「コロナ相場」によりマーケットが安定しない中、資産の分散先として不動産が注目されている。
公認会計士であり、税理士でもある澁谷賢一氏は、不動産投資の特徴の一つとして「他人資本で自己資本を積み上げる」点を挙げる。何が起きるかわからない「ニュー・ノーマル」に直面した今こそ考えておきたい「資産づくりの基礎」を紹介する。
(本記事は、澁谷賢一氏の著書『公認会計士・税理士が教える「東京」×「中古」×「1R」不動産投資の始め方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)
多くの人が悩むお金にまつわる4つの悩み
大学を卒業して社会人になり、自分の将来設計を考えたり、家庭を持ち始める20代や30代の方は、将来への期待を膨らませる一方で、何ともいえない漠然とした不透明な将来に「自分はこの先どういった人生を歩んでいくのであろう」と不安を抱えがちです。
40代や50代の方は、家庭を持ち、親の生死に直面していく世代です。そうすると、30代までは真剣に考えていなかった、老後の生活や将来の相続などを意識し始めます。
このように世代によって人生観や考え方は千差万別です。
「資産運用について考えてみたことがありますか?」
という質問をお客様によく投げかけます。
すると、世代に関係なく、多くの方は一度も真剣に考えたことがなかった、問題意識は持っているものの行動に移せていない、という声が非常に多いことに気づきました。
自分の人生にしっかり向き合わなければいけないタイミングはどの世代にも訪れるにもかかわらず、考えるきっかけがなかったり、将来の人生設計に真剣に向き合うのがどこか怖い、老後の人生まではまだ長いから後回しにしてしまう、といったような方が多い印象です。
私にご相談いただく方々の悩みを少しずつ紐解いていくと、ほとんどのケースは以下の4つに当てはまります。
・将来の収入に対する不安 結局は自分の身1つで稼いでいかなければならないが、将来リストラや身体が動かなくなって、収入源がなくなったらどうしよう。収入口を増やしたい。
・正確な投資の知識不足 日々の仕事に忙殺されて、投資や運用に時間を割いて学んでいる暇やきっかけがない。しっかり資産運用の知識を身につけたい。
・税金負担が大きい 税金負担が重く、何かしらの対策をしたいとは思っているけど、方法が分からない。方法があるならば対策をしたい。
・相続に対する不安 親も高齢になった。また、子どもに将来財産を継がせたいものの特に何も対策はしていない。方法があるならば対策をしたい。
これらの悩みを少しでも解決できる方法を、私は本書で書き記していきたいと考えています。
お金の蛇口が1つしかないことのリスク
下の図を見てみましょう。蛇口は収入源、蛇口から出てくる水は入ってくるお金(収入)、ビーカーはお財布の中身、排水口から出ていく水は使ってなくなるお金(支出)と捉えてください。
蛇口から出てくる水はビーカーに溜まっていきますが、一定量の水は排水口から出ていきます。これは生活費などです。
お金は使えば使うほど、排水口から出ていきますから、このビーカーの水が空にならないよう、皆さんは日々働き、お金を稼ぎ続けるのです。
その蛇口からの水がふとしたタイミングで止まってしまえば、ビーカーから水は減り続けることになり、ゆくゆくは溜まっていた水はすぐに空になってしまいます。
日々自分の身体を使って働いて稼いでいる方にとって、これはとても大きなリスクであると感じませんか?蛇口が1つ壊れてしまうだけで、ビーカーの水は減り続けてしまうのです。
その他にも日々の生活の中で、頭を悩ませる出来事は実に多いです。
【仕事】将来のキャリアプラン、転職、ノルマ、会社の人間関係…… 【生活】子育て、養育費、住宅ローン、親の介護、健康問題…… 【社会、制度】消費税増税、年金受給開始年齢引き上げ、少子高齢化、個人税金引き上げ……
人はこのような悩みを日々かかえながら自分自身の人生設計を考えていく必要があるのです。こういったリスクや不安をかかえながらストレスフルな将来を過ごすよりは、可能な限り明るくゆとりある未来を過ごしたくはありませんか?
私が相談を受ける方々は、資産運用を通じて豊かになり、家族を幸せにしたい、ビジネスをより充実させたい、いろいろな国を旅行したい、高級車に乗りたいなど、その想いは様々でした。
想いを実現するためには、安定した収入の基盤を複数作り、心とお金のゆとりを手に入れて、賢く将来のリスクに備えることが必要です。
とはいっても、今は問題なく生活ができているし、人並みよりは稼いでいるつもりだ、自分には事故や災害は起こらない、という考えを持っている方もいらっしゃると思います。これは人間の正常性バイアスという心理学の中でも定義づけられている特性が働いています。正常性バイアスがかかると、リスクに備えるという考えが停止してしまい、万が一のことがあったときの対応が遅れて、手遅れになってしまう恐れがあります。
縁起でもない話ではありますが、通勤途中に青信号を渡っているときに突如車が信号無視をしてきて、激突されてしまった。一命は取り留めたものの、その後遺症として手足に麻痺が起きてしまった場合はどうでしょうか?健康診断に行ったときに、今までは見つからなかった癌の影が見つかってしまってはどうでしょうか?やむを得ず、今の仕事を休職しなければならない状況は突如訪れるのです。
こういったリスクに備えて、本業以外に収入が得られる蛇口を増やしておくことで将来のリスクに備えることができるのです。重要なのは、この蛇口は自分で働くことなくお金が入ってくる仕組みでなければいけないということです。
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