どんな取り組みが対象に? カーボン・オフセットの4つの手法
カーボン・オフセットにはさまざまな手法があるが、カーボン・オフセット宣言の対象になる取り組みは大きく4つに分けられている。具体的にどのような取り組みが該当するのか、次からはカーボン・オフセットの4つの手法を紹介していこう。
1.オフセット製品・サービス
ひとつ目は、商品・サービスのライフサイクル内で排出する温室効果ガスの量を、クレジットの購入によって埋め合わせる方法だ。例えば、工場で温室効果ガスを排出しながら商品を製造する場合に、その排出量の埋め合わせとしてクレジットを購入するようなケースが該当する。
商品・サービスを提供または販売する事業者であれば実践できる可能性があるため、基本的な取り組みとしてしっかりと押さえておきたい。
2.会議・イベントのオフセット
上記の「オフセット製品・サービス」と同様に、会議・イベントに関する温室効果ガス排出量をクレジットで埋め合わせた場合も、カーボン・クレジット宣言の対象になる。具体的な会議・イベントとしては、スポーツ大会やコンサート、国際的な会議などが挙げられるだろう。
なお、カーボン・クレジット宣言を利用する場合は、主催者として会議・イベントを運営することが求められるため注意しておきたい。
3.クレジット付製品・サービス
クレジット付きの商品・サービスを一般消費者に販売する手法も、カーボン・クレジット宣言の対象に含まれている。企業活動における排出量削減にはつながらないものの、消費者の日常生活における温室効果ガス排出量を間接的に埋め合わせることができるためだ。
なお、商品・サービスの販売だけではなく、イベントの主催者がチケット等にクレジットを付して販売するケースも制度的には認められている。
4.寄付型オフセット
最後のひとつは、地球温暖化防止活動や類似するキャンペーンへの参加者を募る手法だ。クレジットを購入する代わりに、参加者が地球温暖化防止活動などに取り組む形となるので、買い取ったクレジットは無効化(=相殺)されることになる。
企業が排出した温室効果ガスを埋め合わせる手法ではなく、形としては温室効果ガスの削減プロジェクトなどに資金提供をする結果になるため、この手法は「寄付型」と呼ばれている。
カーボン・オフセットの現状と課題
ここまでを読んで、世の中の企業が「本当にカーボン・オフセットを進めているのか?」と疑問に感じた経営者も多いことだろう。また、環境対策への取り組みは周りと足並みをそろえることも重要になるので、計画を立てる前にカーボン・オフセットの現状を把握しておきたい。
そこで次からは、現時点で発覚している課題も含めてカーボン・オフセットの現状を解説していく。
カーボン・オフセットはすでに世界中に浸透、制度が拡充される可能性も
アメリカやヨーロッパ、オーストラリアなどを中心に、カーボン・オフセットの考え方は広く浸透している。日本でも民間企業の取り組み事例が増えつつあり、いまや温室効果ガス排出権の買い取りは珍しいものではなくなった。
また、カーボン・オフセットが浸透するとともに、実は「カーボン・ニュートラル」と呼ばれる新たな概念も注目されている。これは、温室効果ガスの全排出量をオフセット(=相殺)する考え方であり、国内においてはカーボン・オフセットと一緒に法整備などが進められている。
○カーボン・オフセットやカーボン・ニュートラルに関する年表
上の年表を見ると分かるように、政府はカーボン・オフセットの推進に積極的な姿勢を見せている。さらに、2020年以降はパリ協定の目標も意識する必要があるため、今後も温室効果ガスに関する制度は拡充される可能性が高い。
カーボン・オフセットが企業の環境破壊を助長するリスクも
カーボン・オフセットに関する制度は、現時点ではうまく機能しているように見える。しかし、世の中の企業が本来の目的を見失うと、カーボン・オフセットがかえって企業の環境破壊を助長するかもしれない。
例えば、どんなに温室効果ガスを排出している企業であっても、クレジットを購入さえすれば見かけ上の排出量を抑えることが可能だ。つまり、場合によってはクレジットが環境問題における免罪符のような役割をもち、企業が気候変動対策を進めない口実となるリスクがある。
このような状況になってしまえば、カーボン・オフセットは単なるマーケティングやキャンペーンの手段に成り下がってしまう。そのため、カーボン・オフセットの「排出量の削減努力をすること」という前提は、決して忘れてはいけないポイントになる。