本記事は、山田秀平氏の著書『“売れる"オウンドメディアマーケティング』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています
良い商品を持つ企業ほど売り方が下手
発明家とマーケッターはまったく別の人種です。企業の現場により即していえば、「良い商品」を作り出す人と、その商品を売る人はまったく異なる資質を持っていると言っても過言ではありません。
例えば、iPhone。開発を担当するエンジニアチームは大変優秀で常にイノベーティブな思考をしている人たちに違いありません。ただ、実際にiPhoneを手にするユーザーが相対するのは、現場の販売員です。エンジニアが販売の現場でユーザーと接することはほとんどないでしょう。
開発者のマインドはどちらかというと、発明家に近いことが多いようです。彼らの頭には「良い商品を作れば、必ず売れる」という思い込みがあります。営業の重要性には気付いていないのかもしれません。私の見るところでは、「良い商品を持っている企業ほど売り方が下手」なようです。
日本の経済は成熟型に移行してきているといわれます。そこで求められているのは「高付加価値型」の商品です。箸や爪切りのような日用品から始まって、高付加価値を謳った商品は市場にあふれています。しかし、それらが必ずしもヒットしているとはいえません。
iPadやiPhoneが初めて登場したとき、日本の技術者の多くは「自分たちにも作れる」と思ったそうです。しかし、現実に日本発の技術革新は起こりませんでした。電子書籍の専用端末で先行していたソニーは、現在では撤退。後発組であるAmazon Kindleがいまだ健在なのとは対照的です。
一方、日本の技術を参考に作った商品が優れたマーケティングやセールスに助けられて世界市場を席巻している例は少なくありません。「技術者発想」で商品を売るには限界があるのです。
「人はものを売りつけられるのは嫌いだが、自ら買うのは大好きだ」─1962年に訪問販売で全米トップ・セールスパーソンとなったジグ・ジグラーの格言です。
顧客が本当に必要としているものを喜んで買っていただけるようにする。これがプロの仕事でしょう。
やはり、良い商品を作ることと、それらをうまく売ることはまったく別の作業なのです。
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