本記事は、星野雄滋氏の著書『Amazon,IKEA,Appleから学ぶ企業成長の方程式~独自経営モデル』(ロギカ書房)の中から一部を抜粋・編集しています。
Appleの利益の源泉は、ブランド力と製造コストの低さ
1998ビジネスモデル大変革でi冠製品(iMac)が誕生してから、iPhoneをはじめとする高利益率のi冠製品の売上割合が過半を超えることが、現在の利益の源泉であることは明らかです。さらに近年、製品の粗利益率よりも高い利益率を誇るサービス売上の割合が飛躍的に伸びていることも、利益の源泉の第2の柱となってきています。
これらについて確認できる業績推移を図2・13に示します。Appleの2019年決算の売上は、2,601億7,000百万ドル円換算28兆%、4,617億円、営業利益は、639億30百万ドル(円換算6兆9,936億円)となっています。
2018年、iPhoneの売上金額(利益率の高い製品の売上)は過去最高になり、会社全体の売上・粗利益は最高益、営業利益は2番目の利益を実現しています。粗利益が最高益でありながら、営業利益が2番目なのは、2018年よりR&D比率を高めたからです。
続いて、サービス売上の推移です(図2・14)。
高利益率のサービス売上は、ここ数年で大幅に拡大しています。主に、AppStore(※)でのアプリ販売(手数料)や音楽配信サービス等によるものです。iPhone等製品の価格競争の激化やコスト構造の高まりにより、製品粗利益率は、少しずつ低下していますが、それをサービスの高利益率が補っています。
※アプリのダウンロードサービス
とはいえ、製品粗利益率は30%を超える高水準であり、製品粗利益の大きさが、一番の利益の源泉であることには変わりありません。iPhoneに代表されるi冠製品が圧倒的な高収益を実現し利益の源泉の核となった主要な項目を説明します。
一言で言えば︑高い販売価格を実現するブランド力と製造コストの低さです。
- 革新的な製品開発技術斬新な操作性・極めて高い精度・魔法のような機能を実現します。
- 専門的なジャンルの通信機器と感じさせない洗練されたデザイン力初のi冠製品iMacをデザインしたデザインチームが、その後のiPhone、iPad等のデザインも行っています。
- 常識を覆すブランディング力パソコンや携帯電話等を専門的なものというジャンルから、ブランド品というジャンルに変えました。上記1.2の技術とデザインに裏打ちされた確たるブランドです。常識を覆すブランディング力の基盤を作ったのは、ジョブズが復帰した1997年に行われたThink Different ブランドキャンペーンでした。そして、所有することにステータスを感じさせるAppleストア(高級ブランド店)の存在もブランドを形成しています。
- 世界中の多種多様なサプライヤーからAppleの厳しいニーズを満たす高品質・高精度な企業を探し出す力日本の地方の中小企業までリサーチし、高精度な技術メーカーを発掘しています。
- サブアッセンブリと最終製品の組立工程をアウトソーシングパートナーに製造委託したことにより、大幅な低コストを実現している。アジアのEMS企業であるアウトソーシングパートナーに対して製造機器を提供し組立を一括して委託することで、製造組立コストの低コストを実現しています。一括で大量の発注を行うため単位あたりの製造固定費を安くさせることが可能です。
Apple自身は、工場を持たないファブレス企業として機能しています。
- 1~5は、売上向上(平均販売価格の向上)に寄与します。
- 5は、売上原価削減(製造原価の削減)に寄与します。