法人が支払う地方税である「法人事業税」は、中小企業は所得の金額のみで計算される。一方、規模の大きい法人は外形標準課税に基づいて計算しなければならない場合もある。この記事では、外形標準課税の仕組みや、構成要素である「所得割」「付加価値割」「資本割」の3つについて解説する。

目次

  1. 外形標準課税とは
    1. 外形標準課税の対象企業は資本金だけで判定する
  2. 外形標準課税を構成する3つの要素
  3. 外形標準課税の要素1「所得割」
  4. 外形標準課税の要素2「付加価値割」
    1. 付加価値の構造と4つの要素
  5. 外形標準課税の要素3「資本割」
    1. 持株会社の場合は注意が必要
  6. 外形標準課税を把握し正確な税金計算を行おう
  7. Q&A
    1. Qどんな会社が適用されるのか
    2. Q どのように計算されるのか
外形標準課税の税率と税額の算出方法 3つの構成要素別に解説
(画像=kellymarken/stock.adobe.com)

外形標準課税とは

外形標準課税は、法人事業税の課税方法の一つで、期末の資本金が1億円を超える企業について適用される制度である。

通常の企業は、税務上の利益である「所得」のみで法人事業税が算出される。これに対し、外形標準課税を適用される企業の法人事業税については、所得以外の金額も加味しても算出される点が異なる。

外形標準課税の対象企業は資本金だけで判定する

外形標準課税の対象となる企業は、期末の資本金の額または出資金の額(以下、「資本金等の額」とする)が、1億円を超える企業である。

ここで、資本金の額は純粋に資本金の額であり、法人住民税の均等割の計算で考慮される資本準備金は含まれない。

外形標準課税を構成する3つの要素

外形標準課税は、以下の3つの要素から構成される。

外形標準課税の税率と税額の算出方法 3つの構成要素別に解説

「法人事業税」は、これら3つの要素に対して税率を掛けて税額を計算する。

外形標準課税の要素1「所得割」

所得割は、外形標準課税が適用されない法人の「法人事業税」と同じ基準で課せられるものである。

ただし、その税率は外形標準課税が課せられない企業よりも低く設定されている。

外形標準課税の要素2「付加価値割」

企業が1年間に企業活動によって与えた付加価値を基準として、法人事業税を課税するのが付加価値割である。

ここで、付加価値とは一般的には企業がその活動により新たに生み出した価値のことである。
簡単に言えば、通常利益を計算される際に引かれる給与や借入金利息については生み出した価値に含まれるものとして、控除せずに計算する。

付加価値の構造と4つの要素

付加価値割の課税対象となる付加価値は、4つの要素からなる。所得割の所得と比較すると、以下のような図になる。

外形標準課税の税率と税額の算出方法 3つの構成要素別に解説

付加価値の計算方法はいろいろあるが、事業税上では単年度損益(税務上の当期の利益)に加算要素となる収益分配額を足して求める。その収益分配額は「報酬給与額」「純支払利子」「純支払賃借料」に分けられる。

・【1】単年度損益

単年度損益は、法人事業税の「所得割」の所得と同じで、その期の法人事業税上の損益の金額を元にして算出されるが、それぞれは繰越損失がある場合に違った扱いをする。

「所得割」の所得は、繰越損失がある場合、法人事業税上の損益の金額から繰越損失の金額を差し引いた金額とする。一方で、「付加価値割」の付加価値は、仮に繰越損失があっても考慮せずに、そのまま計算に用いる。

・【2】報酬給与額

報酬給与額は、報酬などのうち、法人税法上で損金に参入されるものであり、役員報酬や従業員への給与・賞与がそれにあたるが他にもある。
主だったものとしては、退職金、確定拠出年金、派遣会社に支払う報酬がそれだ。なお、派遣会社に支払う報酬は、先方の手数料見合いを差し引いた75%分について加算される。

一方で、通常、給与扱いされることもある通勤手当(派遣会社への報酬に含められるものも)はこの中には入らない。

・【3】純支払利子

純支払利子は、支払利子から受取利子を控除した金額のことである。

・支払利子に該当するもの

支払利子とされるのは「負債の利子」とされるもので、法人税法上の損金になるものだ。代表的な例として、借入金や発行社債の利息があり、ファイナンス・リース取引のリース料の中に含まれる「支払利息相当額」も該当する。

・受取利子に該当するもの

受取利子とされるものは、各事業年度において支払いを受ける利子で、法人税において益金算入されるものである。

代表的な例として、預金利息、貸付金利息、有価証券利息、還付加算金などがある。

・【4】純支払賃借料

純支払賃借料は、支払賃借料から受取賃借料を控除した金額のことである。事務所、倉庫、借地は言うまでもなく。社宅も入る。

外形標準課税の要素3「資本割」

資本割は、資本金等の金額を元に計算される税金である。

資本割の計算は、原則として法人税法で定められている資本金等(資本金の他資本準備金などを加えたもの)の金額を元に計算さる。

持株会社の場合は注意が必要

資本割の調整の中で知っておくべきものは、いわゆる持株会社の場合である。

総資産のうち、発行済株式等や出資の50%を超える株式や出資を持っている会社である、「特定子会社」の株式や出資の簿価が50%を超える場合は、資本金等のうち、それに相当する金額を資本割の対象から外すことができる。

外形標準課税を把握し正確な税金計算を行おう

ここでは、期末の資本金が1億円を超える会社について課せられる法人事業税である「外形標準課税」について解説した。外形標準課税は、「所得割」「付加価値割」「資本割」に分けられるため、正確な税金計算を行うためにはそれぞれについて把握することが肝要である。

特に「付加価値割」は計算が複雑なため、4つの要素について内容をよく理解し、それぞれの計算方法を確認して欲しい。

Q&A

Qどんな会社が適用されるのか

期末の資本金が1億円を超える会社に対して適用されます。

Q どのように計算されるのか

所得から求められる所得割、会社がその活動により生み出した付加価値に基づいて計算される付加価値割、資本金をもとに計算される資本割の3つを元に計算される。

中川 崇
執筆・中川 崇(なかがわ・たかし)
公認会計士・税理士。田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。

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