(本記事は、山本尚宏氏の著書『99%失敗しない、不動産投資のはじめ方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)
不動産投資に成功する人の考え方──①長期スパンで考えている
成功する人には共通点があります。不動産投資はビジネスであると考え、損得勘定や経費の考え方、売却時のこと、税金のことまで、お金にまつわる将来像をしっかり描いていることです。
そのため、不動産投資で成功している職業に多いのが、会社経営者、個人事業主です。これは当然ともいえますが、果たして他にはどのような共通点があるのでしょうか。
成功者はマクロな経済指標(日経平均株価や為替レート、GDP(国内総生産)、日銀短観など)をよく見ているため、「自分がほしいときが買いどき」という判断はしていません。本書でもリーマンショックの話などをしましたが、そうした不動産相場に影響を及ぼしそうな出来事をリアルタイムにつかんでおく必要があります。
投資マーケットの時期が悪ければ、自分がどんなに買いたいときでもグッと我慢して、5年でも10年でも待てる。それが成功への第一歩です。投資マーケットの時期の判断基準を知る方法の1つとして、検索サイト「健美家」が四半期に1度配信している「収益物件市場動向四半期レポート」や投資家が回答したアンケート結果をまとめた「不動産投資に関する意識調査」レポートなどをチェックするのも手でしょう。
そのうえで、物件に対して具体的な思考ができる。例えば立地1つとってみても「10%程度の価格差で、3分駅に近づくことができれば、その物件は買いだ」といった数字の認識を持てる人が成功しています。
成功する投資家は、5~10年の中期スパンで考えています。
利回りや節税といった、目の前の短期的なメリットだけを求めると、長い目で見たときにトータルで失敗してしまう可能性があります。
表面利回りが高くても、5年後、購入価格の70%でしか売れないとすれば、経費や税金、融資の返済、空室率などを加味すると損をしているといえます。
たとえ利回りが低くても、物件価値を維持または上昇させるような投資を継続することが大切です。
不動産投資で成功するのは、経済に関心が高く、ビジネスとして長期で損得を考えられる人です。不動産のプロがひしめく不動産投資市場ですので、短期売買(キャピタルゲイン)で利益を出すのは難易度が高い。ですから、中長期の家賃収入(インカムゲイン)で堅実に利益を出していったほうが、投資としては成功に近づけます。
不動産投資が成功すれば、安定収入源(フロー)と資産(ストック)を同時に形成できます。これができれば、年収も比較的簡単に上げることができます。
例えば、年収500万円の人が1000万円にしたいと思っても、サラリーマンだと本業でいきなり2倍にするのは至難の業です。不動産投資で物件を増やすほうが、年収500万円アップはまだ現実的です。無事達成して合算すれば年収1000万円になりますから、一定の成功を収めたといっていいでしょう。
いずれにせよ、不動産を焦って購入し、時間がないことを理由に人任せにしては成功することはできません。投資物件で黒字を出し、中長期的に利益を得る。これが不動産投資の成功の基本です。不動産投資で成功して勝ち残っていくためには、不動産仲介会社やデベロッパーの説明を十分に理解し、自分で物件を見て、建物の管理は自分でやるくらいの気概が必要です。正しく取り組めば利益を出せますが、楽には儲からない。これだけは肝に銘じておきましょう。
不動産投資に成功する人の考え方── ②経営視点を持っている
不動産投資は、株式や投資信託と異なり投資を超えた奥の深さがあります。地元の地主が管理会社任せで片手間にやるような「大家さん業」ではなく、事業経営そのものだということです。
例えば、区分マンションに投資するとしましょう。購入するとき、金融機関から「融資を引き出す」という交渉からスタートします。いかに融資を引き出せるか。そのためには「事業計画」の中身が問われます。
まずは、キャッシュフローシミュレーションが大事です。不動産投資なら「収入」として家賃収入があり、「支出」として支払い利息、減価償却、保守・管理費、租税公課などの項目があります。収入から支出を引いたものが「不動産所得」となり、そこから借入返済元金や保険料などを支払った残りの手元現金が「キャッシュフロー」になります。
会計の知識も必要になるので、投資の前に簿記の基礎知識はなるべく学んでおいたほうがいいと思います。とくにサラリーマンだと、給料から社会保険料などを天引きしたり、生命保険料を控除したりする作業は会社がやってくれますので、マイホームの住宅ローン控除などでない限り、自分で確定申告したことがない人も多いでしょう。
事業計画は多くの場合、不動産会社がまとめてくれますが、本来は自分で考えるべきです。融資を受けて、そのお金を元手に資産を大きくしていく。これはまさに事業そのものですから、不動産投資家は経営者としての視点を持たなければなりません。
家賃の回収、空室時の募集、設備の修繕など、基本的な日々の業務は管理会社などが代行してくれますが、建物全体の修繕・管理の計画は、経営者である投資家が主導していくものです。
例えば、設備業者からエアコン修理の見積もりがきたとします。「10万円?なんでこんなに高いの?」というやりとりを、オーナーと設備業者が1カ月間もしていれば、入居者はその間、エアコンがつかない部屋での生活を強いられます。そんなスピード感の欠如した対応では、入居者があっという間に離れてしまいます。
これは一例にすぎませんが、不動産オーナーになるということは経営者としての力量が常に問われているということなのです。
サラリーマン投資家の中には、目的があいまいなまま、とにかく「儲かりそうだから」「不動産がほしいから」といった理由ではじめるケースが後を絶ちません。それは事業とはいえません。「リタイア後にサラリーマンのときと同程度の収入を得たいのか」「毎月3~5万円のお小遣いがほしいのか」「将来の個人年金にしたいのか」といった目的やビジョンを明確にして、不動産投資をはじめるべきです。
そうしないと、自分の意図とは違う状況になるリスクが高まります。せっかく物件を買ったのに、毎月多額の融資の返済に追われるだけの日々を送らないためにも、このことは肝に銘じておきましょう。
不動産投資に成功する人の考え方── ③利回りよりも稼働率を重視する
不動産投資の物件を検討するときの重要なポイントは、その物件が生み出す利益「利回り」(表面利回り)と、空室を発生させない「稼働率」です。
利回りは、「年間家賃収入÷物件購入価格×100」で計算します。
例えば、区分マンション1室の購入価格が2000万円、毎月の家賃収入が10万円だったとします。年間家賃収入は10万円×12=120万円。そのため120÷20000×100=6で、利回りは6%ということになります。
同じマンションで毎月の家賃を15万円にすれば、年間家賃収入は180万円になり、表面利回りは9%まで上がります。
ここに「利回りの落とし穴」があります。
大手物件紹介サイトでは、利回りが「15%」「20%」といった魅力的な数字が並んでいます。実際に、そのような物件を買いたいと思う初心者は多いはずです。
しかし、少し立ち止まって考えてみましょう。はたして、本当にそんな高利回りになりうるのでしょうか。
同じ物件でも、設定する家賃によって利回りは変わりますし、10万円よりも15万円で入居者が見つかれば、それがベストです。しかし、それで本当に入居者が見つかるのでしょうか。
当たり前ですが、家賃を月10万円支払える人よりも、15万円支払える人のほうが人数は少ないでしょう。つまり、むやみに家賃を上げれば、住む可能性のある人が減るのです。
大切なのは立地、それから部屋の広さも含む設備などを踏まえた「相場」です。
利回りを見るとき、まず家賃設定が相場通りかを確認しましょう。相場は賃貸物件の検索サイトでだいたい判断できます。
相場より高い家賃設定なら、稼働率は下がります。仮に相場家賃が10万円なのに15万円にしていたら、入居者はいないでしょう。そうすると利回りは9%どころかゼロになります。
大手物件紹介サイトに掲載されている高い利回りの物件は、こうした背景があります。ですから、利回りだけで物件の優劣を判断してはいけません。
むしろ、利回りより大事なのは稼働率です。一定期間内でどのくらいの間、その部屋が借りられていたか。すなわち家賃収入がある状態だったかを示す数字です。1年間を通して空室期間がなく、毎月確実に家賃収入があったとすれば、その1年間の稼働率は100%ということになります。
したがって、稼働率100%が見込まれることを前提に、利回りが高ければ、それは優良な物件といえます。そして稼働率の決め手は、相場と同じで、立地と設備です。なお、年間稼働率が95%以上の物件は、一般的に優秀だといわれています。