(本記事は、山本尚宏氏の著書『99%失敗しない、不動産投資のはじめ方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)

天秤
(画像=PIXTA)

不動産投資は大きく分けると、次の2つの方法があります。

①分譲マンションの1戸もしくは数戸を所有する「区分所有」
②アパートやマンションをまるごと1棟所有する「一棟買い」

はたして、どちらの物件を選ぶか。投資の目的や手持ちの自己資金、あなた自身の属性(職業や年収)などから総合的に判断する必要があります。

そのためにもまずは、それぞれのメリット、デメリットを把握しておきましょう。

マンションの区分所有

メリット
❶鉄筋コンクリート(RC)造や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)のマンションは、法定耐用年数が木造より長く、木造ほど値崩れをする心配がありませんから、資産価値が比較的高く維持され、長期的に運用ができます。そのため購入者は、将来の個人年金代わりに保有する人、とくにサラリーマン投資家が多いです。

❷小規模物件なら、1000万円程度から現金一括で購入することもできます。その分、一棟買いと比べるとリスクが低くなります。「不動産経営をはじめたいけど、どの物件から手をつけたらいいかわからない」という人に適しています。不動産投資で家賃収入を得たい、将来の個人年金代わりにしたいけど、あまり大きな借金は負いたくないという人には区分マンション投資をおすすめします。

❸管理組合があるマンションなら、管理会社がサポートしながら管理組合が主体となって運営してくれるので、建物管理が安心です。

❹一棟物件と比較して価格が安いため、相対的に流動性が高いです。区分マンションのほうが購買層が幅広く、アクセスやロケーションが優れているケースが多いので、適正価格であれば出口戦略として売却しやすい傾向にあります。
デメリット
❶1戸ごとの購入になるため、複数の物件を持とうとする場合は、そのつど契約や決済などの準備に手間がかかります。

❷管理費や修繕積立金の負担が適正かどうか、見極める必要があります。仮に表面利回りが高くても、区分マンション投資は一棟買いと比較して、そもそも月々のキャッシュフローが少ないのがデメリットです。これは、通常、管理会社経由で家賃収入から(強制的に)管理費や修繕積立金などが控除されてしまい、その分手残りが減ることになるからです。

❸1戸だけの所有ですから、建物全体のことを自分1人では決められません。また、空室が生じた場合、その間の家賃収入がゼロになります

アパートやマンションの一棟買い

メリット
❶全体の戸数が多いため、大きな賃料収入を得ることができます。少し空室が生じたとしても、全体の収益に与える影響を希薄化できます。そのため、将来的に家賃収入だけで生活したいと考えているような人に適しています。

❷建物だけでなく、土地という資産も同時に手に入ります。金融機関に土地と建物を評価してもらえるため、積算評価が高く出るようなら融資を受けやすくなります。一棟買いで融資を受けられるような人は、投資家としての返済能力を認められた証でもあります。

❸建物全体のオーナーになるため、建物の名称、日常の修繕を含む大規模修繕など、多くのことをオーナー自身の裁量で決定できます。

❹土地の価値が高い場合、老朽化などで取り壊した際に複数の選択肢が生まれます。例えば、物件を建て替えるもよし。空き地を駐車場として活用するもよし。土地が値上がりしていれば売却するもよし。土地活用の方法を自由に決められます。
デメリット
❶投資金額が最低でも2000~3000万円から、高額なものだと数億円と大きくなるため、借り入れにともなう潜在的なリスクが生じます。

❷一棟のオーナーですから、建物全体の管理に関する全責任を負うことになります。そのため、外壁塗装や屋上防水など建物全体の修繕に関して、きちんと修繕積立金を自身(もしくは自分の会社)でプールしておかなければいけません。なお、2011年の国土交通省のガイドラインでは、例えば、15階未満、延床面積5000㎡未満のマンションの場合には、平均218円/㎡・月が修繕積立金として必要とされています。また一棟物件は部屋の戸数が多くなるため、管理が徹底されていなければ空室率が高まるリスクがあります。

❸物件価格が高いため、区分マンションと比べて流動性が低く、すぐには売却しにくい傾向にあります。

新築と中古ではどちらがいいのか

不動産には「区分所有」「一棟物件」という区別の他に、「新築」「中古」という区別もあります。それぞれのメリット、デメリットについても把握しておきましょう。

新築

メリット
❶資産価値が中古よりも高く評価され、長期で低金利の融資がつきやすい傾向にあります。新築のほうが物件価格は高いため、購入時の表面利回りが中古よりも低い傾向にあります。しかし、新築のほうが中古より耐用年数(償却年数)が長いため、費用として計上できる減価償却費が大きくなります。また、中古よりも長い期間、より高い家賃収入や稼働率が見込めます。このような理由で、10年、20年保有すれば中古よりも得られる収益は多くなり、結果的に高いキャッシュフローが見込めます。

❷金融機関は通常、「法定耐用年数から経過した築年数を差し引いた残存期間」をベースに融資期間を検討します。そのため、中古では融資がおりないこともありますが、築年数がゼロの新築にはその心配がありません。

❸昔から日本人には﹁中古よりも新築に住みたい!﹂というニーズが高いため、入居者を獲得しやすいという利点があります。時代のニーズに合わせて最新設備を導入していますので、新築から築3~4年目くらいまでは高い賃料が見込まれます。

❹「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」があるため、新築後10年間は建物の大きな不具合に関して、売り主に瑕疵担保責任が義務付けられます。売買の対象物に隠れた瑕疵、つまり外部から容易に発見できない欠陥があった場合、買い主は売り主に対して契約解除や損害賠償請求を主張することができます。
この点について2020年4月の民法改正により、買い主の保護が強化され、売り主の責任が重くなりました。

❺中古より多く減価償却費を費用として計上できるため、節税効果も見込めます。
デメリット
❶中古物件と比較すると物件の販売価格が高いため、利回りが低い傾向にあります。

❷デベロッパーが竣工時に設定した家賃が相場よりも高かったり、意図的に「新築プレミアム家賃」をつけていたりすると、初めの入居者が退去したタイミングで家賃が大きく下がってしまうリスクがあります。入居者が一度でも住んだ瞬間に、その物件はもはや新築ではなくなりますので、当初の家賃よりも安くしなければ入居者を獲得できない可能性があります。

中古

メリット
①一般的に新築物件と比較した場合、物件価格が安いため、収支がプラスになる傾向があります。

②すでに入居者がいるため、収支計画のシミュレーションが立てやすくなります。

物件価格が市場で形成されるため、新築物件と比べて「キャピタルロス(保有資産の値下がりによる損失)」が発生しにくいという利点があります。新築は土地と建物を合わせた積算評価のうえに、不動産会社の広告宣伝費や人件費などが加算された価格になりますが、中古はそうしたものがなく、市場価格になります。
デメリット
❶古い物件ほど価格は低くなりますが、融資期間は法定耐用年数の残存年数以内での実行となるため、融資期間が短くなりキャッシュフローが出にくい傾向にあります


❷間取りや設備が時代のニーズに合っておらず、老朽化してしまっていることもあります。よほどの好アクセス、好ロケーションでなければ、家賃を大幅に下げざるを得ないケースもあります。

❸前の所有者がメンテナンスを怠っていた場合、購入したとたんに多額の修繕費を求められるケースがあります。とくに中古の一棟買いでは要注意です。
以上が新築と中古のそれぞれ主なメリット、デメリットです。どちらかを選択する際に参考となるアドバイスを、いくつか付け加えておきます。

 ○予算に余裕があるなら、新築も検討すべきです。ただし、当初家賃や物件価格の下落に注意する必要があります。

 ○物件をたくさん増やすつもりはない、または売却する予定が当面ないということなら、長期的保有という観点で新築を検討してみるほうがいいでしょう。

 ○新築は建物内にモデルルームを設置していることが多いため、実際に入居者が生活する様子をイメージできます。モデルルームがあるなら、必ず一度は見ておきましょう。

 ○中古なら、前の所有者が実際に経営している物件を見て運用状態を確認しましょう。このとき、レントロール(家賃の推移といった資料)を開示してもらえば、なおいいです。そして割安かどうかを検討しましょう。

 ○中古は築年数の経過とともに建物部分が劣化・減価していきますが、土地の価格はそこまで大きく変動しません。そのため、中古の一棟買いで土地の実勢価格に近い金額で購入できれば、資産性の高い物件として金融機関から評価してもらえる可能性が高いです。

 ○中古では、販売会社が、外観や内装をリノベーション(既存の建物に大規模な工事を行って、新たな機能や価値を付加すること)してから市場に出すことがあります。価格はやや高くなりますが、一般的に新築よりも利回りが高くなります。
99%失敗しない、不動産投資のはじめ方
山本尚宏
株式会社不動産投資の教科書 代表取締役
1982年神奈川県生まれ。2006年東京大学理学部数学科を中退。在学中に司法試験の勉強を開始(短答式試 験合格)。その後、2007年法律事務所オーセンスに勤務。2010年オーセンスグループ株式会社(現弁護士ドットコム株式会社)にて法人営業等に従事。2012年より参議院議員(当時)で弁護士でもある丸山和也氏の秘書(国会議員秘書)を務める。2014年不動産投資に特化した専門サイト「不動産投資の教科書」を運営する株式会 社不動産投資の教科書を設立。不動産投資家に、「本当に良質な不動産投資会社だけをお薦めする」という経営理念のもと、業界の健全化に貢献すべく日々奮闘中。

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