本記事は、坪田充史氏の著書『総理大臣の通訳が教える! マルチリンガルになるための”英語”最速マスター術』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています
ラテン語を源とするヨーロッパの言語に通じる
ラテン語というのは、もともとは古代ローマ帝国の公用語として普及した言語です。ローマ帝国が滅亡したのちにもカトリック教会の公用語としてヨーロッパ各地に広まり、中世には中世ラテン語として発展しました。
中世ラテン語は、ローマの支配に服したことのないアイルランドやドイツなどの地域にも広まっていきます。その後、ラテン語は、ギリシア語やゲルマン語などと融合していきました。
現在でもラテン語は、バチカンの公用語になっていますが、日常ではほとんど使われません。
中世において学術関係の書物はラテン語でした。この習慣はいまでも残っていて、生物の学名や元素の名前などは、ラテン語を使っています。
口語ラテン語のことを「俗ラテン語」といいます。俗ラテン語から派生したのがロマンス諸語です。ロマンス諸語が東ロマンス語(イタリア語・ルーマニア語)と西ロマンス語(フランス語・スペイン語・ポルトガル語)と分類されます。
英語、ドイツ語、オランダ語はゲルマン語派に分類されますが、ラテン語の影響を大きく受けています(図3–2参照)。
ヨーロッパで使われている言語は、大なり小なり、ラテン語の影響を受けているので、どこか似ている部分があります(図3–3)。
ヨーロッパには225の固有の言語があり、これは世界の言語の約3%に相当します。多種多様な言語が存在していますが(表3–5)、根っこは同じラテン語から派生していますので、1つの言語を習得すれば、あとは簡単に身につけることができます。
そこでおススメしたいのが、日本人にとって最もなじみやすいスペイン語なのです。
アメリカの3分の1はヒスパニック系
アメリカ国勢調査局によれば、2050年にはアメリカ国内におけるヒスパニック人口は1億3280万人を超え、アメリカ総人口の30%を占めることになるだろうと予測されています。つまり、アメリカ人の3人に1人はヒスパニックとなり、スペイン語を話すようになるのです。
実際、すでにこの傾向は顕著です。ボクが日本とコロンビアを往復する際はアメリカ経由が多いのですが、ロサンゼルス空港、ニューヨーク空港、ヒューストン空港などの主要国際空港では、空港内のほとんどすべての標識が英語とスペイン語の両方で表示され、アナウンスも英語とスペイン語で2回行われています。
ボクも乗り継ぎの際、「アメリカだから英語ができないと不便かな?」と初めのころはドキドキしていました。しかし、いままで何十回とアメリカを通っていますが、ほとんど英語を使ったことはありません。入国審査官はコロンビア永住権ビザが貼ってあるボクのパスポートを見ると「スペイン語話せるの?」とスペイン語で話しかけてきますし、セキュリティーチェックや各所で見かける職員同士の会話に耳をすませば、スペイン語が飛び交っています。
レストランなどでは、ウェイターさんにスペイン語で話しかけると、ヒスパニックの方の場合は喜んで、メニューを一品サービスしてくれることがあります。ニューヨークのレストランの行く先々でそんな楽しい出会いがありました。ヒスパニック系の人々は陽気で人懐っこく、気軽に誰とでも友達になれる性格の人が多く、日本人のボクでもすぐに打ち解けて話すことができます。
オフィスワーク以外はヒスパニックが多くて、ウェイターやホテルのボーイはほとんどがヒスパニックです。彼ら同士で話すときはスペイン語で話しているのですぐにわかります。
ニューヨークのホテルでもスペイン語が聞こえたので、スペイン語で話してみたら会話が弾んだことが何度もあります。「コロンビアに住んでるんだよ」というと喜んでくれ、割引サービスまでしてくれました。
いまやアメリカでは、スペイン語ができれば英語を使う必要がないくらいにまでなってきているのです。
ヒスパニックの割合の高いカリフォルニア州やフロリダ州などでは、ヒスパニックのための社会インフラが整いつつあります。社会生活を営むための英語を十分に駆使できないヒスパニックのために、スペイン語による授業、公共施設の表示、説明書などの社会インフラ整備が進められていて、スペイン語が英語に次ぐ第2言語になっています。
中学・高校などの外国語教育で、スペイン語を選択するアメリカ人も多くなっています。以前、ヒスパニックは英語が十分に駆使できないという理由から差別を受けていましたが、最近ではスペイン語表示が選択できるウェブサイトを用意している企業もあり、スペイン語の歌詞が含まれるポピュラー音楽もヒットチャートを賑わせています。
アメリカが大きく変わりつつあるということです(表3–6)。
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