会社の売却価格を上げるための2つの交渉術
プレミアムを上乗せし、会社の売却価格を上げようと思ったら、準備だけでは不十分だ。最後の一押しとして、交渉が重要となる。続いては、売却価格を上げるための交渉術を2つ解説する。相手を見極めながら、効果的な手段を選択するようにしたい。
交渉術1.シナジー効果のストーリーを描く
M&A後、お互いの事業がプラスに働き、双方の事業にメリットがもたらされることがある。これをシナジー効果という。
たとえば、自社が持つ顧客リストやSNSフォロワーはアピールポイントとなる。相手企業のサービスとマッチする顧客やフォロワーを抱えている場合、売上を伸ばせるかもしれない。
このとき、期待できるシナジー効果を単純に伝えるにとどまらず、効果が得られるまでのストーリーを具体的に描いて見せることが大切だ。数字でシミュレーションするのもよいだろう。
なんにせよ、相手企業のサービスを踏み込んで理解する必要がある。「ここまで考えているのか…!」と相手に思わせることができれば、希望価格で会社売却を成功させやすくなるだろう。
交渉術2.企業理念や会社風土を語る
自社の魅力を伝えるとき、数字や技術力などだけでなく、企業理念や会社風土がアピールポイントになることもある。
数字や技術力を生み出すのは、結局は背後にある考え方だ。つまり、企業理念や会社風土が数字や技術力の根拠になりえる。
10億円を超えた会社売却の成功事例2選
設立から数年を経て、数十億円規模でスタートアップ企業を大手企業に売却するのは、夢のような話だと思うかもしれない。しかし、このような事例が実際に登場している。10億円を超えた会社売却の成功事例を2つご紹介しよう。
成功事例1.ヤフーがdelyを約93億円で買収
2018年、ヤフー株式会社がdely株式会社を買収した。売却価格は約93億円といわれている。dely株式会社は、日本最大級のレシピ動画サービス「kurashiru(クラシル)」を運営する会社だ。
創業者であり、2021年現在の代表取締役でもある堀江裕介氏は、2014年の大学在学中に会社を設立し、2016年にサービスを開始。設立からわずか4年で、これだけの売却価格をたたき出した。
圧倒的なSNSフォロワー数やアプリダウンロード数が、売却価格に影響を与えたと見受けられる。M&A後も、代表取締役の交代は行われず、独立して経営していくとのことだ。
成功事例2.KDDIがnanapiを約40億円で買収
2014年、スタートアップ企業のnanapiをKDDIが買収した。評価額は約77億円で、買収額は約40億円ともいわれている。nanapiは暮らしに役立つノウハウを公開するwebメディアを運営していたが設立は2007年であり、わずか7年でこれだけ価値の高い事業に成長したといえる。
創業者である古川健介氏は、自らKDDIに売却を持ちかけた。事業は順調で黒字だったが、数年後を見据えたときに危機感があり、大きな勝負に出たという。