本記事は、坪田充史氏の著書『総理大臣の通訳が教える! マルチリンガルになるための”英語”最速マスター術』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています
質×1日の量×継続期間
ボクがアカデミーで「トライアングルメソッド」とよんでいるものがあります。トライアングルとは、外国語学習の3要素である「正しい勉強法」「目的」「期限」のことです。とくに、正しい勉強法は最も重要です。ムダな勉強をしていると、いくら時間をかけても習得できません。質の高い勉強をする必要があるのです。
たとえば、1字1句を日本の言葉に置き換えていく「訳読法」という学習法があります。日本の学校教育では、いまでもこのメソッドが主流であり続けています。「訳読法」の欠点は、文法と語彙に極端な比重が置かれているので、口語によるコミュニケーション能力はつきません。つまり現場で使えないということなのです。
「オーディオ・リンガル・メソッド」というのもありました。文型練習とドリルを多用し、視覚よりも耳から入ってくる音を重視し、繰り返すという学習法です。文法をほぼ完璧に習得した人ならば有効なのですが、そうでない人には退屈なだけで、忙しい現代人には向かない学習法です。
あと、英会話教室で「全員外国人」というキャッチフレーズがありますが、こちらもオススメできません。ごく一部を除いて、ほとんどの外国人講師は日本語についての分析能力を持っていないからです。日本人がその言語のどこを理解しにくいのか、どのようにしたらよい発音ができるのか、彼らは適切に指導ができないのです。
ボクがアカデミーで教えている勉強法は、次の5つのステップで構成されています(図4–1)。
目的と目標を明確にする
外国語を学ぶことが目的になっていると長続きしません。すぐにやる気を失い挫折してしまいます。何度も言いますが、語学は目的ではなく手段なのです。語学を使って何をしたいのかを明確にしておかなければモチベーションが持続しないのです。
目的が明確になっていないと、何となく学んでいる感じになります。それでは、ついつい誘惑に負けてしまうのです。
「なぜ外国語を学ぶのですか?」というアンケートを取ってみると、こんな目的が出てきました。
「海外旅行したとき、現地の人と話せたらカッコいいかなと思った」
こんな軽い感じの回答が大半でした。これだと、やろうと思うけどやらないということを繰り返すだけになり、いつしかフェードアウトしていくのです。
ここで、目的の設定方法をお教えします。それは「自分の生活に密着していること」です。何もボクのように「中南米と日本の懸け橋になる」という使命感を持つ必要はありません。そんな大それたことに胸を震わせる人もいれば、逆に腰を引いてしまう人もいますから、自分の生活に密着した目的をもつといいと思います。
たとえば、仕事です。語学を仕事に使うという明確な目的をもつことが一番早いでしょう。仕事はお金をもらいますから、いいかげんなことはできません。ちゃんとやらなきゃとなりますし、生活がかかっています。これで自分は生活するんだとなると、一生懸命になります。
ボクの語学の先生は、最初のころから「スペイン語を使った仕事をしなさい」と言っていました。そして通訳の仕事を紹介してくれたのです。もちろん、未熟で失敗ばかりでしたが、仕事をすれば上達します。
お金をもらえることが嬉しくて「もっと上手になるぞ」という意欲が湧き、気がついたら話せるようになっていました。スペイン語を自然と話している自分がいたのです。先生に「仕事をしていたら話せるようになりました」と報告したら、こんなことを言われました。
「仕事の先にペラペラが待っているよ」
多くの人は、ちゃんと話せるようになってから仕事をしようと思いますよね。実は逆なのです。ペラペラになったら仕事にしようとするのではなく、仕事をするからペラペラになるのです。
通訳はフリーランスで働く人が多いので、みんなペラペラ話せるものだと思い込んでいるかもしれません。しかし、実際は未熟な人も多いのです。みんな最初は初心者ですから、当たり前ですよね。
会社だと、新入社員は仕事など何もできません。先輩の仕事を見せてもらい、最初は見よう見まねでやりながら、何度も失敗を繰り返してできるようになっていきます。半年ほどでちゃんと仕事ができるようになり、1年たったら後輩に指導できるようになるでしょう。そんな状態でも、新人のときから給料をもらっているはずです。
語学も同じです。先輩を見ながら仕事の中で学べば、半年くらいでできるようになります。
失敗は怖いしドキドキしますが、思い切って飛び込むことです。仕事にするんだという目的を明確にすると、不思議なくらい外国語が話せるようになります。
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