不動産投資は「投資」という名前のついたある種の「事業」でもある。物件を仕入れ、他人に賃貸し、収入を得ながら、購入費用を返済していくのである。

事業である限りオーナーはそれなりの目利きが必要となる。ただ、誰にでも拓かれたマーケットで人より抜きん出るのは至難の業である。

不動産投資に興味はあるが、何棟も持つような事業主になるにはまだまだ……と思う初心者に向けて、公認会計士・税理士がおすすめする物件のキーワードが著書のタイトルにもなっている「東京」「中古」「1R」だ。この方法なら、不動産投資で新参者も太刀打ちできるかもしれない。

(本記事は、澁谷賢一氏の著書『公認会計士・税理士が教える「東京」×「中古」×「1R」不動産投資の始め方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

なぜ新築よりも中古なのか?

中古住宅,購入,ホームインスペクション
(画像=jeffy11390/Shutterstock.com)

●新築は次の日から中古になる

皆さんは自分が購入したマンションに住むとしたら、新築と中古どちらを選びますか?大半の人は購入して自分が住むなら新築が良いと答えると思います。

賃貸で住む場合であればどうでしょうか?それほどこだわらないと答える方が多いのではないでしょうか。

投資目的のワンルームマンションは、自分で住むわけではありません。賃貸に出して入居者に貸し出し、家賃収入を受け取ることが目的の資産ですから、たとえ築40年だったとしても家賃が維持できて入居者が途切れず、それほど価値が目減りせず、むしろ購入した価格よりも高く売却できるのであれば優良物件であるというのが投資的な考え方です。

他人に貸し出す投資用の不動産であっても、新築を好む方は一定数いますが、購入した1年後には中古マンションの仲間入りです。

私は新築であろうが中古であろうが、マンションの価値は「立地」と「造り」と「管理」で決まると考えています。築10年~20年の中古マンションをお勧めしているのは、同じ立地で同じような造りでしっかり管理されている物件であるならば、新築よりもお買い得で収益性に優れていると判断しているからです。

新築物件でも、立地にこだわっていて、良い物件はあります。ただ、東京都心部では中古の方がお手頃の価格で購入しやすいため、今の不動産市況では中古から始めてみた方が良いと考えています。

7-1
(画像=『公認会計士・税理士が教える「東京」×「中古」×「1R」不動産投資の始め方』より)

●なぜ築10年~20年がいいのか?

なぜ築3~5年ではなくて10年~20年の物件が良いかといえば、価格や家賃が落ち着いてきているのが大きな理由です。築年数が浅い物件だと、まだ物件自体が割高なまま留まっているという印象があります。

現在の不動産市況では、土地の仕入価格や建築費が高騰しているため、ワンルームマンションデベロッパーは販売価格を引き上げなければ利益が取れず、ビジネスになりません。そのため、家賃設定も高く、新築プレミアムが乗っかった新築マンションの価格になっており、マーケット価格と乖離しすぎている物件も散在しています。

かといって、古すぎてもいけません。20年を目安としているのは、金融機関の融資可能期間を考えるとその辺が目安になるからです。現在の金融機関の融資期間の計算は(55年-築年数)が多く、35年のローンを組むことを考えると、築年数は20年がぎりぎりになるのです。耐震構造や設備、間取りの観点からも、築20年よりも新しいものであれば、まず問題はないでしょう。

築年数が20年以上経過している物件は、買ってはいけないかというとそういうわけではないので、誤解をしないようにしてください。1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物については新耐震基準が適用されているのですが、それ以前の物件については、旧耐震基準に基づいた物件群になり、多くの金融機関では物件を評価してくれなかったり、購入層が極端に減ります。そのため旧耐震基準の物件はどんなに安くて利回りが良くても、運用対象としては避けた方が良いですが、それ以降に造られたマンションであれば、金融機関も評価して融資を判断してくれる可能性は十分にあります。

また、最近では融資期間の計算を(60年−築年数)で計算してくれる金融機関もありますので、その場合には築年数が25年でも最大35年のローンが組めることになります。

ここで注意した方がいいのは、2020年現在において築年数30年のような物件、つまり1990年代前半頃に作られてきた物件はバス、トイレ、洗面が一体となっている三点ユニットや、内装が昨今の物件のようにおしゃれで性能の良いものではない場合が多いです。このような物件を購入するにあたっては、賃貸需要の観点で少々懸念があるので、将来リノベーションを行うことを視野に入れた方が良いでしょう。リノベ―ションは空室の状態でないと行うことはできないので、入居者が付いている物件を購入するのであれば、退去したタイミングで行う必要があります。

そもそも、当時はマンションの1部屋あたりの専有面積が小さくてもワンルームマンションを開発することができたため、スぺースを有効活用できる三点ユニットが多く実装されてきました。小さい部屋のビジネスホテルに泊まった経験がある方は、バス、トイレ、洗面が一体となった造りになっているのを目にしたことがあるでしょう。現在の東京23区のワンルームマンションのほとんどは、一部屋あたり25㎡以上の専有面積がないと開発ができないなど、ワンルームマンションの開発規制が強化されています。

リノベーションは、三点ユニットをバス・トイレ別にしたり、キッチンを最新式のIHコンロに変える、壁紙をオシャレに張り替える、ダウンライトにする、フローリングを変えるなど、いくつか手を加えることで物件自体の付加価値を上げることができます。

ここで注意していただきたいのは、何度もお伝えしている通り、投資するための不動産は自分で住むわけではない、ということです。そして、ワンルームマンションの不動産価格は、エリアや築年数で決められている割戻利回りによって決まりますので、リノベーションを通じていかに賃料を上げることができるか、という観点でのみ考えるべきです。フローリングを茶色から白色に変えたところで、賃料の上昇がそれ以上の価値を生まなければリノベーションをする意味は薄いのです。

リノベーションを視野に入れて物件を購入する場合には、リノベーションをすることで専有部分は綺麗に仕上がったとしても、そもそも賃料を上げて入居者が付くエリアなのかという、エリアの賃料相場は把握しておくべきです。郊外のエリアで、どれだけお洒落にリノベーションをしたとしても、大幅に賃料アップすることは難しいのです。

公認会計士・税理士が教える「東京」×「中古」×「1R」不動産投資の始め方
澁谷賢一(しぶや・けんいち)
公認会計士、税理士、㈱ブリッジ・シー・エステート 代表取締役、ドムスレジデンシャルエステート㈱ 代表取締役。2007年に成蹊大学 経済学部経営学科卒。2010年の公認会計士試験合格後、㈱ブリッジ・シー・キャピタルの立ち上げに関わる。同社立ち上げ後は、一部上場企業へのコンサルティング業務や、中小企業から個人まで数十社の顧問業務を担当。総額40億円規模の不動産開発、企業買収案件、富裕層の相続対策や資産運用にも従事。2013年10月に、個人向けの不動産サービスに特化した㈱ブリッジ・シー・エステートを立ち上げる。東京都心の区分レジデンスを国内外の投資家に提供中。WEBメディア「幻冬舎ゴールドオンライン」や「WHITE CROSS」連載、雑誌「Forbes Japan」「PRESIDENT」、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」など、メディア出演実績多数。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)