導入事例から学ぶカーボン・オフセットのポイント

カーボン・オフセットを新たに導入する際には、すでに成功を収めている導入事例からヒントを得ることが重要になる。以下では、比較的分かりやすい導入事例をまとめたので、カーボン・オフセットの導入を検討している経営者はひとつずつ確認していこう。

【事例1】カーボンオフセット・ユニフォームの製造/ミドリ安全株式会社

東京都に本社を構えるミドリ安全は、安全靴やヘルメットなどの工業用品を製造する企業だ。同社はカーボン・オフセットの取り組みとして、CO2排出量をオフセットした「カーボンオフセット・ユニフォーム」を製造している。

このユニフォームの魅力は、ミドリ安全の温室効果ガスを削減する点だけではない。購入を通して環境保全に貢献できるだけではなく、ユニフォームのオリジナルネームによってイメージアップを図れる仕組みになっている。

そのほか、排出権とセットにしたユニフォームを販売している点も、世の中の経営者が参考にしたいポイントだろう。

【事例2】見える化や削減努力の徹底/キヤノン株式会社

大手精密機器メーカーであるキヤノンは、カーボン・オフセットの一環として環境配慮技術を用いた複合機を製造している。この技術でも削減しきれないCO2はクレジットを買い取ることで補っており、該当製品の実質CO2排出量をゼロに保っている。

キヤノンの取り組みで見習いたいポイントは、CO2排出量の把握や削減に力を入れているところだ。同社は温室効果ガス排出量の見える化を徹底しており、新製品に環境配慮技術をとりいれるなど削減努力もしっかりと行っている。

また、「CFPを活用したカーボン・オフセット制度」や「J-クレジット制度」など、国が実施する制度を通して取り組みを進めている点も、キヤノンの信頼性につながっているポイントだろう。

【事例3】環境配慮型プライベートブランドの立ち上げ/株式会社ファミリーマート

大手コンビニチェーンのファミリーマートは、環境に配慮するプライベートブランドとして「We Love Green」を立ち上げた。2009年にはこのブランドを活用し、インドの水力発電プロジェクトから排出権を買い取ることでカーボン・オフセットを導入している。

これは消費者に同ブランドの商品を購入してもらう形でのカーボン・オフセットだが、実は前述の「クレジット付製品・サービス」には該当しない。ファミリーマートは消費者に一切のオフセット費用を負担させず、買い取ったCO2排出権を日本政府に譲渡していた。

コスト面だけを見ると損をしているように思えるが、企業のイメージアップ戦略としては効果的な手段と言えるだろう。

【事例4】ポイントプログラムを活用した寄付型オフセットの実施/株式会社ローソン

同じく大手コンビニチェーンのローソンは、ファミリーマートとは違った視点からカーボン・オフセットを導入している。同社は共通ポイントプログラムである「Ponta」を活用し、消費者が温室効果ガスの削減に貢献できる寄付型オフセットを実施した。

具体的には、1口50ポイントで20キロのCO2オフセットに貢献できるサービスを展開している。寄付型オフセットも上手に活用すれば、企業のイメージアップを図れる効果的な戦略となり得るだろう。

【事例5】ホームゲーム約100試合分のCO2をオフセット/株式会社エスパルス

プロのサッカーチーム「清水エスパルス」を運営するエスパルスは、ホームゲーム開催によって排出されるCO2のオフセットに取り組んだ。オフセットの対象は2013~2017年に開催された約100試合であり、クレジットの購入によって電力消費やゴミ処理などに関するCO2のオフセットを実現している。

この事例で参考にしたいポイントは、明確な目的をもってクレジットの購入先を選定している点だ。例えば、アジアの環境貢献や自然環境(森林)整備への協力など、同社は積極的に支援したいプロジェクトを対象にクレジット購入先を選んでいる。