前回の連載では、投資信託の「リバランス」について解説しました。投資を始めることは重要ですが、始めさえすれば放ったらかしにしていいわけではなく、「メンテナンス」が必要です。今回は、見直す頻度や見直すポイントを具体的に紹介します。

長期保有を「持ちっぱなし」だと勘違いしていませんか?

12月,投信シリーズ
(画像=eisenhans/stock.adobe.com)

前回は、「リバランス」の説明として、自分の長期の運用目的に沿うように分散投資の比率を定期的に調整し直すことだとお伝えしました。例えば、当初債券50%、株50%でスタートしたポートフォリオが、数年後、株の値上がりで株が70%、債券が30%になったようなときに、当初の比率に戻す投資手法です。リバランスは「メンテナンス」の代表的な一つであり、リバランス以外にも定期的なメンテナンス手法が存在します。

忙しくても、プロに運用を任せた投資信託への投資であっても、積み立て投資であっても、それは自分の大切な資産です。基本的には、自分が最終的に責任を持って管理する必要があります。

長期保有の基本は「良い商品」を長く持つことです。「良くない商品」を持ち続けても資産形成はできません。しかし、良い商品と良くない商品はパフォーマンスだけで決まるわけではありません。
それでは一体、何を基準に見直せばいいのでしょうか。投資信託の見直しポイント、見直す方法、頻度などのポイントを次に紹介します。

投資信託を見直す際のポイント3つ

1. 基準価額とそのチャート、純資産残高などの基本データ

株に株価があるように、投資信託には「基準価額」があります。基準価額は毎日公表されており、証券会社など保有している投資信託を販売した金融機関、もしくはその投資信託を運用している運用会社、投資信託専門の会社のサイトなどで簡単にチェックできます。

株のチャートと同様に、基準価額のチャートもみることができます。投資信託の長期投資では下がっているときに買いつづけることが大切なので一喜一憂する必要はありませんが、自分の保有する投資信託の長期トレンドは把握しておきましょう。

基準価額にも様々なデータがありますが、「純資産残高」も大切な指標で、その投資信託の運用資金の総額を表しています。純資産残高は「大きいから良い」「小さいから悪い」というわけではありませんが、小さすぎると運用効率が悪化し運用パフォーマンスに支障をきたすことがあります。商品によっては、純資産額が一定額を下回ると、強制的に運用を終了する(繰上償還)ケースもあります。目論見書で繰上償還の金額ラインを確認しましょう。

2. 運用実績

基準価額だけを見て一喜一憂しても意味がありません。大切なのはある程度の期間での運用実績です。基準価額の推移、設定以来のトータルリターンのほか、1年、3年、5年、10年など、期間毎のリターンや同カテゴリーの投資信託の中での順位なども確認できます。配当実績や配当の傾向、信託報酬などのコストも確認しましょう。

特にどれくらいのリスクをとって、どれくらいのリターンを出しているかを示す「シャープレシオ」は運用実績の評価にも使われる指標です。数値が大きいほうが効率よく運用できていることを示します。

3. 運用方針

運用実績も大事ですが、保有している投資信託の運用方針と自分の運用方針が一致しているかという視点からの見直しもおすすめです。「運用レポート」を見ることで、運用会社やファンドマネージャーが、どのような方針で運用しており、相場をどのように見ていて、どのような銘柄へ投資しているのかなどの概要がつかめます。

近年では「SDGs(持続可能な開発目標)」という観念が世界的に拡がり始めており、パフォーマンスだけでなく、ファンドのSDGsに対する姿勢なども資金が流入する重要なファクターになってくる可能性があります。

自分が保有している「似たタイプ」の投資信託との比較を

上記の3つのポイントは、他の投資信託と比較することも大切です。投資信託には、「日本株中小型」「外国株北米」などの複数のカテゴリーがあります。自分が保有する商品と同じカテゴリー、似たようなタイプの投資信託とパフォーマンスや保有銘柄を比較することで組入れ銘柄や運用の巧拙でパフォーマンスが見えてきます。パフォーマンス、純資産残高、ファンドマネージャーのコメント等を参考にしましょう。

見直し頻度はどれくらいが良いのか?

可能であれば運用レポートが発行される月に1回の頻度でチェックすることを習慣づけましょう。それが難しい場合は四半期に1回〜年に1回程度でも十分です。投資信託自体のチェックに加え、自身の投資方針やリスク分散比率(リスク資産と現金比率等)に基づいた商品かどうかも合わせてチェックしましょう。

自分の資産は自分がドライバー

投資信託はただ持ち続けるだけでは意味がありません。自分の資産に責任を持てるのは自分だけです。相場の潮目が変わったり、投資信託のファンドマネージャーが替わったり、投資信託の運用でも様々な変化がおこります。新型コロナで生活様式が変わることは誰にも予想すら出来ないことでした。そうした変化があったときは、投資も見直してみるべきなのです。変化に対応して、将来の資金を築くのは、ファンドマネージャーでも運用会社でもありません。自分自身がドライバーとなり、年に1回でも良いので資産のメンテナンスをしてあげましょう。

この投資信託に関する連載も次回で最終回となります。これまでの投資信託に関するテーマを総括しながら、中長期で保有すべき投資信託についてお届けする予定です。

※本記事は投資に関わる基礎知識を解説することを目的としており、投資を推奨するものではありません(提供:Wealth Road