自分年金づくりのために不動産投資を検討したいが、定年退職をする頃までに不動産投資ローンを返済しきれるかどうか……。そう悩む人は、思い切って退職金をローン返済に充てるというのも一つの手だ。

不動産投資を活用し、豊かな老後を実現するための一つの方法を紹介する。

(本記事は、澁谷賢一氏の著書『公認会計士・税理士が教える「東京」×「中古」×「1R」不動産投資の始め方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

収益マンションを複数戸保有する

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(画像=Tinnakorn jorruang/Shutterstock.com)

私たちが扱っている中古ワンルームマンションは、約8万円~10万円の家賃が多く、そこから1万円前後が管理費用として引かれ、手残りが約7万円~9万円になります。

ローンが完済していれば、これが月々の収入となります。この収入は、使っても使っても、湧き出る蛇口の水となり得るのです。

マンション1戸では少々心許ないですが、2戸、3戸と複数所有していればどうでしょうか。年金収入とは別に追加で20万円前後入ってくれば、安心して老後を過ごせるのではないでしょうか。

先ほど、65歳から95歳までにゆとりある生活を送るためには、月々では約15.2万円、金額合計では約5500万円不足すると述べました。仮に25歳から自分で積み立て始めたとしても、65歳までの40年間では、月々約11.5万円も貯蓄に回さなければなりません。

もしこれが100歳まで生きるとしたら準備しておく金額は、15.2万円×12ヵ月×40年間=7296万円≒7300万円となり、25歳からでは月々約15.2万円、35歳からでは約20.2万円もの貯金が必要です。

ワンルームマンションでレバレッジを効かせて運用していれば、月々の収支はプラスマイナス数千円の範囲で、資産の構築が可能になるのです。65歳時点でローンを完済するためには、30歳以降で運用を始める人は、運用途中での繰り上げ返済や退職金による繰り上げ返済が必要になります。

可能な限り投資額をおさえて資産を作っていくためにも、早いうちから将来の資産を作ることの重要さがお分かりいただけると思います。

実はワンルームマンション投資の繰り上げ返済は、退職金の使い途としては大変効率が良いのです。

例えば、30歳のときに2000万円で家賃収入が7.5万円の中古ワンルームを35年ローンで購入したとしましょう。60歳の時点でローンはあと5年間残っていますが、ここで退職金のうちの500万円をローン返済にあてて完済するとキャッシュフローが月に7万5000円、年間で90万円生み出されるようになります。定期預金に預けたり、自宅のローンの繰り上げ返済に使うよりよほど効果的な使い途になるのです。

大企業を定年退職した場合の平均退職金額は約2500万円といわれています。これを毎月15万円ずつ取り崩していった場合、2500万円は約14年で尽きてしまいます。

この退職金のうち、500万円をマンション完済にあてたらどうなるでしょうか?

(2500万円−500万円)÷{(毎月の出費15万円−家賃収入7万5000円)×12ヵ月}≒22年

つまり、22年まで退職金は長持ちして、なおかつ資産であるマンションも残っています。ワンルームが2戸あれば、退職金から2戸分の繰り上げ返済費用1000万円を引いた1500万円が手元に残ります。2戸分の家賃は15万円に相当しますから、この1500万円は手つかずで手元に残り続けて、いざというときの介護費用などに充てることも可能です。

インフレに備えよ

毎年2%のインフレが進むと30年後の現金価値は約半分減ってしまいます。

長いデフレの時代が続いたせいか、日本人はインフレに対しての備えの意識が希薄なようです。インフレが進行するということは、モノの値段が上がって、相対的に貨幣の価値が下がるということです。日銀の目論み通り毎年2%のインフレが達成できたなら、30年間で今持っている1000万円は、552万円の価値しかなくなります。

実際に、物価はどうなっているのでしょうか。30年前と現在で物の値段を比較してみましょう。1985年と2015年で比較してみました。

たばこ(マイルドセブン)は、1985年には200円でしたが、2015年には430円と2.1倍に、国立大学の授業料25万2000円から53万5800円と2.1倍に、郵便はがきは30円から52円と1.7倍に、銭湯入浴料は260円から460円と1.8倍に、映画館は1500円から1800円と1.2倍に値上がりしています。

ファストファッションの流行やインターネットで最安値比較ができるようになって、一見モノの値段は下がっているようには見えますが、30年というスパンで見ると、基本的な部分ではやはり1.5倍から2倍程度に値上がりしています。

インフレ下において「現金で保有する」ことは、資産が目減りしていくのをだまって見ているのと同じです。

仮にインフレ率が2%であるならば、1年後にはその保有し続けた現金の実質的価値は98%にまで減退します。少なくとも年利2%以上の金融商品で運用しなければなりません。

公的年金は「マクロ経済スライド」といって、物価の上昇や下降に調整を加えた率で年金受給額を調整していますので、インフレには対応しているでしょう。しかし、預貯金の利息はコンマ以下の利息しかつきませんから、インフレには到底勝てそうにありません。また個人年金は加入した時点の利率で将来の受給額が決められているので、インフレには対応できません。

インフレで一番打撃を受けるのは、年金生活者です。給与収入を得ている人は、インフレに伴って給料が上がる可能性はありますが、年金収入と預貯金を切り崩して生活しているリタイアした人たちはそういうわけにはいきません。

インフレに強い投資商品といえば美術品や金(ゴールド)が挙げられますが、一番は何といっても不動産でしょう。不動産は実物資産ですから、インフレによる貨幣価値の低下が起こることで相対的に価格が上昇します。不動産投資による賃貸収入も物価の上昇につれて上がりますので、インフレ経済にも対応できるといえます。

実物資産であることのメリットは、3つ考えられます。

1つ目は、紙切れや電子データと違って、消えてなくならないことです。

株を所有していたとしてもその会社が倒産してしまえば株券はただの紙切れになります。紙幣ですら猛烈なインフレで紙くず同然になったケースがあることを世界史は教えてくれます。マンションは仮に建物が全壊したとしても土地は必ず残りますから、なくなることはありません。

2つ目が、取得に際して金融機関が融資を組んでくれることです。

これは他の金融商品では考えられないことです。実物資産なので、不動産そのものが担保として機能するからです。

3つ目が、実物資産ゆえにインフレに強いということです。

資産を現金のまま所有していると、インフレになった時に価値が目減りしてしまいます。これを実物資産であるマンションに替えておけば、インフレが進めば進むほど資産価値が高まります。また、インフレ時には現金の価値が下がるので、借金という負債も目減りします。日本が国の借金を何とかインフレにして圧縮しようとしているのは皆さんもご存じでしょう。

将来的にインフレが予想されるのであれば、借り入れをして実物資産であるマンションを購入するのが賢い投資といえます。

中古ワンルームマンションなら売却も比較的容易なので、経済状況が大きく変わっても対応することができます。また、インフレになれば金利も上がると予測されますので、低金利のうちに購入することも大事なポイントです。

公認会計士・税理士が教える「東京」×「中古」×「1R」不動産投資の始め方
澁谷賢一(しぶや・けんいち)
公認会計士、税理士、㈱ブリッジ・シー・エステート 代表取締役、ドムスレジデンシャルエステート㈱ 代表取締役。2007年に成蹊大学 経済学部経営学科卒。2010年の公認会計士試験合格後、㈱ブリッジ・シー・キャピタルの立ち上げに関わる。同社立ち上げ後は、一部上場企業へのコンサルティング業務や、中小企業から個人まで数十社の顧問業務を担当。総額40億円規模の不動産開発、企業買収案件、富裕層の相続対策や資産運用にも従事。2013年10月に、個人向けの不動産サービスに特化した㈱ブリッジ・シー・エステートを立ち上げる。東京都心の区分レジデンスを国内外の投資家に提供中。WEBメディア「幻冬舎ゴールドオンライン」や「WHITE CROSS」連載、雑誌「Forbes Japan」「PRESIDENT」、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」など、メディア出演実績多数。

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