本記事は、御子神翔吾氏の著書『SNS時代を勝ち抜く! 45秒でファンにさせる話し方』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています。

English
(画像=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

伝わる話し方のポイントは中学英語にあり

スティーブ・ジョブズのプレゼンが魅力的に見えるわけ

今や世界中の人が手にしているiPhone。Apple社の製品は直観的に使いやすく、画期的であることは誰もが知っていますが、認知が一気に広がったのは2007年初代iPhoneの発表の際に行われたApple社の創業者スティーブ・ジョブズのスピーチからでした。彼がプレゼンをした瞬間に、商品の内容やキャッチコピーやスローガン(ヘッドライン)が、Webサイト、広告、ポスターなどあらゆるチャンネルを通して発信され、口コミによって一気に拡散し、世界中のApple Storeに行列ができたのです。

スティーブ・ジョブズのプレゼンを研究すると、表現方法や伝え方に必要な要素が見えてきます。それは、「情熱を伝える」「シンプルイズベスト」「神は細部に宿る」という3つのプレゼンの本質です。

まずプレゼンの源泉は、圧倒的な商品への確信とそれを広めていきたいという情熱です。プレゼンテーター自身が売り込む商品の最大のファンとなることによって、夢中になるほどの想いが聴き手に伝染します。プレゼンの本質は「シンプルに」「短く」「具体的に」伝えます。プレゼンの構成も「現状の問題点を指摘し、解決策を提示する」ことが基本です。

何をどう言うのか、聴衆に何を見せるのか。ジョブズは言葉選びから間の取り方、演出まで徹底的にこだわり抜いていました。名俳優さながらに台本に沿ってごくごく自然に演じていきます。こうして彼のプレゼンは成り立ち、多くの人を熱狂させます。

スティーブ・ジョブズの英語表現から見る、伝えるポイント

歴史的名演「iPhone のプレゼン」を見ていくと、「期待感の演出」「間」「数字を効果的に使う」「サプライズ」「キャッチコピー・スローガン」「ユーモア」「敵を仕立て上げる」という英語特有の要素が見えてきます

例えば、「本日、画期的な新製品を3つ発表します」と冒頭に話しておきながら、その直後に「1つめ、ワイド画面タッチ操作のiPod。2つめ、革命的な携帯電話。3つめ、画期的なネット通信機器。3つです。タッチ操作iPod、電話、ネット通信機器。iPod、電話……お分かりですね? 独立した3つの機器ではなく、1つなのです。名前はiPhone。本日Appleが電話を再発明します。これです……」

日本語ではあまり見られない要素です。特に日本式の伝え方では「間」「キャッチコピー・スローガン」「ユーモア」という要素が少ないのです。日本語で伝える場合は「喋る内容をきちんと精査しようという気持ち」が強く、また「前提条件として、相手が理解している」という認識が無意識に働いています。

そのためキャッチコピー・スローガンを示すこともあまりなく、話す内容を本の目次のようにまとめただけの単なる「概要」になってしまうことが多いのです。間やユーモアも織り交ぜず事実のみ列挙していくパターンがほとんどのため、キャッチコピーのような訴求力はなく、興味を持たせにくいという欠点があります。

英語学習で重要な「伝え方」はビジネスにも応用できる

英語学習で重要なのは、難しい単語を覚えたり、文法の間違いを理解できたり、文学的素養を学ぶことではなく、話し方・表現方法です。これは、ビジネスで「伝え方」を習得する際にも同じことがいえます

海外旅行先で現地の人と話す際は、「場の空気感で伝わる」「前提条件を省いても分かる」ということは一切ありません。しかし、簡単な単語しか知らなくても、文法が正しくなくても、ボディランゲージやユーモアを交えることで、文化背景が違う人たちにも伝えることができます。

伝わる話し方のヒントは中学英語にあります。難しく考えずに英語学習を行ったり、海外旅行などを経験したりすると、知らない言語が飛び交う中で自分の考えや想いを伝えなければならないため、「相手にどう伝わるか」を徹底的に考えて話します。そのためビジネス上の伝える力も向上します。

英文法を意識することで誰にでも伝わるトークになる

日本語が伝わりにくくなっている

「自分の話が伝わらない」という経験が、皆さまにもあるのではないでしょうか。例えば、

  • 会社の新入社員と話すと自分の話が伝わらない
  • 商談で丁寧に説明したつもりなのに、勘違いがありまとまらなかった
  • 友人と話していても話が食い違ってしまう

こうした問題には、話している人同士の価値観や育った環境や時代といったバックグラウンドが大きく関係しています。最近では情報の取得源の違いもその要因の一つになっています。情報技術の発達によって、人々は様々な媒体から情報を得ています。例えば、テレビから情報を得ている人もいればYouTube から情報を得ている人もいる。新聞を読む人もいれば、Yahoo! ニュースでニュースを読むだけの人もいます。そのため、同じ言葉でも受けとる側にとってはまったく意味が異なってしまうのです

さらには、ジェネレーションギャップも大きく関係しています。デジタルネイティブといわれる30代以下と、そうでない50代以上の人とでは情報の取得源や取得方法、バックグラウンドが異なるため、考え方や価値観も大きく異なるのです。

伝わらない原因はどこにあるのか

従来、日本語は多くを語らなくても伝わる文化であるといわれてきました。これはハイコンテクスト文化ともいい、民族性、文化、経済力などの共有性が高い文化のことです。アメリカの文化人類学者エドワード・ホール氏が1976年に著書『Beyond Culture(文化を超えて)』の中で提唱した、文化の違いによるコミュニケーションスタイルを表す言葉です。

代表的なものに、「阿吽(あうん)の呼吸」「一を聞いて十を知る」「みなまで言わすな」「空気を読め」などがあります。日本ではお互いの価値観が近く、コミュニケーションの際、お互いに相手の意図を察し合うので、黙っていても考えが伝わったように感じます。そのため、「話し手の伝達力」よりも、「聞き手の想像力」が問われるのです。このように、背景、共通認識の違いによって私たち日本人は言葉を省略してしまうことが多くなります。

一方、日本と真逆なのがアメリカです。多民族国家なので、文化も価値観もまったく異なる人々の集まりです。アメリカのようなローコンテクスト文化の特徴は、意思疎通は「話し手の伝達力」にすべてかかっているという点です

英語はそんな異なる人種同士が分かり合うための唯一のコミュニケーション手段なので、英文法には明確な構文が存在しますし、ましてや、主語、述語をむやみに省略することはありません。異なるバックグラウンドでも確実に伝えるためにはすべてを語ります。

SNS時代を勝ち抜く!45秒でファンにさせる話し方
御子神 翔吾
実演販売士兼SNS販促コンサルタント/セミナー講師。株式会社Aves 代表取締役社長
明治学院大学法学部在学中から実演販売の門を叩き、「すぐに行動(購入)に移させる話し方」の研究を重ね、「45秒で相手を自分のファンにさせること」がもっとも大切だと気付いて実践。その結果、大手メーカーの高級日焼け止めを1日で462個販売するなど、日用品・化粧品などの分野で数々の日間・月間販売の日本記録を打ち立てる。東証一部上場企業をはじめ、多くの企業から絶大な信頼を得て、業界随一の有名販売士となる。現在は経営者として実演販売や卸業の事業を展開する傍ら、SNS販促コンサルタントとして、企業や起業家の販促企画の提案・プレゼンテーションの支援をするほか、社内教育や販促に関するコンサルティング・セミナー講師としても活躍。実演販売の現場で培った「45秒でファンをつくる」ノウハウを活かし、TikTokではたった1動画で617万再生のバズ動画を生み出した実績をもつ。企業CMでは古舘伊知郎氏と共演し、テレビドラマ「相棒」などで実演販売の演技指導を行う。

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