過去2回の連載では、年代別のライフイベントと必要額についてお伝えしました。残り3回の連載では実際に運用開始後のノウハウをお伝えします。

今回は大きな評価損を抱えた際、ロスカットをするべきか、戻るまで待つべきか、という悩ましい問題についての対応を解説します。

保有商品が下落したときの対応は?

投資信託,基準価額
(画像=nobu/stock.adobe.com)

投資した金融商品が思ったように値上がりせず、価格が値下がりし、含み損(実現していない評価上の損失)が膨らむことがあります。特にリーマンショックやコロナショックのような金融市場が急落する場面では含み損が大きく膨らむことも起こりえます。

損失がさらに拡大するのを防ぐために、商品を売却して損失を確定することを「損切り」もしくは「ロスカット」と呼びます。損切りするか、保有し続けるか、非常に悩ましい問題です。

なぜ、「損切り」が重要なのか?マイルールを設けて淡々と実践を

含み損が大きくなり、それを抱えたまま戻るのを期待して長期保有することを「塩漬け」と呼びます。たとえば、1,000円の株が50%下がって500円になったとします。元に戻るためには、下落率50%の上昇ではなく100%の上昇率が必要です。

塩漬けにしても元の価格に戻ればいいのですが、戻る保証はありません。仮に戻ったとしても数年掛かるのであれば、他の商品に乗り換えたほうが資金効率は良いかもしれません。ロスカットをしてキャッシュにしておけば、チャンスが来たときに新たな投資をすることも出来ます。塩漬けの場合は「待つ」しか戦略がありません。

資金効率を考えると適切なロスカットは投資効率を高めます。だからこそ、投資する場合は、自分が損失できる範囲を決め、たとえば「10%下がったらロスカットする」といったマイルールを決め、損失が出ようとも淡々と実践することも大事です。

アクティブ投資の場合、例えば「再生エネルギー」「DX」「5G」「半導体」といったように投資対象のテーマが決まっているタイプも多くあります。それらのテーマの勢いが強ければ強いほど、ブームが過ぎ去った場合には再び上昇するまでに時間が掛かります。投資対象の銘柄の値動きを分析しながら、投資根拠がなくなった場合には損切りをするというマイルールを決めることも良いでしょう。

相場が下落した場合には?

投資信託の場合、アクティブファンドはややリスクが高いものの、それでも複数銘柄に分散投資しているので分散効果が期待できます。日経平均やNYダウといった指数連動型のパッシブファンドはさらに銘柄数が多いのでリスクが分散効果が期待されます。

まずは指数連動型の投資信託について過去の分析をしてみましょう。NYダウは、過去10年で2.6倍になっています。年間でみると、 2015年と2018年だけがマイナスですが、残りの8年は上昇しています。基本的には世界経済と米国経済の成長を背景に上げているのです。2000年以降でも、ITバブル崩壊、リーマンショック、チャイナショック、トランプショックといった暴落局面も何度かありましたが、その度に戻しています。

日経平均は30年前の平成バブルの高値こそ抜けていませんが29年半ぶりの高値を2020年につけました。過去10年ではNYダウと同様に2.6倍です。下げたのは2011年と2018年のみです。

したがって、長期の資産形成を目的に投資信託を積み立てで購入している場合、下落局面のほうが月々に購入出来る口数が増えるのでむしろ喜ばしいことだと思いましょう。投資資金に余裕があるのならば、普段はiDeCo(個人型確定拠出年金)で積立投資をしている人も、急落局面では一般NISA枠を使い、インデックス型の投資信託を購入するというのもひとつの有効な作戦です。

実際にコロナショック時はスポットで投資信託の新規買いが膨らみました。コロナショックが直撃した20年3月の投資信託動向 では、外国株式型に3,200億円の資金流入、国内型投資信託に1,100億円の資金流入がありました。

ただし急落局面では、一番底、二番底、三番底……と相場がずるずると下落する可能性もあります。急落局面での購入タイミングの判断は難しいことあるため、分散して継続購入して平均買付単価を安く抑える方法も有効な手段のひとつです。

一番やってはいけないのが「狼狽売り」

一番避けたいのが狼狽売りです。狼狽売りとは、市場が大きく下げたときに慌てて売ってしまうことです。相場下落の初期段階でロスカットするのは問題ありませんが、損失の拡大が恐怖となり、狼狽売りするときはだいたい大底が近く、市場は転機を迎えることが多いのです。

たとえば、リーマンショック時は、住宅向けのサブプライムローンが急落し、含み損をかかえた証券会社の経営が苦しくなったのがきっかけです。相場はサブプライムの損失の話で08年半ばから下げはじめていました。リーマン・ブラザーズが倒産したのは08年9月。リーマンが破綻して、保有資産を狼狽して売った人も多かったでしょう。しかし相場は08年10月には大底を付けます。

20年のコロナショックも同様です。世界的にコロナが蔓延しはじめたのは1月から2月。日本の場合、3月13日に新型コロナウイルス対策の特別措置法が成立し、4月に東京など7都府県に緊急事態宣言が出されました。日経平均株価は特別措置法が成立した直後の3月19日 から相場が戻り始めました。

長期投資では下げている時に買うことがコツ

ロスカットは、投資している商品性や年齢によって決めるべきですが、狼狽売りだけは避けて冷静になりましょう。長期チャートを見て長い目でみることが、過去の経験則では成果に結びつくのです。次回の連載では、「リバランス」について解説する予定です。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません(提供:Wealth Road