業務マニュアルは多くの企業が作成しているものだが、実は効果的にマニュアルを運用できているケースは意外と少ない。そこで今回は、業務マニュアルの作成手順や運用方法などをまとめた。業務の効率化を目指している経営者は、ぜひ最後まで読み進めていこう。

そもそも業務マニュアルとは?

経営戦略
(画像=PIXTA)

業務マニュアルとは、特定の業務に関して具体的なフローや遂行方法をまとめた資料のことだ。業務をより正確に、より効率的にこなすための資料なので、単に業務内容だけをまとめたものは業務マニュアルとしては不十分と言える。

また、業務マニュアルの読み手は従業員であるため、従業員側が理解しやすい資料を作ることも重要になる。これまで特に資料を用意していなかった企業や、経営者目線で資料を作成していた企業などは、これを機に業務マニュアルの作り方を見直していこう。

企業が業務マニュアルを作成するメリット3つ

業務マニュアルの作成時には、作成後に発生するメリットを意識することが重要だ。業務マニュアルの作成によってどのようなメリットが発生するのかが分かれば、自然と押さえるべきポイントや注意点などが見えてくる。

そこでまずは、企業が業務マニュアルを作成する主なメリットから紹介していく。

1.余計なコストや時間を削れる

余計なコストや時間を削れる点は、業務マニュアルを作成する最大のメリット。業務の効率的な遂行方法をマニュアルにまとめれば、従業員による作業のムダやムラを大きく減らせるため、結果的にコストや時間を節約することにつながる。

もちろん、従業員自身が業務のフローを工夫することも重要だが、従業員によってあまりにもフローが異なることは望ましくない。特に、日頃から発生するルーチンワークに関するノウハウは、業務マニュアルを通してきちんと社内全体に共有しておくべきだ。

2.品質の維持や向上につながる

業務マニュアルを用いると、その業務に関わる従業員は同一の手順で作業をこなすようになる。つまり、作業品質が均一化されるため、例えば生産ラインに業務マニュアルを導入すれば、製品の品質を高いレベルで維持できるだろう。

また、従来の生産方法に工夫をとり入れた形で業務マニュアルを作成すれば、製品の品質を高めることも可能だ。品質向上につながる点は意外と見落としやすいメリットであるため、マニュアルの作成に携わる人材にはきちんと伝えておこう。

3.従業員を適正に評価できる

業務マニュアルは、実は従業員の評価基準としても活用できる。

例えば、業務のフローが細かくまとめられたマニュアルをチェックすれば、各従業員のノウハウや技術を評価できる項目が見つかるはずだ。仮に全従業員が同じフローで営業をしている企業であれば、営業件数や成約数などから従業員の能力を判断できる。

一方で、従業員によって業務の遂行方法がバラバラな企業では、全従業員が納得するような評価基準を設けることが難しい。適正に評価できる環境を整えることは、従業員のモチベーションに大きく影響してくるため、業務マニュアルを作成したら評価基準のベースとして活用することを考えてみよう。

業務マニュアルを作成する基本的な手順

では、いよいよ業務マニュアルの基本的な作成手順を解説する。企業によって実際の手順は多少異なるが、「何から始めるべきか分からない…」「重要な工程を見落としたくない」と感じている経営者は、ぜひ以下を参考にしながら業務マニュアルを作成していこう。

【STEP1】改善点を洗い出すために、情報収集をする

効果的な業務マニュアルを作成するには、現状の業務内容や作業手順から改善点を洗い出す必要がある。したがって、まずは現場の従業員に聞き込みをしたり、マニュアルの作成者が現場に赴いたりなど、現場の「情報収集」から始めなければならない。

現場の状態を目や耳で直接チェックすれば、何かしらの改善点が見つかるはずだ。このときに見つけた改善点をマニュアルに組み込むことで、その企業は高い水準での品質の維持・向上を目指せるようになる。

【STEP2】業務マニュアルを使用するシーンを明確にする

前述でも触れたが、業務マニュアルの作成時には読み手となる従業員をイメージすることが重要だ。例えば、情報を詰め込み過ぎた結果、文字だらけで読みづらい資料になってしまうと、業務マニュアルを作成するメリットが薄れてしまう。

そのため、業務マニュアルを作成する前には、必ず「どんなシーンで読むことが想定されるか?」や「どんな情報を入れるべきか?(どんな情報を省くべきか?)」について、慎重に考えるようにしよう。この工程を挟むだけで、業務マニュアルの読みやすさは格段に変わってくる。

【STEP3】フォーマットを決定する

マニュアルに記載する内容が大まかに決まったら、次はフォーマットを決定する。業務マニュアルは使用するシーンによって適したフォーマットが異なるため、この工程でも読み手(従業員)を強く意識することが重要だ。

例えば、電話口で業務マニュアルを見ながら顧客対応をする場合は、すぐに情報を引き出せるようなフォーマットが望ましい。必要であれば、索引や目次、見出しをつけることなども検討しておこう。

【STEP4】フローや作業手順に加えて、「要点・理由・目的」も記載する

次はいよいよ業務マニュアルを作成していくが、業務のフローや作業手順のみを記載するだけでは、経営側の意図がなかなか伝わらないこともある。そのため、各フローや手順に関して、できれば「要点・理由・目的」の3つも追記することをおすすめする。

この3点が明記されていれば、仮に業務マニュアルの読み手が新入社員であったとしても、その内容をすんなりと理解できる。ただし、情報量が多すぎると逆に混乱してしまうため、ボリュームが増えすぎないように注意しておこう。

【STEP5】現場担当者にチェックしてもらい、必要に応じて修正をする

業務マニュアルが完成したら、まずは現場担当者にその内容をチェックしてもらう。実際の業務との間でズレが生じていると、ここまで費やしてきた労力や時間を無駄にしてしまうため、チェックの工程は必ず挟むことが重要だ。

もし現場担当者から指摘を受けた場合は、必要に応じて該当部分をしっかりと修正しておこう。

業務マニュアルを作成する際のポイント3つ

効果的かつ読みやすい業務マニュアルを作成するには、上記以外にもいくつかポイントを押さえる必要がある。そこで次からは、経営者やマニュアル作成者が特に押さえておきたい3つのポイントを紹介していこう。

1.不要な情報は徹底的に省く

マニュアルに不要な情報が含まれていると、読み手である従業員を混乱させてしまう。また、ボリュームが増えすぎると読む気が失せてしまう恐れもあるため、業務マニュアルの作成時には不要な情報を徹底的に省き、すっきりとした見た目に整えることが大切だ。

特に読み手が新入社員の場合は、ページ数や文字数を減らすだけで内容の理解度が飛躍的にアップすることもある。そのため、業務マニュアルの完成後には「不要な情報がないか?」を細かくチェックするようにしよう。

2.5W1Hを意識し、疑問が生じにくいマニュアルを作成する

不要な情報はできる限り省きたいところだが、必要な情報まで削ると読み手には疑問が生じてしまう。仮にその状態で業務にあたると、深刻なミスやトラブルに発展する可能性も考えられるだろう。

読み手がきちんと理解できる業務マニュアルを作成するコツは、「5W1H」を意識することだ。説明する業務や作業に関して以下の6点をまとめるだけで、業務マニュアルは飛躍的に読みやすくなる。

  • Who…誰が業務にあたるのか
  • When…いつ発生する業務なのか
  • Where…どこで取り組む業務なのか
  • What…どんな内容の業務なのか
  • Why…なぜその手順で業務を進めるのか、なぜその業務が必要になるのか
  • How…どんな手順で業務を進めるのか

内容によっては省ける情報もあるが、業務マニュアルだけで上記の情報が伝わらない場合には、該当部分に必要な情報をしっかりと盛り込んでおこう。

3.フローチャートやイラストなど、図表を活用する

業務マニュアルの作成時には、とにかく「見やすさ」を追求したい。ある程度は文字数の調整やフォーマットによってカバーできるが、それでも小難しさやボリュームの多さを感じさせてしまう場合には、積極的に図表を活用することが必要だ。

例えば、作業手順をフローチャートで示したり、設備の使い方をイラストにしたりするだけでも、マニュアルの見やすさは格段にアップする。見やすさは従業員の理解度にもつながる要素なので、業務マニュアルの作成時には記載する情報の内容だけではなく、ビジュアル面にも強くこだわっておきたい。

業務マニュアルの効果的な運用方法とは?

作成した業務マニュアルを上手く活用するには、以下の3点を意識して運用する必要がある。

業務マニュアルを運用する際のポイント概要
1.社内全体に共有するマニュアルの読み手だけではなく、それ以外の従業員にも共有しておくと、改善点や修正点のヒントをもらえる可能性が高まる。
2.読み手からフィードバックをもらう読み手からフィードバックを直接もらうことで、今後の改善点や修正点を把握できる。
3.定期的に更新をするマニュアルの共有から半年~1年が経過したら、内容の見直しと更新の機会をつくる。

特に現時点で基盤が固まっていない業務や、頻繁に新しいツールが導入される業務に関しては、こまめにマニュアルを見直しておきたい。業務内容によっては、数ヶ月が経過しただけで時代遅れのマニュアルになってしまう恐れがあるため、少しでも変化が生じたらそのタイミングで業務マニュアルの見直しと更新をするように心がけよう。

業務マニュアルの作成に悩まされたら、作成代行サービスやツールの利用も検討しよう

きちんとした業務マニュアルを作成するだけで、企業にはさまざまなメリットが発生する。ただし、効果的なマニュアルの作成はやや難しく、きちんと段階を踏んで作成しなければ、生産性の向上やリスク防止にはつなげられない。

業務マニュアルの作成はどうしても思ったように進まないのであれば、マニュアルの作成サービスやツールを利用する方法もひとつの手だ。なかには、専門的な観点からマニュアル作成を代行してくれるサービスも見受けられるので、業務マニュアルの作成に悩んでいる経営者は、これを機に便利なサービス・ツールの利用を検討してみよう。(提供:THE OWNER

文・片山雄平(フリーライター・株式会社YOSCA編集者)