外貨預金を活用するにあたって、TTSとTTBの違いは最初に把握しておくべき大切な事項である。それぞれ何を指し示す言葉なのか、また、共に知っておきたいTTMとその計算方法について解説しよう。

TTS、TTBは顧客

外貨預金の基本、TTSとTTBの違いとは ? 外貨相続時は何を利用する ?
(画像=悠希 渡辺 / stock.adobe.com)

為替市場には、主に「インターバンク市場」と呼ばれる銀行間取引の市場と「顧客市場」と呼ばれる銀行が企業や個人等と取引するための市場がある。

個人投資家が外貨預金をするときに基準とするのは顧客市場の為替レートだ。インターバンク市場では為替が常にリアルタイムで動いているため、顧客向けの為替取引では業務が煩雑になってしまう。

そのため、銀行は毎朝9時55分のインターバンク市場の為替レートを基準にして、その日の顧客向けのレートを決めている。この基準レートが「TTM (Telegraphic Transfer Middle rate / 対顧客電信相場仲値) 」である。

顧客が外貨を買うときに使うレートは、TTMに手数料相当分を上乗せした「TTS (Telegraphic Transfer Selling rate / 対顧客電信売相場) 」だ。そして、顧客が外貨を売るときに使うレートはTTMから手数料分を引いた「TTB (Telegraphic Transfer Buying rate / 対顧客電信買相場) 」となる。

TTSとTTBは1990年まではすべての銀行が同じレートを使っていたが、現在はTTSとTTBは各銀行が独自に決めている。銀行で両替可能なすべての通貨に対して毎日提示されており、銀行のホームページなどでチェックできる。

TTS・TTBの計算方法

TTMさえ決まれば、TTS、TTBの計算方法は簡単だ。例えば、ドル円で基準値であるTTMが105円だとして、ドル円の手数料が片道1円だとすれば、ドルを買うときのTTSは106円、ドルを売るときのTTBは104円となる。常に、 ( TTS + TTB ) / 2 = TTM の式が成り立つ。

TTSとTTBの差をスプレッドと言い、現在メガバンクのレートでは、米ドル2円、ユーロ3円程度が一般的であるが、インターネット経由なら安く設定されている場合もある。銀行は顧客から104円でドルを買い、106円でドルを売る。この2円が銀行にとっては収益となるが、投資家にとっては換金時のコストとなる。TTMが105円のときで往復の2円のスプレッドは約1.9%に相当するため、コストとして決して無視できない。また、相場の変動率などによってスプレッドが変化することもあり、資源国通貨や新興国通貨などはさらに大きいスプレッドであることが多い。

このスプレッドは外貨投資するとき、特に高金利通貨などに投資するときに、意外と大きいコストであることは意識しておきたい。

TTS・TTBの具体的な使用例

個人の場合、外貨預金、海外渡航時のキャッシュやトラベラーズチェックなどの外貨の手当、外貨建て送金などの取引をするときなどには、TTS・TTBのお世話になっているはずだ。

外貨建ての保険に加入している場合は、保険料を日本円で支払うときや、保険金・年金を日本円で受け取るときにTTS・TTBで計算する。保険料を外貨で支払う場合でも、保険金や年金を外貨で受け取った場合でも、TTS・TTBで円換算して所得税を計算する。

また、外貨建ての資産を相続する際には、納税者の取引金融機関が公表する課税時期における最終のTTBを使用することになっている。さらに、被相続人に外貨建ての借入金等の債務があり、相続人が相続財産から債務控除する際には、課税時期における最終のTTSを使用することになっている。

米国株などの外国株式投資を行う場合は、円から外貨建ての株を買う場合、外貨建ての株を売って円に戻す場合など、証券会社が社内で決めたTTS・TTBに相当するレートで計算している。

このように、外貨に関連した投資をする場合は、為替の変動リスクだけでなく、スプレッドにも気をつけたい。為替のスプレッドであるコストは意外と大きく見えにくいため、このコストを考慮した上で預金計画を立てることをおすすめする。

(提供:大和ネクスト銀行


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