「コロナ相場」によりマーケットが安定しない中、注目されている投資先の一つが不動産である。
不動産は商品そのものに価値があるため株式投資やFXとは異なった値動きをする。相場が乱高下する局面で注目が集まるのも無理がないだろう。
ただし、金額が大きく、売買のしやすさという点で劣るなどのデメリットがあるのも事実。にもかかわらず、公認会計士であり、税理士でもある澁谷賢一氏は「不動産投資は運用の基盤に置くべき」とまでいう。その理由とは?
(本記事は、澁谷賢一氏の著書『公認会計士・税理士が教える「東京」×「中古」×「1R」不動産投資の始め方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)
不動産投資をお勧めする3つの理由
資産運用の方法としては、様々なものがあることがお分かりいただけたと思います。資産運用を考えるときには、リスクとリターンのバランスを考える必要があります。リターンが高ければ資産を早く増やすこともできますが、その分リスクもつきまとうので、資産を減らしてしまう可能性もあります。このバランスを考慮して運用を始めることが大事です。
ここからは、なぜ不動産投資がお勧めなのかを解説していきます。
「卵は1つの籠に盛るな」という投資の格言がありますが、何事も1つの方法に集中するよりも、リスクを分散して運用を行うことが大切というわけです。その中でも、不動産投資は運用の基盤に置くべき、というのが本書で伝えたい意図です。不動産投資をお勧めする理由は主に3つです。
(1)他人資本で自己資本を構築できる
株式投資や暗号通貨に投資したことがある方はいますか?
これらの投資をするときに、金融機関からお金を借りて投資をしたことがある方はおそらくいないでしょう。金融機関は投資に関しては基本的にお金を貸してくれません。皆さんも、初めて会った方から「仮想通貨のビットコインに投資をしたいからお金を1000万円貸して欲しい。借りたお金は月々30年の分割で支払います」といわれた場合にはお金を貸すでしょうか?おそらく貸したくないという感情になる方が大半だと思いますが、これは金融機関であっても同様です。リスクとリターンが明らかに見合ってないと考えるからです。
しかし、金融機関は不動産投資にはお金を貸してくれます。
不動産はそれ自体に担保価値があると考えられますので、金融機関は一定の条件を満たした方であればお金を貸してくれるのです。
お金を借りて不動産に投資することができれば、不動産自体が収益を生みますので、収入から借りたお金を返済していくことができます。東京都心部のワンルームマンションであれば最大でフルローンでお金を借りて投資をすることができますが、こんな商品は世界中どこを見渡してもありません。
(2)実物資産としての安定性がある
2020年初頭の新型コロナウイルスの猛威により、株式市場は乱高下しました。ブラックマンデー、リーマンショック、ITバブル崩壊、欧州債務危機など、過去の大きな事案のあとは当面の間、すべての市場は混乱し、不安定な状況が数年間続いてきました。
不動産はというと、過去の経済ショックの前後でも変動が小さく、比較的安定的な運用ができる投資商品といえます。実物資産としてそれ自体に価値がありますので、株式のように会社が倒産して価値がゼロの紙くずになることはありませんし、FXや暗号通貨のようにその値動きが数日の間に何倍何十倍と乱高下することもありません。
将来の資産形成をするための運用先が、毎日毎日変動するようであれば、それだけで寿命が縮まりそうで、気が休まりませんよね。不動産は、管理会社に任せてしまえば基本的にお任せ運用ができますので、忙しい方々にとっては最適な運用先の1つといえます。
(3)運用益以外のメリットも大きい
各運用商品の利益は、運用期間中の利益(インカムゲインといいます)、売却したときの利益(キャピタルゲインといいます)に大別されます。不動産は、インカムゲインとキャピタルゲインの他に、保険効果、所得税・住民税の節税効果、それから相続税対策効果などがあります。これらの副次的なメリットは、個人のライフプランニングにとって効果的ですし、不動産が投資の側面だけではなく、資産形成に向いているといわれる所以です。
不動産で資産が形成される仕組み
●不動産投資は他人が作ってくれる貯金
不動産を持って資産運用に役立てる、というのは一体どういうことなのでしょうか?不動産投資の仕組みはいたってシンプルです。シンプルですが、この仕組みをしっかり理解することで、不動産投資の魅力を一層感じることができるでしょう。
皆さんは、まず不動産を購入したら、不動産の所有者(=オーナー)になります。
その不動産に自分で住むのではなく、他の第三者(=入居者)に貸し出すことで、入居者が支払ってくれる家賃収入を、毎月受け取ることができます。(下図)
ワンルームマンションの場合には、この家賃収入から、マンションを一棟丸ごと管理してくれている建物管理会社へ建物管理費と修繕積立金を支払い、賃貸管理会社には業務手数料(賃貸管理手数料)を支払って運用していくのが一般的なスキームです。家賃収入から経費を差し引いて余った残りが毎月入ってくる不動産の収入となるのです。
このように、不動産を持てば、毎月何もしないでも一定の収入が自分の口座に入ってくる仕組みを作ることができるのです。このような性質の収入を不労収入(または不労所得)といいます。
2000万円を投資して不動産を購入し、生涯持ち続ける前提とした場合、月々8万円の家賃収入があれば、投資した2000万円を回収できる期間は何年後になるでしょうか?
年間の家賃収入が8万円×12ヵ月=96万円ですから、2000万円÷96万円=約21年となり、今から21年後に投資した金額が回収できる算段です。これは長いと感じるでしょうか?それとも短いと感じるでしょうか?
21年後からやっとプラスの収益が生まれるのか・・・とがっかりする方もいると思います。しかしながら、その考え方は間違っています。
不動産はそれ自体に価値がありますので、不動産を売って現金化できることを忘れてはいけません。多くの方はこの点を見逃しています。
投資額の回収までに21年間かかったとすると、その時点では投資額の支出2000万円と家賃収入の2000万円が同額ですから、この時点ではプラスマイナスゼロということです。
ここで、仮に不動産を購入価格と同額の2000万円で売却することができれば、さらに2000万円が追加で入ってくることになりますから、運用期間トータルでは2000万円のプラスです。1500万円で売却できれば1500万円が、1000万円であれば1000万円が入ってくるということです(厳密には売却益には税金がかかります)。売らないで持ち続ければ月々8万円の家賃収入が入ってくるわけです。
もちろん21年間待ってから売らなければならないわけではなく、5年後でも10年後でも15年後でも売ることはできます。売った時点で、「購入金額<それまでの家賃収入+売れた金額」となるのであれば、不動産投資は運用期間トータルでプラスになりますから、投資は成功したといえます。
人によって投資額に対するリターンの期待値は様々なので、「こんなリターンでは成功とは呼べない」という方もいるのですが、少なくともこの計算をクリアしているのであれば、不動産投資で失敗するということはあり得ないのです。
皆さんが不動産に投資をする場合には、将来にわたって運用期間中の収支がいくらなのかということと、将来いくらで売れそうかという不動産価値そのものを念頭におきながら投資をすべきというのがお分かりいただけたと思います。どちらか1つだけでは足りないのです。ここでは、不動産投資の収益構造のざっくりとした概念を理解していただければ十分です。
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