東京株式市場は7月に入り、下落基調が鮮明になってきたようです。
7月第1週(7/5~7/9)の日経平均株価は、前週末比842円86銭安で続落となりました。
足元では2月、8月決算企業、今月下旬からは3月決算企業の四半期決算発表の季節です。
決算発表は8/6(金)にピークを迎える予定ですが、株価は7月下旬から8月中旬にかけて悪材料が出尽くし、反発基調に転じると考えます。当面の投資戦略は、決算発表で好業績であったにも関わらず、株価が下げている銘柄の押し目を拾うと投資妙味がありそうです。
日本株投資戦略
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■執筆者のプロフィール
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的寄稿も多数。
・出身 東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味 ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技 どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物 サイゼリヤのごはん
“株価急落”をどうみるか
テクニカル的にみると、日経平均が一目均衡表のクモの下へと下放れした7/7(水)以降の下げが厳しくなっています。
その背景には以下の理由などがあげられます。
(1)6月下旬は配当金支払い等で好需給だったのに対し、7月はETF分配金捻出売りなど、需給が悪化する懸念があった。
(2)米国での税還付や失業保険の上乗せ、給付金等が終了。7月は家計への資金流入が一巡。
(3)新型コロナウイルスの変異株増加と、ワクチンの接種ペースに対する鈍化懸念。
(4)中国の滴滴(DiDi)への締め付けを契機に、米国上場の中国企業に対し、中国当局が圧力を強めてきたこと。
(5)2022年4月に予定されている東証の再編を意識し、上場企業の資金調達等が増加してきたこと。
(6)米国で景気や物価上昇に対するピークアウト感が台頭してきたこと。
7/8(木)に、政府が東京都に対し、4回目の緊急事態宣言(対象期間7/12~8/22)を決定。また、沖縄県に出されている緊急事態宣言を来月22日まで延長したことなども、投資マインドを冷やした要因の1つとなったようです。
ただし、(5)については、東証の再編が追い風となりそうな銘柄もあり、株式市場に好材料を提供する可能性があります。
当面は株式市場全般という“森”に期待するのではなく、個別銘柄という“木”を中心に考えたいところです。
現在、2月決算銘柄等の決算発表が本格化していますが、7月下旬以降は3月決算銘柄等の発表が本格化します。
好決算が発表された銘柄でも、株式市場全般が冷えていると、ポジティブな反応を示さない可能性があります。しかし、長い目で見れば、それら好業績銘柄は買い場となりそうです。
ここでは、以下の条件を満たす銘柄について、押し目買いが有効と考えています。
(A)東証1部上場銘柄であること。
(B)6/18(金)~7/7(水)に決算発表を行った銘柄であること。
(C)時価総額250億円以上であること。
(D)上場する親会社が存在しない銘柄であること。
(E)四半期決算(累計)の増益率が通期の会社予想営業増益率を上回っている(黒字転換を優先)こと。
(F)52週高値から10%超下げた銘柄であること。
上記全ての条件を満たす銘柄について、(F)の株価下落率が大きい順に並べたものが図表1です。
次項ではその中から、数銘柄について投資ポイントをご紹介します。
図表1 ≪大幅安の好決算銘柄≫押し目買いでチャンス!?
コード / 銘柄 / 株価(7/8) / 52週高値比株価下落率 / 営業増益率(前年比)今期予想 / 営業増益率(前年比)四半期
<2742> / ハローズ / 2,716 / -43.3% / -3.6% / 3.5%
<3333> / あさひ / 1,364 / -31.4% / -20.6% / 36.9%
<7965> / 象印マホービン(11) / 1,579 / -28.8% / 23.2% / 55.1%
<7545> / 西松屋チェーン / 1,406 / -24.6% / 13.3% / 25.5%
<8267> / イオン / 2,896.5 / -21.2% / 39.5% / 黒転
<7447> / ナガイレーベン(8) / 2,519 / -19.1% / 2.6% / 25.1%
<8276> / 平和堂 / 2,002 / -18.1% / 17.5% / 87.9%
<2471 / エスプール(11) / 983 / -16.8% / 12.2% / 19.5%
<9843> / ニトリホールディングス / 19,755 / -15.9% / 4.5% / 15.0%
<8278> / フジ / 1,925 / -16.0% / 12.0% / 149.3%
<2659> / サンエー / 4,105 / -16.2% / 14.5% / 32.5%
<7630> / 壱番屋 / 4,940 / -15.1% / 55.1% / 107.3%
<8008> / 4℃ホールディングス / 1,818 / -13.8% / 1.2% / 42.7%
<4825> / ウェザーニューズ(5) / 5,560 / -13.7% / 6.3% / 7.2%
<6183> / ベルシステム24ホールディングス / 1,725 / -12.3% / 3.4% / 17.2%
※Bloomberg、会社公表データをもとにSBI証券が作成。
※銘柄名横のカッコ内数値は決算月で、同数値がない銘柄は2月決算銘柄。
※「今期予想」は会社予想ベースの増益率。「四半期」は直近の四半期累計営業増益率。5月決算の場合は本決算。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
抽出銘柄の投資ポイント
ハローズ(2742) 岡山、広島地盤の食品スーパー。株価はほぼコロナ前水準に
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
期間:2019/7/6~2021/7/9(週足)
■岡山、広島地盤の食品スーパー
岡山県や広島県を中心に91店舗(2021/2期末)を展開している食品スーパーです。
店舗運営、物流システム、情報システムの稼働を24時間体制で行っているのが特徴です。
ゆったりとした店舗に豊富な品揃えを施し、明るく開放的な店づくりを目指しているようです。
2021/2期は、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とする内食需要の高まりが追い風となり、売上高1,519億円(前期比12.8%増)、営業利益76億円(同43.7%増)と8期連続の増収・増益(営業利益・経常利益)と最高益更新を達成しました。
■内食需要の反動を織り込むも“売られ過ぎ”か?
株価は2020/9の4,795円から2021/6の2,618円まで45.4%も下げました。新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要で一時的な盛り上がりをみせたものの、現在の株価はほぼ帳消しになった状態です。
会社側は2022/2期の営業利益を3.6%減と予想。内食需要が増大した前年の反動減を見込んでいるようです。
もっとも、2022/2期・第1四半期の営業利益は前年同期比3.5%増と堅調。予想PERは11倍台まで低下しており、売られ過ぎとの印象も強くなっています。
長期的には現在29店舗の四国店舗数を60店舗まで拡大し、瀬戸内海を取り囲む商圏構築を目指しているようです。
象印マホービン(7965) 調理用家電・リビング製品の専業大手
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
期間:2019/7/6~2021/7/9(週足)
■調理用家電・リビング製品の専業大手
炊飯ジャー、電気ポットなどの「調理用家電製品」が売上高(2021/11期・上半期)の72.7%、空気清浄機などの「リビング製品」が同21.7%を占めています。
2021/11期・上半期の営業利益は425億円(前年同期比6.7%増)、営業利益17.2億円(同55.0%増)と好調でした。国内では巣ごもり消費の拡大を背景にオーブントースターやホットプレートが好調。衛生需要の高まりで空気清浄機も増加しました。
海外では特に北米での巣ごもり需要が堅調でした。
2021/11期・通期は売上高775億円(前期比3.4%増)、営業利益67億円(同23.2%増)の計画です。当初計画からは上方修正された数字ですが、逆算すると下期の営業利益は前年同期比20%減の予想であり、やや保守的な印象です。
■アフターコロナの成長ストーリーが鍵
株価は2020/6から2021/3にかけ71%上昇しましたが、その後は下落傾向に。巣ごもり消費反動への懸念が背景とみられます。下半期の業績については、銅やアルミなど素材価格の上昇もコストアップ要因として注意が必要です。
チャート的に株価の下げ止まり感は乏しいですが、上記の上昇幅に対し、約7割の押しとなっており、下げ止まりに期待したい水準です。EC化率の高まりや、世界一の電子レンジメーカーである中国Galanz社との協業成果など、新たな成長シナリオに期待したいところです。
イオン(8267) 国内流通大手の一角
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
期間:2019/7/6~2021/7/9(週足)
■国内流通大手の一角
国内流通大手の一角を占めています。
売上構成比(2022/2期・第1四半期)はGSM(総合スーパー)35.1%、総合金融5.7%、サービス・専門店7.9%、ヘルス&ウェルネス(ドラッグストア)14.6%、SM(食品スーパー)31.5%となっています。
2022/2期・第1四半期の売上高は2兆1,532億円(前年同期比3.2%増)、営業利益391億円(前年同期は126億円赤字)。緊急事態宣言による減収の影響は残ったものの、在庫や値引き率の管理を強め、利益率を改善させたGSM部門の大幅増益がけん引しました。営業利益水準はコロナ前の2019/3~5期の277億円を上回りました。
注目されるのは、天候や客数などをもとにAI(人工知能)が総菜や弁当など値引額やタイミングを導入している点で、7月末までにほぼ全店で導入の予定です。
EC化率は1%にとどまっており、2026/2期に10%まで高めたいとしています。
通期では営業利益2,000億円(前期比32.8%)を目指します。
■株主優待で人気
同社は株主優待で個人投資家人気の高い銘柄のひとつになっています。
2月末、8月末に100株以上を保有する株主に優待カード(半期100万円を限度とする買物金額に対し3%の比率で返金)を発行する予定です。
なお、上記返金率は保有株式により異なり、500株以上で4%、1,000株以上で5%、3,000株以上で7%と定められています。また、2月末時点で3年以上継続保有の株主に対しては、保有株数に応じて自社ギフトカードの贈呈があります。
※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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鈴木英之
SBI証券 投資調査部
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