コロナ禍が直撃し、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドの業績が急速に悪化している。最新決算における売上高は、実に64%減となった。一方で、1人当たりの売上高は増加するなど、ポジティブな要素も見られる。この苦境を脱するため、同社はどのような青写真を描いているのだろうか?

オリエンタルランド、通期で500億円以上の赤字へ

オリエンタルランド、通期で500億円以上の巨額赤字 実は「嬉しい誤算」も?DXや変動料金の布石に注目
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オリエンタルランドは米ディズニーと業務提携し、大型テーマパークの「東京ディズニーランド」や「東京ディズニーシー」などを運営している企業だ。まず、同社の最新決算発表の概要に触れていこう。

オリエンタルランドが2021年1月28日に発表した2021年3月期第3四半期の連結業績(2020年4月1日~2020年12月31日)によれば、売上高は前年同期比64.9%減の1,371億1,300万円まで落ち、営業利益は1,010億3,800万円の黒字から198億4,000万円の赤字に転落している。

事業のもうけを示す経常利益も、1,023億5,800万円の黒字から218億5,000万円の赤字となり、最終的な損益は287億2,800万円のマイナスとなっている。同社は2021年3月期の通期の連結業績予想も明らかにしており、最終的には511億1,000万円の赤字となる見通しだという。

売上高も大きく減少したが、「嬉しい誤算」も

決算発表では、売上高をセグメントごとでも明らかにしている。「テーマパーク」セグメントの売上高は、前年同期の3,294億700万円から1,119億4,400万円まで落ち、「ホテル」セグメントも前年同期の539億6,600万円から224億3,600万円まで減少した。

つまり、テーマパークセグメントとホテルセグメントの両方が売上を大きく落とす結果となっている。それも仕方がない。新型コロナウイルスの感染防止策として、東京ディズニーランドなどでは臨時休業を余儀なくされ、ディズニーホテルも臨時休館せざるを得なかった。

すでに、ディズニーランドなどは営業を再開しているが、「密」を避けるために入園者数を一定程度制限しており、現状、コロナ禍が収束するまではかつての売上水準に戻すのは難しい状況だ。

しかし一方で、第3四半期の売上高と営業利益は前年同期では大きく減少しているものの、同社の予想よりも減少幅が小さかったことは、特筆すべき点であると言える。オリエンタルランドにとっては「嬉しい誤算」だ。なぜ、このような嬉しい誤算が起きたのか。

売上高については、ゲスト1人当たりの売上高の増加が寄与した。営業利益については、商品・飲食原価率や営業費用の減少に努めたことで、予想よりも良い数字を残せた。

東京ディズニーの商品力・商品企画力は健在

しかし、なぜオリエンタルランドはコロナ禍においても、ゲスト1人当たりの売上高が増加する結果になったのか。その理由として、同社の役員(常務取締役経理担当)である横田明宜氏は、次のように決算説明会の質疑応答で述べている。一部抜粋して紹介する。

「商品販売収入は、スペシャルイベントの中止などによる減少を想定していたものの、レギュラー商品などが好調で(予想を)上回った。飲食販売収入は、新規エリア関連のポップコーンバケットなどが好調で、(予想を)上回った」

このような点は、東京ディズニーランドで来場者向けに販売している商品の商品力や商品企画力、そしてディズニーに対する人気がコロナ禍においても健在であることを思わせる。さらに、1人当たりの売上高が横ばいではなく増加していることから、今後の一層の伸びも期待できそうだ。

DXの推進や変動料金制の導入という「攻め手」

また、オリエンタルランドはいま「DX(デジタルトランスフォーメーション)」に力を入れており、2月1日付で「デジタル戦略部」が新設された。これまでもITやデジタルを活用した取り組みを行ってきたが、今後はさらに、これまでの取り組みをスピードアップさせる狙いだ。

決算説明会では「これまで取り組んできた東京ディズニーリゾートアプリのサービス拡充は、ゲストの体験価値向上に寄与して」と語られており、アプリを通じた取り組みなどで東京ディズニーリゾートのファンをさらに増やしていきたい考えのようだ。

また、東京ディズニーランドと東京ディズニーシーでチケットの「変動料金制」が、今年3月20日入園分のチケットから導入されることにも注目したい。

東京ディズニーランド、東京ディズニーシーでは混雑期に、アトラクションの待ち時間などにおいて課題があった。しかし、例えば閑散期の価格を下げることでの繁閑差を平準化すれば、混雑期の待ち時間が短くなり、来場者はよりアトラクションをスムーズに楽しめるようになる。

コロナ禍の収束後の回復、そして業績の伸びに注目

足下の業績をみれば、オリエンタルランドの苦境は鮮明だ。しかし、業績を細かく紐解き、最近の取り組みを考慮すると、同社の将来には大いに期待が持てる。コロナ禍の収束後、どこまで同社の業績が回復し、そして伸びていくのか、注目したい。(提供:THE OWNER

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)