(本記事は、山本尚宏氏の著書『99%失敗しない、不動産投資のはじめ方』クロスメディア・パブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)
融資を受ける際に必ず確認しておくべきポイント
金融機関から融資を受けるためには、その物件にどれだけ担保価値があるかが重要になります。担保価値は、十分な家賃収入が得られるかどうかが判断基準の1つとされています。
なぜなら十分な家賃収入を得られなければ、借り手が債務を返済できず、金融機関がお金を回収できなくなる(不良債権化する)可能性があるからです。バブル崩壊のときも、多くの不動産に対する融資が焦げ付き、不良債権化しました。
「かぼちゃの馬車・スルガ銀行事件」以前は、フルローンというかたちで、自己資金があまり無くても融資を受けられるケースがありました。最近では、諸経費まで含めたオーバーローンというものもありました。これらは、どちらかといえば資金力が低い人向けです。
しかし現在は、最低でも購入する物件価格の10%程度、自己資金を用意することが融資の条件として求められています。
では、金融機関が融資してくれる物件とはどのようなものでしょうか。立地条件が良く、設備も整っていて、中長期的に家賃収入が見込める。そのような物件なら収益が見込まれるので金融機関の評価が高くなります。
現在の市況下では、総合的に考えて金融機関の掛け目(担保物件としての評価の比率)が80%であれば、担保価値があると考えていいでしょう。
例えば1億円の物件があったとして、金融機関が80%の掛け目の評価(査定)をしたとすれば、8000万円の融資が出ることになります。
しかし、それが60%とか70%の掛け目ならば、その物件を買って本当に大丈夫か?相場より高すぎないか?という話になってくるわけです。掛け目が少ないと収益性が低い可能性があるので、「物件の担保価値は金融機関の掛け目が80%あるかないか」を1つの判断基準にしてみましょう。
初心者で、将来的に区分マンションをいくつか持ちたいと考えているなら、最初の物件をいくらで買うか、その際にどのくらいの融資を受けるかが重要になります。
最初に高額融資を受けて高い買い物をしてしまうと、次の物件を買うことができなくなるからです。自身の融資限度額を把握したうえでの投資戦略が必要になります。
また、金利にも注意しなければなりません。
不動産会社によっては、提携している金融機関が1~2行しかないこともあります。こうしたところは金利が高い可能性もあるので、「そういうものか」と思い込んで高金利の融資を受けてしまうと、のちのちキャッシュフローが赤字になり、苦しむ恐れがあります。
適切な金融機関選びをしなければ、別の不動産会社から2件目、3件目と購入していこうとしたとき、金融機関から追加融資を受けられないことがあるので注意しておきましょう。
融資交渉のため金融機関を自分でイチから探す人もいるかもしれませんが、これまで付き合いのある金融機関でもない限り、飛び込み訪問ではいい条件での融資はあまり期待できません。不動産会社の紹介などがあったほうがいいと思います。
また、東京にいながら地方の物件を買いたいと思って、東京の不動産会社を通じて検討する場合、その不動産会社が地方銀行と取引があるほうが望ましいです。なぜなら、地方銀行のほうが地元の状況に詳しいですし、貸し出し先を常に探していますから、金利交渉を有利に進めてくれる可能性があるからです。
数千万円の借金・融資をどう考えるか
不動産価格は、他の金融商品と比較すれば高い傾向にあります。毎年200万円貯金できる人でも、物件価格が3000万円なら、貯めるのに15年かかります。サラリーマン投資家であればなおさら、3000万円を現金で準備するのは難しいでしょう。
そこで頭金300万円を貯めて、残り2700万円を融資でまかなうことになりますが、これを単なる「借金」と考えれば気が重くなるのはわかります。高級車で数台分、場合によってはマイホームすら買える金額ですから。
といっても、その返済資金は毎月の家賃収入でまかなえます。つまり、家賃収入- (融資返済+運営経費+空室損失)=手元に残るお金(キャッシュフロー)とざっくり考えて、それがいくらになりそうか数字で考えてみましょう。
そうすると、少なくともキャッシュフローが黒字なら「家賃収入額>融資返済額」になるはずですから、実際の負担はそこまで大きくなりません。
富裕層といわれる多くの人たちは、このような考え方で積極的に借金して不動産投資をしています。「借りたもの勝ち」「低金利の今、資産を築けないなら負け組になる」と考える富裕層もいます。
不動産投資をはじめる際には、こうした気持ちの切り替えも大切です。
固定金利と変動金利、どちらがいいのか
マイナス金利政策の今こそが、史上最も低金利の時代ですから、金利だけを見れば不動産投資には最善の環境といえます。
結論としては、大幅な金利上昇リスクがないと考えるなら「変動金利」がおすすめです。一方、「固定金利」は変動金利よりも金利が割高になります。その差は、金融機関や条件によって異なるので一概にはいえませんが、1%以上高いこともあります。
なぜなら、固定金利は金融機関がリスクを取るものだからです。ただ、現在の不動産市況では金融機関はリスクを取りたがらない状況です。
しかし、変動金利では金利が急騰する可能性もあり、その場合は投資家がリスクを負うことになります。
固定金利にしても、変動金利にしても、どちらにもリスクはあります。未来の金利がどうなっているかは誰にもわかりません。
どちらを選ぶにせよ、手元に現金などの流動資産を持っておき、金利が上がったら元金を早めに返済していけるようリスクヘッジをしておくことが大事です。
また、すでに投資している人で昔に借りた融資だと、融資ローンよりも金利が高いことがあります。そうしたときは、より低金利の他の金融機関に乗り換える「借り換え」をすれば、トータルのキャッシュフローが改善されることもあります。
金利ももちろんですが、融資期間も重要です。なぜなら、毎月のキャッシュフローに影響するからです。
基本的に、融資期間は長ければ長いほどいいです。それだけ毎月の返済額が少なくて済むため、より多くのキャッシュフローが生まれるからです。
なお、融資期間を「前倒し」して返済するのは可能ですが(手数料がかかるケースもあるので注意が必要)、期限を途中で「延長」することはできません。