【第5回】事業計画の作成及び実行は、社内人材のみで実施し、社外にサポートを依頼すべきではないでしょうか?
(画像=THE OWNER編集部)

THE OWNER特別連載「経営者のお悩み相談所 〜経営コンサルタントが一問一答!〜」第5回目は「事業計画の作成及び実行は、社内人材のみで実施するべきか」という経営者のお悩みについてお答えします。

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【ご質問】
事業計画の作成及び実行は、社内人材のみで実施し、社外にサポートを依頼すべきではないでしょうか。

【ご回答】
そういう事実はありません。必要な個所は外部資源を活用しましょう。

ご質問ありがとうございます。事業計画の策定と実行を社内人材だけで行うべきかという質問と思いますが、特に社内人材だけで行なわなければならないということはありません。但し、2点だけご注意ください。

杉野 洋一(すぎの よういち)
杉野 洋一(すぎの よういち)
(同)Initiatives代表。IT系企業、会計ファームにて広くクライアントを支援する傍ら、韓国・インドにて教育・指導・通訳に従事するなど多様な文化・企業環境において活躍。中小企業診断士として独立後は中小企業を中心に「真にクライアントに寄添う経営支援」を信条とし、目標制度や管理会計に取り組んでいる。▶https://initiatives.jp/

事業計画の策定、実行を一部社外に依頼するときの注意点とは?

その1: 経営者が自信を持って計画を説明できるようにする

事業計画は、経営者自身が自分の考えを整理する目的で策定されることもありますが、基本的には経営者の構想を会社の内外に示すものです。ですので、経営者が自信を持って計画を説明できなかったり、利害関係者からの質問にうまく答えられなかったりすると、経営者に対する不信に繋がります。結果として出資や融資を受けたり、取引開始が難しくなる恐れもあります。外部資源活用でどんなに素晴らしい計画を作ったとしても、これでは逆効果になりかねません。

事業計画は、「契約書」ではないので押印こそないものの、経営者の利害関係者のコミットメント(約束)です。経営者の名前で出す書類ですので、社内人材、社外資源、その他誰が書いたにせよ、自分が自信を持って説明できると思うまで、しっかり検討することをお勧めします。事業計画発表の中で、利害関係者からの質問に答えられなければダメということではありません。よく検討した事実が、結果として自信に満ちた受け答えに繋がり、利害関係者からの信頼感が増します。

特に、設立から間もないベンチャー企業のように、実績が充分積みあがっていない段階では、経営者リスク、経営者の信頼性は厳しく評価される傾向があります。事業計画の内容は勿論ですが、金融機関や投資家は、経営者が信頼に足り得る人間か、途中で投げ出したりしないか、自分たちを騙そうとしているのではないかということの評価も重視します。リスクを取って協力するのは彼らの仕事ではありますが、騙されるような事態は絶対防ぎたいというのは誰しも共通です。

従って、計画策定の一部を外部に依頼する場合には、内容を理解し、自信を持てるまで妥協しないという姿勢が必要になります。

その2: 自分で計画遂行が可能とイメージできるまで煮詰める

もう一つは実施段階の話です。当たり前の話ですが、計画は作るだけでなく実行することに意味があります。計画実行に当たっては、経営者や経営幹部、マネージャなど、実施に責任を持つ人物が実行の具体的なイメージを持っていることが大切です。例えば、皆さんも新入社員だったころ、上司の言っていることをその場では理解できたような気がしても、席に戻ってみると全然分からないということがあったのではないでしょうか。このような場合、実行の具体的なイメージが湧いていなかったため、行動に移すことができなかったと考えられます。事業計画も実施責任を持つ者が実施の具体的なイメージを持っていることが実行の前提となります。

比較的規模の小さい企業では、経営者が全ての実施責任を負い、社内各部署に指示をしながら計画遂行を進めていく場合があります。このような場合には、まず経営者が実行のイメージを固められるまで、計画を具体化していく必要があります。

事業計画には、社外の利害関係者に対して経営者のコミットメントを発表するという意義以外に、社内を動かす経営管理ツールとしても使われることもあります。つまり、各部署、各経営幹部、各マネージャ、或いは各社員毎に行動計画を明らかにし、経営者との約束とすることで、社内を動かしていく仕組みです。このような場合には、特に各実施責任者が行動計画実行のイメージできていることが大切です。そうでなければ、前述の新入社員のように、いざ実行段階になると何をすればよいか分からず、具体的な行動に結びつきません。

経営者は外部の利害関係者と遣り取りをする機会が多く、事業計画とは即ち利害関係者との約束であることを理解しやすい立場にあります。一方、社内人材はそこまでではない為、事業計画に対する意識の隔たりが生まれます。経営者の方から社内に対して、計画とは即ち約束(コミットメント)であるということを繰り返し伝えましょう。

社内を動かす経営管理ツールとして計画を策定する場合には、やはり実施責任者の行動計画は本人に作らせ、社外人材活用は各計画の取りまとめや財務シミュレーション、実施責任者の相談に乗るという業務に留める方が賢明かもしれません。実施責任者の計画に納得している、自分のものになっている、イメージが湧いている状態を作るためには、やはり自分でやってみる以上の解決策はありません。

お答えになったでしょうか。ご不明な点がございましたら、引き続きご質問を受け付けておりますので、遠慮なくご一報ください。(提供:THE OWNER

文・杉野洋一((同)Initiatives代表)