきです。

これらの点も踏まえ、現場目線でも満足を得られることを意識して、IT導入を推進してください。売上アップを目指すのは大切なことですが、従業員の満足につながらなければ、現場が疲弊するだけです。たとえ売上が上がっても、それでは長続きしません。営業担当者のモチベーションも含めての「営業管理」です。

サービス紹介

Salesforce(セールスフォース)
非常に多機能・高機能な営業管理システムです。本書で紹介する他のITツールに比べると比較的高額ですが、明らかにそれだけの価値があります。

ただし、あまりに多機能なので、自社用にカスタマイズする初期設定だけでも大変です。「知り合いの経営者が絶賛していたから」といった理由で安易に手を出して、使いこなせずに終わってしまうケースも見聞きします。最低限の営業管理で済む企業の場合、名刺管理(顧客管理)でSansanを導入していたら、機能的にはそれで十分である可能性もあります。
Zoho(ゾーホー) CRM
「CRM」はCustomer Relationship Managementの略で、「顧客関係管理」などと訳されます。Salesforceに比べるとシンプルなツールで、ある程度のフォーマットも固まっています。そのため、Salesforceほど難しくはありません。とはいえ、その真価を発揮するには、自社用のカスタマイズが肝心です。導入の際にはサポートや専門家を使って、しっかりと初期設定することをおすすめします。
kintone
SalesforceやZoho CRMとは少し毛色が違う、自社に合ったシステムを作成し、さまざまな業務を管理できるツールです。コミュニケーション機能も豊富で、メールやエクセルによるファイル作成が多い企業の省力化に大きな効果を発揮します。

営業管理システムの注目機能

先ほども少し触れた、案件を重要度などに分けて分類し、グラフや数値で可視化する機能は特に重要です。この機能で効果的な経営判断をするからこそ、単なる「顧客管理」ではなく、「営業管理」を実現できます。

ちなみに、その前段にある顧客管理の情報の精度は、経営判断の質に直結します。たとえば、Aさんが受注確度を低いと見ている案件の取引先担当者が、Bさんと地元が同じ人だとわかれば、担当替えによって確度を上げられるかもしれません。

日々、現場で働くみなさんは、その環境なりのベストを尽くされているに違いありませんが、IT活用によって、その「ベスト」の上限を押し上げることもできるのです。

バックオフィス最適化マップ
本間 卓哉
1981年秋田県生まれ。一般社団法人IT顧問化協会 代表理事、株式会社IT経営ワークス 代表取締役、株式会社DXソリューション 代表取締役。使命は「人×IT=笑顔に」。中小企業に向けて、その企業に適切なITツールの選定から導入・サポート、ウェブマーケティング支援までを担うITの総合専門機関として、「IT顧問サービス」を主軸に、数多くの企業で業務効率化と売上アップを実現。これらのノウハウを共有し、より多くの企業での活用促進を図るために、2015年にIT顧問化協会(eCIO)を発足。「経営にITを活かし、企業利益を上げる架け橋に」を理念に、専門家向けにeCIO認定講座を開始。これにより、IT活用の専門家ネットワークを形成し、IT活用・デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を望む全国の企業からの相談を受け、中立的な立場で的確な支援ができる体制を構築している。2020年には、経済産業省より「情報処理支援機関(スマートSMEサポーター)」として認定を受ける。著書に『全社員生産性10倍計画』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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