自治体DX (デジタルトランスフォーメーション) とは何か ? 今、社会がどう変わろうとしているのか ? 菅義偉首相は、今後5年で行政のデジタル化を達成するよう指示した。今後ますますDXが加速することが予想されている。
この記事では、自治体DXの内容と中長期で期待できる産業分野について解説していく。世の中の変化に乗り遅れることなく、正しい知見を得て、中長期的な視点で投資に臨みたい。
自治体DXとは ? 予算が大幅に拡充された背景
DX (デジタルトランスフォーメーション) とは、デジタル技術による業務プロセスの変革、ビジネスそのものの変革を指す。
DXは数年前から注目されてきた概念だ。経済産業省は、2018年に「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン (DX 推進ガイドライン) 」を発表している。DX推進ガイドラインでは、企業がいかにスムーズにIT技術を導入できるか、データを活用できるかに焦点があてられていた。
2019年に総務省が発表した「地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及びAI・ロボティクスの活用に関する研究会」の資料では、AIを活用した未来の自治体像が示された。
未来の自治体では、申請業務はすべてデジタル化され、スマホやタブレットで行われるようになる。またデータの活用により、合理的根拠に基づいた政策決定がなされる。自治体のメイン業務は手続きや事務処理ではなく、サービスデザインへと変貌を遂げる。
2021年度予算の概算請求では、地方自治体のDXに向けて38億8,000万円が投じられることとなった。2020年度の予算と比べて約5倍と、政府の本気度がうかがえる数字だ。予算をもとに、2025年度までに行政手続きのオンライン化やセキュリティー対策を一挙に進め、大幅な業務改善をはかる。
自治体DXの先行的な2つの導入事例
政府が本格的にDX推進を打ち出す前に、先駆けてDXに取り組んできた自治体がある。ここでは、自治体DXの導入事例を2つ紹介する。
●自治体DXの導入事例1. 東京都葛飾区
マイナンバー制度の開始にともない、自治体の事務作業が増加した。「自治体通信Online」によると、東京都葛飾区は、この問題を独自に解決するため、システムの導入に踏み切った。
目をつけたのは、定型作業を自動化しデスクワークを削減するRPA (ロボティック・プロセス・オートメーション) と、手書き文字を読み取ってデジタルに変換するOCR (光学的文字認識) だ。この2つの技術を導入することで、大幅な業務効率化に成功した。
保育園の入園申込関係の手続きだけでも、手作業で入力していた場合と比較し、年間で約712時間の削減に成功したという。それだけでなく、誤入力が減り、業務品質も改善されたことがわかっている。
●自治体DXの導入事例2. 福島県会津若松市
福島県会津若松市も、先駆的な取り組みが注目される自治体だ。地域情報ポータルサイト「会津若松+ (あいづわかまつプラス) 」は、アクセスする住民一人一人に合わせ、「知りたい情報」が届くよう設計されている。
例えば、大学生がアクセスするとスポーツイベントやサークル用の施設情報、妊娠中の人がアクセスすると健康相談やプレママ講座の情報、高齢者がアクセスすると市民講座などのイベント情報がそれぞれ届くのだ。
他にも、除雪車の走行状況を細かく確認できる「除雪車ナビ」、スマホやタブレットで乳幼児健診結果や予防接種履歴を確認できる「母子健康情報サービス」など、さまざまな取り組みが実施されている。
2019年には、首都圏のICT関連企業が機能移転できる受け皿として、オフィス機能を備えたスマートシティ「AiCT (アイクト) 」をオープンした。雇用の創出や地域活性化を目指す。
DX推進により盛り上がる領域は ?
今後、自治体DXが進んでいく中で、企業もまたDXを求められることとなる。どのような領域が盛り上がると考えられるだろうか。
世界的にみて注目度が高いのは、ブロックチェーンだ。ブロックチェーンを活用した多くのプラットフォームが適用されたり、実証実験に入ったりしている。業界横断的なプラットフォームも登場していることから、これらのプラットフォームを上手に活用し、事業発展に生かしていけるかが、将来の明暗を分ける可能性もある。
Appleは、2020年10月に5G対応のiPhone12を発表した。今後5Gが普及することによって、デジタルマーケティングの世界では、動画コンテンツの需要がいっそう高まるだろう。とはいえ、動画による広告戦略に精通した企業の広報担当者は少ないのが現状だ。そのため、デジタルマーケティングのコンサルティングを行う企業にも注目していきたい。
今、あらゆる業界でDXが進んでいる。そんな中で、新たな波に乗れる企業と乗れない企業が生まれるはずだ。投資先が変化を受け入れられる企業か、DXに積極的かという視点は、投資家として常に持っておくようにしたい。
(提供:大和ネクスト銀行)
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