中村 太郎
中村 太郎(なかむら・たろう)
税理士・税理士事務所所長。中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

持分法とは、連結財務諸表において子会社でない一定の投資先に適用される評価方法をさす。要件にあてはまる投資先があるときは、持分法を適用しなければならない。この記事では、持分法の概要をはじめ、持分法適用会社の種類や関連する会計処理などを解説する。

持分法とは

ビジネスマンでこれを知っていればすごい。持分法とは
(画像=joel-420/stock.adobe.com)

持分法は連結財務諸表規則第2条第8号によると、投資会社が被投資会社の純資産及び損益のうち、その投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資金額を事業年度ごとに修正する方法をいう。

もし投資先の業績がよければ、その利益のうち自社に帰属する金額を計算し、その投資先にかかる勘定科目に足す。

反対に業績が悪ければ減らすなどして、事業年度ごとに投資先にかかる勘定科目の残高を修正していく。

持分法を用いるのは連結財務諸表を作成するときであり、その会社に持分法適用会社がある場合だ。

引き続き、連結財務諸表と持分法適用会社の内容を確認していく。

連結財務諸表

連結財務諸表とは、親会社と子会社を一つの組織として作成した決算書類である。

主に有価証券報告書を提出する会社が作成する書類だが、連結決算自体は有価証券報告書を提出する義務のない会社でも行われている。

連結財務諸表に関する具体的な書類は下記の通りだ。

【会社法】

・連結貸借対照表
・連結損益計算書
・連結株主資本等変動計算書
・連結注記表

【金融商品取引法】

・連結貸借対照表
・連結損益計算書
・連結包括利益計算書
・連結株主資本等変動計算書
・連結キャッシュ・フロー計算書
・連結附属明細書

連結決算では、親会社と子会社の個別財務諸表における数字を合算する。親会社は子会社を支配する反面、子会社の経営状態に強く影響されるからだ。

持分法適用会社

持分法適用会社に該当するのは、非連結子会社と関連会社である。

いずれも財務諸表規則や連結財務諸表規則などで定められており、子会社ほどの支配関係はないが影響を及ぼす投資先である。

連結財務諸表規則第10条第1項によると、これらの会社については持分法により計算した価額をもって、連結貸借対照表に計上しなければならない。

ただし、次のケースにあたる非連結子会社や関連会社には、持分法を適用しない。

・財務及び営業又は事業の方針の決定に対する影響が一時的であると認められる関連会社
・持分法を適用することにより連結財務諸表提出会社の利害関係人の判断を著しく誤らせるおそれがあると認められる非連結子会社及び関連会社

同条第2項によると、その損益及び利益剰余金その他の項目からみて、持分法の適用対象から除いても連結財務諸表に重要な影響を与えないものは、持分法を適用しないことも認められる。

持分法と連結決算の違い

連結決算では、親会社と子会社の個別財務諸表を合算する。

これに対し持分法では、被投資会社の純資産や損益のうち、自社の持分に相当する価額を算定してその価額を自社の当期純利益に反映させる。

投資先の会社が連結子会社にあたるか、それとも持分法適用会社にあたるかで、投資会社の当期純利益が変わるように思えるかもしれない。

反映される額はどちらでも基本的に同じになる。

持分法適用会社の種類2つ

持分法適用会社に該当する非連結子会社と関連会社の詳細について確認していく。

種類1.非連結子会社

連結財務諸表に合算される子会社を連結子会社という。子会社は原則として連結子会社になるが、例外的に含まれない非連結子会社もある。

非連結子会社の理解を深めるために、連結子会社の範囲から確認してみよう。

【連結子会社の範囲】

財務諸表規則第8条によると、子会社とは親会社から財務及び営業又は事業の方針を決定する機関を支配されている会社である。

子会社にあたるかどうかは、判定対象会社の議決権をもとに判断する。

ア 50%を超えて所有している
イ 40%~50%を所有している
ウ 実質50%を超えて保有している

イとウでは、実質的にその会社を支配している要件が必要になる。

子会社の判定要件を下記の表にまとめた。

対象会社の議決権の50%超を所有している場合
対象会社の議決権の40%以上50%以下を所有する場合で、次の1~5のいずれか一つに該当する場合
1 所有している議決権と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者や自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせて、対象会社の議決権の50%超となる
2 役員若しくは使用人である者、又はこれらであった者のうち、自己がその会社の財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えられる者が、対象会社の取締役会などにおける構成員の過半数を占めている
3 対象会社の重要な財務及び営業又は事業の方針の決定を支配する契約等が存在する
4 対象会社の資金調達額(貸借対照表の負債の部に計上されている金額)において総額の過半について融資している
5 そのほか、対象会社の意思決定機関を支配していると推測される事実が存在する
次のいずれにも該当する場合
・所有している議決権と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者や自己の意思と同一内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせた場合(自分で議決権を保有していない場合を含む)に対象会社の議決権の50%超を占める
・上記2~5までに掲げるいずれかの一つの要件に該当する

※財務諸表規則第8条第4項より作成

【非連結子会社として認められる対象】

連結財務諸表規則第5条第1項によると、非連結子会社として認められる対象は下記の通りだ。

・財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(株主総会など)に対する支配が一時的であると認められる子会社

・連結の範囲に含めることにより連結財務諸表提出会社の利害関係人の判断を著しく誤らせるおそれがあると認められる子会社

同条第2項によると、連結の範囲から除いても企業集団の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する合理的な判断を妨げない程度に重要性の乏しいものであれば、連結子会社に含めないことも認められる。

種類2.関連会社

関連会社とは、子会社にあたらない一定の会社である。関連会社にあたるかどうかは、判定対象会社の議決権をもとに判断する。

ア 20%以上所有している
イ 15%~20%未満を所有している
ウ 実質20%以上保有している
エ 共同支配企業に該当する

イとウでは、実質的にその会社を支配している要件が別途必要になる。

関連会社の判定要件を下記の表にまとめてみた。

対象会社の議決権の20%以上を所有する場合
対象会社の議決権の15%以上20%未満を所有する場合で、次の1~5のいずれか一つに該当する場合
1 役員若しくは使用人である者、又はこれらであった者で自己がその会社の財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えられる者が、対象会社の代表取締役、取締役又はこれらに準ずる役職に就任している
2 対象会社に重要な融資を行っている
3 対象会社に重要な技術を提供している
4 対象会社との間に重要な販売、仕入れその他の営業上又は事業上の取引がある
5 対象会社の財務及び営業又は事業の方針の決定に重要な影響を与えられると推測される事実が存在する
次のいずれにも該当する場合
・所有している議決権と自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者及び自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせた場合(自己の計算において議決権を所有していない場合を含む。)に対象会社の議決権の20%以上を占める
・上記1~5までに掲げるいずれか一つの要件に該当する
複数の独立企業により、契約等に基づいて共同で支配される企業に該当する場合

※財務諸表規則第8条第6項より作成

持分法の会計処理や適用における注記事項

ここからは、持分法の会計処理や適用における注記事項について解説していく。

持分法の仕訳

持分法適用会社の損益等を投資会社に反映させるときは以下の仕訳を行う。

借方関連会社株式など◯◯貸方持分法投資損益◯◯

たとえば、被投資会社の利益が100万円で、その会社の株式30%を保有している場合、「関連会社株式など」として30万円を被投資会社の勘定科目に加算する。

連結財務諸表規則によると、持分法による投資損益は営業外収益・営業外費用に表示する。相殺して表示してもよい。

持分法を適用した場合の注記事項

連結財務諸表規則によると、持分法を適用した場合、連結財務諸表に下記の注記が必要となる。

・持分法を適用した非連結子会社や関連会社の数とこれらのうち主要な会社等の名称
・持分法を適用しない非連結子会社や関連会社がある場合には、これらのうち主要な会社等の名称
・持分法を適用しない非連結子会社や関連会社がある場合には、持分法を適用しない理由
・議決権の20%~50%以下を所有しているにもかかわらず、その会社を関連会社としなかった場合には、その会社の名称と関連会社としなかった理由
・持分法の適用手続について特に記載する必要があると認められる事項がある場合は、その内容
・持分法の適用範囲を変更した場合、その旨と変更理由
・持分法が適用される会社の翌連結会計年度以降に重要な後発事象(財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす事象)が発生したとき、その事象の内容
・重要な関連会社が存在するときは、その関連会社の名称、持分法による投資利益・投資損失の算定対象となった一定の項目

持分法適用会社の判定に不安があれば専門家に相談

持分法について、持分法適用会社の種類や持分法の会計処理などについて解説した。連結決算を行う会社は、持分法適用会社について判定する必要がある。判定要件について不明点があれば、早めに会計士や税理士などに相談していただきたい。(提供:THE OWNER

文・中村太郎(税理士・税理士事務所所長)