本記事は、高橋ダン氏の著書『世界のお金持ちが実践するお金の増やし方』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています
金はこれから30年で最も有望な資産
貴金属の中でも金は「これからの30年間で最も有望な資産の一つ」であり、若い人でも年配の人でも、どこの国に住んでいる人でも、持つべき資産です。
しかし、みなさんは学校で金の価値について教えてもらったことはないでしょう。アメリカで育った私も、学校では習いませんでした。なぜなら、どの国の政府も金を買うことをあまり勧めていないからです。
金は古くから世界中で宝物として扱われてきました。その歴史は約5000年に及び、古代エジプトの時代から使われています。世界中のさまざまな宗教で金が使われてきました。日本でもそうですし、特に中国では長く使われています。
金は昔からお金としても使われてきました。大きな理由は、人工的につくることができないから。偽造されやすい物は、お金としての機能を果たすことが難しいです。金は供給量が限られているので、希少価値があります。その点で安心して使うことができたのです。
文化の違いも関係ありません。エジプトとヨーロッパがまだつながっていないときにローマ帝国ができましたが、その時代からお互いに交流がなくても、それぞれの国で金が使われていました。誰もが直感的に金には価値があると気づいていたのです。
それはいまも変わりません。世界の基軸通貨は米ドルですが、国際標準化機構(ISO)では金、そして銀、プラチナも世界で通用する通貨として認められています。
世界の中央銀行、特に先進国の中央銀行は金を保有しています。金はお金だからです。つまり、「金とは何?」と聞かれた場合、最も答えとしてふさわしいのは「お金」です。
そして、昔から多くの人が金を資産として保有しています。
たとえば、1900年代のアメリカ人の個人ポートフォリオには、金が平均的に5%以上は含まれていました。しかし、いまは1~5%程度しかありません。多くの個人投資家は金を少ししか持っていないのです。とはいえ、それでもアメリカの個人投資家は金の保有率が高いほうです。アメリカ以外の世界の国、特に日本の投資家はほとんど金を持っていません。
では、なぜ金に投資すべきなのか。次項から詳しく見ていきましょう。
summary 金は約5000年前から希少価値が認められてきた。これからも資産価値は変わらない。
インフレになったとき金は保険になる
日本は特殊な環境にあって、過去30年間ほとんど物価が上がっていません。
私は現在35歳ですが、10歳までの多くは日本で過ごしました。
当時、コンビニエンスストアへ行って、お菓子を買ったときの記憶はいまだに残っています。特に日本のグミは大好きでしたが、そのときと同じ価格でいまもグミを買うことができます。ミネラルウォーターの値段もほとんど変わっていません。
だから日本で暮らしている人は、物価が上がることを忘れてしまっています。「消費者物価指数が上がったら、どんなことが起きるのか?」と考えることもまずないでしょう。しかし下の図を見ていただければわかるとおり、日本でも1970年以降、15年足らずで物価が3倍近く急上昇したのです。
そして歴史的に見ると、消費者物価指数は遅かれ早かれ上がります。そのとき、もっとも安心で保険の役割を果たすのは金です。物価が上昇すれば、金の価格も上がるからです。
金融危機で株式だけでなく、債券、不動産、商品(コモディティ)、すべてが下がるときがあります。そんなときも現物資産である金の価値は、値下がり幅を抑えられる可能性があります。だからこそ金は最高の保険なのです。
大半の先進国の中央銀行では、国の債務、国債を買っています。そのなかで日本銀行は国の累計債務の50%以上を持っているため、すでに限界に近づいていると思います。国債を買う人がいなくなったとき、価格は暴落するリスクが高くなります。そのときのためにも金を保有するべきです。
summary リーマンショックなど、金融危機の際にも金の価格は下がりにくい。
金の価格が動く理由を知る
金の価格を見るときは「米ドル」に対して見ることが大事です。なぜなら米ドルが世界の最も大きな基軸通貨だからです。
米ドル、ユーロ、日本円……すべてのお金はその国の政府と中央銀行が紙幣としてつくっています。その歴史はいまから約100年ほどしかありません。それ以前は金や銀がお金としてよく使われており、その後に紙幣がつくられるようになりました。そして、現在の最も大きな基軸通貨は米ドルです。
米ドルがたくさん供給されると、金の価格が上がります。第二次世界大戦後から米ドルが世界の基軸通貨になりましたが、そのときから米ドルの供給と金の価格は、長期的に連動する傾向があります。
米ドルを供給できるのはアメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備理事会)です。
つまり、金の価格を決めるのはFRBの紙幣印刷量ということ。これは最も大切な点です。FRBがどれくらいマネーサプライ(通貨供給量)を生み出しているかで金の価格が決まるということです。
世界の中央銀行の借金が増えていることはさまざまなデータで確認できますが、最も大事なのはアメリカのマネーサプライと金の価格との関係です。
次のチャートは金の価格と米ドルの量を示したものです。分子が金の価格、分母は米ドルの量を示しています。
このグラフを見ると、金の価格は、米ドルの量に対して歴史的に非常に低い水準だとわかります。
少し金に詳しい人は「金の価格はずいぶん上がっているじゃないか!」と反論するかもしれません。
たしかに2000年には1オンス=290ドル程度でしたが、2020年7月時点では約1900ドルです。
それでも私が「金の価格は安い」と考えるのは、FRBが供給しているお金の量が膨大になっているからです。金の価格の上昇よりも何十倍もお金の量が増えているのです。その比率を見ると「金の価格は安い」といえるのです。
summary 金の価格を予測するには米ドルの供給量をチェックする。
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