THE OWNER特別連載「経営者のお悩み相談所 〜経営コンサルタントが一問一答!〜」第二回目は「事業計画を立てるのが苦手」という経営者のお悩みについてお答えします。
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【今回のご質問】
事業計画を立てるのが苦手です。作成のコツを具体的に教えてください。
【ご回答】
自分で考えやすい順番で作成し、後で並べ替えましょう。
ご質問ありがとうございます。事業計画は、ある程度記述する順序が決まっているものです。ただ、この順序は事業家、経営者が考える順序ではなく、聞いている方に分かりやすい順序になっています。そこで、こちらが考えやすい順序で考えていって、発表や提出の際には利害関係者が分かりやすい順番に直すことをお勧めします。
経営者が書きやすい計画書の順番とは?
私が知っている経営者の多くは、自分のやりたいことがはっきりしていました。そこで、やりたいことや気になっていることを起点に書く方法を説明します。つまり、やりたいこと→そう思った根拠→目標(Vision)→担当者別やること一覧(行動計画)→計画実行の想定結果(財務計画)という順で考えてみます。
一方、利害関係者に分かりやすい順序は、分析→やるべきこと→目標設定&利益計画→行動計画という順序になります。これは我々コンサルタントが考えていく順序とも同じです。
経営者がやりたいことを起点に書く方法を以下に説明しました。
a. まず、自分がやりたいこと、気になっていることを色々と書き出してみてください。
例: 売上拡大、粗利率改善、営業担当の能力向上、社員エンゲージメントの改善等々
b. 上記の内容を1~5つのテーマにまとめてください。ここでのまとめは後から直すこともできますので、大まかなもので結構です。
例: 営業体制の強化、新商品開発、人事制度改訂、リスク管理徹底等々
c. 上記のテーマを選定した根拠、理由を以下の視点で考えてみてください。それぞれのテーマで全ての視点で考える必要はありません。必要なところだけで大丈夫です。
i. 社会情勢
ii. 市場環境・業界動向
iii. 顧客分析・商品分析
iv. 自社の業歴・実績
v. 組織の状況
例: 市場を見てみると、商品が複雑化してきて、提案型営業が不可欠になってきた等々
d. 全社の目標を設定します。目標は3年後、5年後等のように期限を区切って、できれば数値目標が望ましいです。
例: 3年後売上10億円達成、5年後業界No1等々
e. 目標を達成するための必要事項を書き出していきましょう。一通り、書いたら、誰(どの部署)がいつまでにということを決めましょう。この時、費用が掛かることをしっかり確認しておきます。
例: 人材採用営業社員3名、来年度中、人件費500万円/年、採用費用300万円、総務部長担当等々
f. 来年、再来年、3年後というように売上の増加と費用の増加を年毎にシミュレーションしてみます。
「5.」で見積もった費用を必ず盛り込みます。
経営計画書の一般的な章立てとは?
最後に足りないところを加筆して並べ替えてみます。
事業計画章立て | 内容 |
---|---|
1. 経営理念 | ご加筆ください。創業の経緯やどんな気持ちで仕事をしているか などを簡潔にまとめてください。 |
2. 当社概況 | ご加筆ください。自社のことを知らない人向けに 簡潔に自社紹介してください。 |
3. 外部環境分析 | 上記「c.-i,ii」を分かりやすくまとめてください。 特に内容がない場合は省きます。 |
4. 顧客分析 | 上記「c.-iii」を分かりやすくまとめてください。 特に内容がない場合は省きます。 |
5. 自社分析 | 上記「c.-iv, v」を分かりやすくまとめてください。 特に内容がない場合は省きます。 |
6. 重点経営課題 | 上記「b.」の内容をお書きください。 |
7. 経営Vision・経営目標 | 上記「d.」の内容をお書きください。 |
8. 財務計画 | 上記「f.」の内容をお書きください。 |
9. 行動計画 | 上記「e.」の内容をお書きください。 |
この順番に並べ替えると、聞いている方は、当社の紹介→環境の変化・分析の結果→これからやるべきこと、会社の目標→計画の結果→具体的に必要な行動という順序で聞くことになり、すんなり頭に入ってきます。
ある会社の例
下記に例を挙げてみます。
a.&b. やりたいこと、気になっていることとテーマ
この会社では売上拡大、PB比率上昇、営業社員の能力開発、与信管理に経営者が課題を感じていました。これを売れる商品を売れるところに届ける体制構築、リスク管理の徹底という2つのテーマに分けてみました。
c. テーマの根拠や理由
そう思った根拠を明確にし、調べて行きました。
- 売上拡大: 自社実績から最近、売上の伸びが鈍化してきた。
- PB比率上昇: 商品別分析からPBの方が高粗利率
- 営業担当者の能力開発: 業界動向から商品が複雑化してきた。また、組織の状況から若手社員の元気がないと感じる
- 与信管理: 社会情勢から感染症の影響で倒産が増加している。自社業績から数年に1度貸し倒れが発生している。
d. 目標設定
目標設定は以下の指標としました。一般的な計画より少し種類が多いですが、より確実度の高い計画を目指し、詳細な目標値を設定しました。
① 売上高経常利益: 692百万円
② 売上高: 27,219百万円
③ 粗利率: 17.8%
④ 安全余裕率: 14%
⑤ PB比率: 30%
e. 必要事項書き出し
上記の目標を実現するような必要事項を書き出していきます。利益中心の目標管理、支店長への権限移譲、支店・本社の業務分担見直し、人事制度改定、安全余裕率が低い部署の経費削減、取引開始時の与信審査及び毎年の調査・・・。実際には部長級管理職に役割分担し、期限を設定しましたが、ここでは紙幅の都合で省略します。
f. 財務シミュレーション
PB比率と粗利率を計算するために、商品群別の売上と粗利率を基に計算しました。経費の削減、増加計画も盛り込み、計画損益計算書を作りました。ここでは細かすぎるので下記の図表だけを参考として記載します。
これらを計画書としてまとめると以下のような章立てになりました。
ご参考になったでしょうか。ここをもう少し知りたいという箇所がありましたら、是非、またご質問ください。今回は作成の流れの解説をいたしましたが、ピンポイントでご質問いただければ、細かい箇所の作り方もお話ししたいと思います。(提供:THE OWNER)
文・杉野洋一((同)Initiatives代表)