新型コロナウイルスが収束ムードに入ったと思いきや、東京を含め地方都市で感染者数がぶり返している。そのような状況で、2021年のお花見シーズンが始まり、「密」リスクに対する警戒感が再び高まっている。参加者・自治体・社会の視点から、2021年のお花見を考える。

収束への期待感が高まったが、また感染者が増加傾向

2021年もお花見はダメ? 参加者・自治体・社会の視点から考察
(画像=Rummy&Rummy/stock.adobe.com)

2度目の緊急事態宣言も解除され、ワクチンの先行接種も医療関係者を対象に始まり、コロナ禍の収束ムードへの期待感が高まりつつあった。と思ったら、また新型コロナウイルスの感染者数が徐々に増え始めている。

東京都では感染者がまた増加傾向にあり、宮城県と山形県では独自の緊急事態宣言が発令された。近隣県の秋田県では、宮城県と山形県との不要不急の往来を避けるよう県民に対して呼び掛けている。

そのような中、桜前線は例年よりも早いペースで北上しており、3月末時点ですでに関東や東北の南部でも桜が開花している。関東や西日本ではすでにお花見シーズンが到来しているが、懸念されるのが「密」だ。

お花見では集団飲食が行われ、お酒が入って会話も賑やかになりやすい。そのため、例年通りのお花見スタイルだと、クラスターが発生する可能性が高まる。では2021年のお花見に関し、参加者・自治体はどのように考えるべきで、社会に対してはどのような影響が考えられるだろうか。

参加者側から見た「2021年のお花見」

前提として、お花見を企画しない、参加しないことが、最も感染の防止につながる。お花見に誘われても、断る勇気が必要だ。仮に感染した場合、職場や家族にも迷惑をかけることになる。どうしても桜を楽しみたいなら、友人や家族と少人数でお花見スポットを訪れたり、お花見をする場合もお酒は飲まずにマスクをしながら会話したりするにとどめるなど、工夫が求められる。

お花見は企業単位で行われることもあるが、場合によっては企業が従業員に対してお花見を一律で自粛するよう呼び掛けるなどの対応も求められる。その年のお花見担当も、会社からの自粛要請があれば中止を決定しやすい。

では実際、2021年はどれくらいの人がお花見をしようとしているのか。観光情報を扱う情報サイト「ウォーカープラス」の編集部が調べたところ、「花見はしない」と答えた人は49%と半数近いが、「感染症拡大防止に気をつけながら行う」と答えた人も35%に上っている。

自治体目線で見た「2021年のお花見」

各都道府県や市町村はこれまで、飲食店やイベントで「密」が発生しないよう、店舗やイベントの主催団体などに対して対応を求めてきた。お花見についても、同様の措置をとるべきではないか。

自治体が管理する公園などでは、お花見の自粛を呼び掛けたり、お花見を禁止したり、公園の入場制限をかけたり、といった対応が考えられる。また感染者数が減少傾向にある場合は、宴会は禁止した上で「歩き花見」であれば容認するなど、柔軟な対応もありかもしれない。

お花見を容認する場合は、体温チェックの係員を配置したり、密にならないよう呼び掛ける担当者を巡回させたり、といった工夫も求められる。感染者数が増えればその自治体の医療の逼迫につながる。できる限り感染防止に向けた取り組みは進めるべきだ。

ちなみに、東京都の小池百合子都知事は、3月中旬に「お花見のシーズンですが、宴会はなしでお願いします」と記者会見で語っており、「歩き花見」は容認するものの宴会は自粛するよう呼び掛けている。実際に、イベント開催を中止する動きも広がりを見せている。

社会視点から見た「2021年のお花見」

社会全体で見ると、お花見によって感染者数が増加することはマイナス面が大きい。

再び広域を対象とした緊急事態宣言が発出される事態になれば、コロナ禍による経済の落ち込みからの回復にさらに時間がかかることになり、企業の業績悪化で雇用にもさらに悪影響を与える。お花見で感染者数が急増すれば、日本の感染対策に関して世界から疑問の目が向けられる可能性も高い。そうすれば、これまでに築いた「日本は安全な国」という良いイメージにキズがつきかねない。

「花見おせち」「オンラインツアー」で特別なお花見もアリ

お花見に対する自粛ムードが広がる中、ユニークな取り組みも生まれている。大手百貨店の大丸などは自宅で「おうち花見」を楽しんでもらえるよう、「花見おせち」や「花見スイーツ」などを販売中だ。

旅行代理店などは、インターネット会議サービスの「ZOOM」(ズーム)などを使ってお花見をオンライン体験できる特別ツアーを企画し、「地酒付きプラン」などもアピールしている。自宅に届いた地酒を飲みながら、各地の桜の生中継で楽しむという趣向だ。

昨年に引き続き、2021年も堂々とお花見をできるような状況ではないが、このようなユニークな取り組みに乗っかれば、2021年のお花見は例年とは違った特別なものとなる。お花見で宴会ができないことを残念に思う人は、試してみてはいかがだろうか。(提供:THE OWNER

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)