本記事は、星野雄滋氏の著書『Amazon,IKEA,Appleから学ぶ企業成長の方程式~独自経営モデル』(ロギカ書房)の中から一部を抜粋・編集しています。
強い企業は苦境時にこそ投資レバレッジを効かせている
ポイントは、苦境期こそ大胆で独自性のある戦略投資を、長期的視野で決断・実行していることです。
日本マクドナルドの事例
2014年7月に起きた鶏肉偽装問題、2015年1月に起きた異物混入問題等からマクドナルドの食品の安全性に対する消費者の不信感が高まりました。その影響から、マクドナルドの客離れが進み、売上高は大きく落ち込み、2014年12月期、2015年12月期と2期連続で赤字に陥りました。しかし、その苦しい局面で短期的には利益減となる店舗改装に力を振り向けたことが、現在に至る復活の道を開きました。
その後、業績は、みるみる回復し、2019年12月期は、全店売上(フランチャイズ含む)が創業以来、最高となり、既存店売上の前年対比も、50か月連続増加(2015年12月から2020年1月まで)、17四半期連続増加となっています。
2013年から2019年までの業績推移は、図6・4のとおりです。
2014年12月期と2015年12月期は、営業キャッシュフローがマイナスですので、設備投資を差し引いたフリーキャッシュフローもマイナスになりましたが、改装効果などにより︑営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローともに、順調に回復を果たしました。2015年12月期の投資資金は、手元資金により行われましたが、2015年12月期の投資資金は、借入金(270億円)で行われたことは、注目すべき点であり、この投資計画を完遂するという決意の表れだったと思います(通常の年度では、営業キャッシュフローで稼ぎ出した資金により、設備投資が行われています)。
2015年4月に発表されたビジネスリカバリープランは、次の4つになっていますが、リカバリープランの大前提としては、食の安全・安心のための取組みが最優先課題であったことは言うまでもありません。
- よりお客様にフォーカスしたアクション
- 店舗投資の加速
- 地域に特化したビジネスモデル
- コストと資源効率の改善
ここでは、2. 店舗投資に注目します。2014年モダンな店舗の割合25%から、2018年までにモダンな店舗の割合を90%にすべく、2015年から2018年までの4年間で約2,000店舗の改装を計画しました。
マクドナルドでは、新規開店もしくは改装から数年しか経過していない店を「モダン」と呼び、改装を進めることを店のモダン化と呼んでいます。この間の店舗改装のトピックは、内装デザインを大きく変化させたことです。
例えば、次のような改装です。
- マックっぽくない、コーヒーチェーンストアのような内装
- 日本人デザイナーを初めて起用した日本独自のデザインの採用。顧客が親しみを感じやすい、ハンバーガーやポテトなどをモチーフにした内壁のデザインが特徴
ここでのポイントは、これまでのマクドナルドの店舗のイメージを変えたことです。特に消費者に食の安全性を訴えるとともに、店舗そのものが以前とは変わったことを強く印象付けるために必要だったと思われます。
マクドナルドにとって、これまでと大きく異なる内装、特に、日本独自の内装には、店舗内装デザインにおける独自性の重視が伺えます。