本記事は、星野雄滋氏の著書『Amazon,IKEA,Appleから学ぶ企業成長の方程式~独自経営モデル』(ロギカ書房)の中から一部を抜粋・編集しています。

女性
(画像=PIXTA)

文化と価値観

「IKEAは人の力を信じています。」

人が成長すれば、IKEAも成長する。

「継続的な成長にとってコワーカーは欠かせない存在です。IKEAではコワーカー1人ひとりを、成長の可能性を秘めた人材ととらえています。」

このように「企業は人なり」を明確に表すために、経営理念や価値観といった経営の根本的なところに、人が原点であり最重要であるというメッセージを刻むことは、とても大切なことです。

人財開発投資を惜しまない

人が原点であり最重要であることを、形として実践していくためには、人財への投資を惜しまず実行することが必要です。そのためには、人を計画的・定期的に採用すること、そして、教育研修を充実させ、それを継続することが重要です。特に、教育研修は、すぐに目に見える効果が確認できないため、予算を削減したり継続しない等軽視される傾向がみられます。世の中の成功している企業、長期的に発展している企業はすべて、人財投資を重視し懸命に育成しています。にもかかわらず、軽視してしまうのは、目先の短期的な成果を意識してしまうからだと思います。

短期的利益の確保を優先するあまり、人財開発投資を削減してしまうのは、未来の利益を犠牲にしていることにほかなりません。したがって、研究開発投資と同様、人財開発費用(採用と教育)を未来費用として明確に位置づけ、天引き投資することが極めて重要です。

以上をまとめると図7・5になります。

Amazon,IKEA,Appleから学ぶ企業成長の方程式
(画像=Amazon,IKEA,Appleから学ぶ企業成長の方程式)

上記について、補足します。

1番目の採用について

中堅企業にとって、最も重要な課題であり、業種・企業によっては死活問題とも言えます。内定を出しても結局、大企業に行ってしまったという声はよく耳にします。採用は文字通り地道な活動です。人材求人サイトに登録したり、企業説明会で説明したり、学校訪問し自社の良さ・魅力を知っていただく等の活動です。計画的に地道に継続していけば、少しずつ成果が出てきますので、途中であきらめずに続けていくことが重要です。

また、最近では、リファーラルリクルーティングと呼ばれる採用が注目されています。社員からの推薦・紹介による採用手法を言います。何より、信頼できる社員からの紹介ということで、安心して採用することができ、外部支払い等のコストもかかりません。身近な親近者でストレートに話し合って、お互い納得して入社することが魅力です。離職率は格段に下がると期待されています。

そして、さらに大きなメリットがあります。

それは、推薦・紹介する社員が、自社の魅力を語り、再認識することで、会社へのエンゲージメント(会社へ愛着・絆・思い入れ)が高まることです。リファーラル採用をきっかけに、社員と経営者が会社の将来の夢を語り合い、実現のための課題を共有し合い、全社一丸で会社をよくしていこうとする環境が整備されることが大きなメリットです。

今後、リファーラル採用の積極的な活用が望まれます。

2番目の業務時間に占める教育研修時間の割合について

専門機関(大学研究室)の調査結果によれば、景気の影響を受けない高業績企業の平均は5%以上という結果が示されています。そして、教育研修を充実させ継続するには、階層別・テーマ別に年間の教育計画を立て、計画に基づいて確実に実行することが極めて重要です。

3番目の教育研修の費用について

2020年3月に他界したジャック・ウェルチ氏(1999年フォーチュン誌「20世紀最高の経営者」)が20年間トップを務めた、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の事例を紹介します。

ジャック・ウェルチ氏の意を受け継いだイメルト元会長は、仕事の30%を幹部候補の育成に充てたと言われています。クロントンビルの研修所での体系的な研修プログラムによるリーダー人材の育成は他社の模範となっています。

GEでは自社の幹部を育成するために年間で10億ドル超の金額を費やしており、売上の約1%にあたります。未来費用(人財開発費と研究開発費)の重要性を取り上げたましたが、この投資金額をみれば、人財育成を会社の未来のための投資として位置づけて取り組んでいることが伺えます。大事なことは、GEのケースが、特殊ケースだと考えてしまうのか、そうでなく自社にあてはめて真摯に検討し、未来のため投資として決断できるかどうかであると思います。どちらを選ぶかで、持続的成長の成否が分かれるといっても過言ではありません。

働きやすい環境作りで人財が集まる企業を目指す

働き方改革を機に、生産性向上と両立させようと、各社働き方を創意工夫をして取り組んでいます。最近では、在宅勤務等テレワークの活用が増えてきていますが、足下の大事な制度をしっかり運用することも大切です。有給休暇の消化ができる仕組みの運用(上位者からの実行・率先)、勤務計画の創意工夫などです。このような環境作りは、従業員の安心感や満足を向上させることができます。さらに、取組みの状況によっては、生産性や創造性も向上させると言われています。特に、創造性は、イノベーションや独自性の確立につながるため、創造性を発揮しやすい環境を作ることは重要です。

例えば、小売業であれば、パートナーさん(パート)の声を積極的に取り入れるため、会議や研修に参加し、お客様目線での意見やアイデアを会社に伝える機会を設けています。それによりパートナーさんは、会社の経営に参加しているという実感を持つことができ、心の報酬という面で、働きやすい環境を作っています。また、準社員や社員への登用制度、福利厚生の充実などにも積極的に取り組んでいることも働きやすさにつながっています。

福利厚生については、できることから充実していくのが効果的です。必ずしも設備面の充実をする必要はなく、健康第一のための健康診断やマスク等衛生グッズの配布、誕生日プレゼントなど、従業員の幸せを第一に考えることが重要です。健康経営が注目されるようになっている中、従業員の健康管理の一貫として、新型コロナウィルスの定期検査等、環境変化に対応した施策を取り入れることも重要です。

働く従業員を大切にすること、その証として働きやすい環境作りに真摯に取り組んでいただきたいと思います。

Amazon,IKEA,Appleから学ぶ企業成長の方程式~独自経営モデル
星野雄滋
1987年3月慶應義塾大学経済学部卒業後、同年10月サンワ等松青木監査法人(現有限責任監査法人トーマツ)に入所。2001年6月監査法人トーマツパートナー就任。2019年6月独立開業。現在、星野雄滋公認会計士事務所所長、中堅・ベンチャー企業の社外役員、経営顧問、幹部研修講師として活動している。専門分野:「持続的独自成長、独自性×会計、人財育成」(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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