本記事は、浅田尚希氏の著書『2代目歯科医こそ副業を始めなさい 副業で学ぶビジネスの仕組み!』(サンライズパブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています。
なぜ歯科業界からベンチャーが生まれないのか?
企業経営に借金は付きものです。お金を借りて、設備投資したりサービスを拡大したりして、拡大再生産していきます。無借金経営は財務の健全性を表してはいますが、レバレッジを利かせられないのでさらなる成長のチャンスを逃しかねません。
マイホームを買うときも、ローンを組むから年収の何倍もの額を払えるのです。お金を借りてマイホームを手にすることによって、家族の幸せが何倍にも大きくなるのです。
無借金がいいとは一概には言えません。お金を借りることに抵抗感があると、新しいチャレンジに打ってでようという意識が生まれません。
医療の世界では「医療ベンチャー」と呼ばれる企業が生まれています。AI(人工知能)や画像解析、ビッグデータといったITを医療に活かすような新ビジネスが次々と誕生しています。
医師を辞めてグーグルに転職した人が話題になった例もあります。弁護士でも、弁護士検索サイトなどのベンチャービジネスが出てきています。
ところが、歯科業界に目を転じてみると、医療業界や士業に比べてベンチャービジネスや副業、転職などで話題になることがほとんどありません。せいぜい、もっと勉強したいと医学部に入り直す歯科医がいるくらいです。お金を借りて事業を拡大するよりも、現状維持を良しとするような保守的な意識が影響しているのではないでしょうか。
そもそも歯科医療は市場が小さい。メディカル産業の中で、歯科医療が占める割合は意外と小さなものです。保険診療全体に占める歯科医療のシェアは10%程度です。
市場規模が大きければ、ベンチャービジネスを立ち上げても収益化できる可能性が広がります。しかし、そもそも小さな市場でベンチャービジネスを立ち上げたところで、顧客のパイが小さければ収益化が難しい。収益化しにくい市場でビジネスを立ち上げようと考える人は少ないわけです。
このため、歯科業界は新しいことにチャレンジするというよりも、どちらかというとこれまでどおりのやり方を手堅く続けていく気質が強い業界なのです。
安泰を求め続けて取り残された歯科業界
もともと、歯科業界は安定している上に、ホワイトニングやインプラントといった自費治療が以前から盛んです。あえて業界を変えたり、ベンチャービジネスなどの新しいことを始めたりする差し迫った理由がありませんでした。目の前の患者さんのための治療だけに集中していれば成り立つ業界だったのです。
ところが、地域の患者さんとまじめに向き合っていれば安泰だった時代は過ぎ去ってしまいました。これから歯科医療で生きていくには、急速に移り変わっていく世の中に合わせて、歯科医自身も変わっていかなければならないのではないでしょうか。