正しいことが効果的なマネジメントとは限らない

このことから私は、「自分にとって正しいことだからといって、メンバーをマネジメントする上で効果的であるとは限らない」ということを学びました。

それから私は仕切り直して、メンバーそれぞれの想いに耳を傾け、これまでの苦労をねぎらい、そして彼らのやりたいことを尊重するようにしました。

そうしたところ、「メンバーの心のコップが少しずつ上向き」になり、私の言うことを受け入れるようになったのです。それに伴い現場改善が進み、成果に結びついていきました。こうしたことはこの後も行く先々で起きました。

外部のコンサルタントに対して、心のコップが最初から上向きであることなどまずないからです。ですから、いつも私は、自分の正しいことはいったん脇に置いておいて、まずはメンバーの想いを知り、関係性を作りながら、心のコップを上に向けることを優先するようにしています。

まず部下の「心のコップ」を上向きにする

自分が正しいことを言っているのに部下が動いてくれない……。これは、多くの現場リーダーも日々経験していることでしょう。

ある不動産店舗の店長は、異動で他店舗の店長に配属された際、最初からその店舗のダメなところばかりを指摘してしまったといいます。

その結果、既存の店舗メンバーの心のコップが上向きになるまでにかなりの時間を要することになり、自分のやりたいことができるようになるまで遠回りをしてしまった、と言っていました。

リーダーは、責任感や正義感から、自分が正しいと思ったことをつい部下に押し付けがちです。しかし、それが組織を束ねて目標達成を導く効果的なマネジメントになるとは限りません。

まずは部下の心のコップを上に向け、部下があなたの意見を受け入れられるようにすることが、部下の力を引き出す上で重要であり、それが結果的に成果に結びつくマネジメントへの近道となります。

船坂光弘(ホスピタリティ・コンサルタント)
(『THE21オンライン』2020年11月25日 公開)

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