東京オリンピックの聖火リレーが2021年3月25日、福島県を皮切りにスタートした。新型コロナウイルスの影響で1年遅れとなり、満を持しての開催となったが、必ずしも順風満帆な道のりとはならず、各所で「密」が発生しているようだ。

聖火リレーの概要は?全121日間の行程

聖火リレーがコロナ拡大要因か 多発する「密」の影響
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聖火リレーは3月25日、スタート地点の福島県楢葉町・広野町のスポーツ施設「Jビレッジ」を出発した。一路九州・沖縄方面へ向かった後に北海道まで北上し、再び南下する。関東圏を回った後、東京都に到着するルートだ。

全121日間の行程で、1都道府県当たり2~3日のペースで通過する。開催地となる東京都は15日間の行程で、7月23日に東京都庁・都民広場でゴールを迎える予定だ。ランナーは、スポーツ選手や芸能人といった著名人をはじめ、一般公募などで選考された約1万人がトーチに灯された聖火をつないでいく。

聖火リレーへの新型コロナウイルスの影響は?

新型コロナウイルスの世界的流行によって大会そのものが1年延期されたが、2021年の開催もぎりぎりまで様子を見たため、各種スケジュールが流動的となる状況が長く続いた。そして著名人を中心に、コロナ禍での聖火リレーに懸念を感じ、参加の辞退を申し出る動きが相次いだ。

スタート地の福島県では、人気グループのTOKIOや俳優の窪田正孝さん、斎藤工さんが辞退した。その後も、栃木県ではラグビー日本代表の田村優さん、長野県ではノルディックスキー複合男子の渡部暁斗さん、愛知県ではタレントの田村淳さんや将棋の藤井聡太さん、フィギュアスケートの宇野昌磨さんがそれぞれ辞退し、代わりのランナーが選出されている。

このほかにも、俳優の広末涼子さん(高知県)、俳優の黒木瞳さん(福岡県)、落語家の笑福亭鶴瓶さん(兵庫県)、歌手の五木ひろしさん(福井県)、俳優の常盤貴子さん(石川県)らが辞退を表明している。

このような著名人の辞退が表面化し始めた2月、東京2020組織委員会(以下組織委)は、聖火リレーを対象とした新型コロナウイルス感染症対策を発表した。

聖火ランナーや沿道観覧客をはじめとした聖火リレー関係者に、3密回避や飛沫感染・接触感染防止などの対策を求めているほか、特に沿道では人が過度に密集しないよう適切な距離をとり、マスクの着用の上大声を出さずに拍手などによる応援を呼び掛けている。

また、沿道に駆け付けなくてもリモートで聖火リレーの様子を視聴できるよう、NHKが全日程をライブストリーミングで配信している。

聖火リレーで既に起きたトラブル

組織委員会は、「多くの観覧客の肩が触れ合う程度に密接し、複数列に重なり合った状況」を密集とし、適切な距離をとるよう呼び掛けても解消されない場合、当該場所や市区町村単位でリレーを中止する措置をとることも検討するとしている。

それでも、聖火リレーや著名人ランナーをひと目見ようと観客が密集する状況がすでに一部で発生しているようだ。

3月28日に通過した栃木県足利市や、4月5日に通過した愛知県名古屋市などで「密」が生じたと各種メディアで報じられた。群馬県前橋市や長野県伊那市でも、一部密集する場面があったようだ。

今後の聖火リレーでは起こり得ないのか?

聖火リレーは、一生に一度見られるかどうかのイベントだ。しかも、著名人が走るとなれば、生観覧の衝動を抑えられない人は決して少なくないものと思われる。いざ、沿道で密集回避を呼び掛けられても、「自分1人くらいは…」といった思考が働き、居座ってしまう人も多いのではないだろうか。

観覧客の良心頼みでは、密集は避けられない。また、密集し始めてから密回避を呼び掛けても手遅れだ。曖昧な基準で密を線引きしても、「なんでダメなんだ」「1人くらいいいだろう」――といったクレームが殺到し、新たなトラブルを生む恐れがある。

密を回避するには、観覧ポイントごとに明確に人数制限をかけるほかない。折りたたみ椅子を配置するなどしてキャパシティを一目瞭然にし、立ち見を一切禁じるといった手法などが考えられる。

自治体の反応・反発は?

まん延防止等重点措置が適用されている大阪府は、当初予定していたコースを変更し、一般観覧客を入れず万博記念公園を周回する代替措置を発表した。愛媛県知事も4月21日予定の松山市内のリレーを中止にする方向で調整しているようだ。

鳥取県は当初予定のコースを短縮し、観覧客数に定員を設けるなど規模を縮小する方向で調整を進めているほか、熊本県は独自の緊急事態宣言を発令した場合、中止する可能性について言及している。このほか、「感染対策が不十分」と早くに中止検討を表明していた島根県知事は、一転して容認する姿勢を示している。

密を回避する具体的手段が求められる

組織委員会としても、リレーの中止は最後の手段であり、可能な限り避けたいはずだ。各都道府県や自治体と綿密に協議するのはもちろん、密を避ける具体的かつ有効な手段を提示し、広く理解を求めていくことが求められる。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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