(本記事は、山端 康幸氏の著書『アパート・マンション経営は株式会社ではじめなさい』=あさ出版、2021年6月17日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

法人化形態その1不動産管理専門会社

「アパート・マンション経営を法人化したい!」と思った人は知っておきたい4つの形態①
(画像=ademka/stock.adobe.com)

この章では、法人化の主な4つの形態について説明していきます。まずは1つめ、「不動産管理専門会社」です。これは、個人が所有する不動産を移動することなく、会社は不動産の管理を専門に行う形式です。

賃貸借契約もオーナーがテナントと直接締結します。管理会社は建物のメンテナンスや清掃などの管理、テナント賃料の集金代行や入退去時点検などの管理を行います。管理委託契約を結ぶことにより、管理会社には管理手数料を支払います。

管理手数料は、基本的には両者の合意で決まりますが、一般的相場を超えることはできません。不当に高額だと、税務上否認される可能性があります。

この額は、家賃収入の5%~8%が限度であるといわれ、管理会社はこの管理手数料が売上となります。

◆不動産管理専門会社の管理業務の内容

管理専門会社が行う管理業務の内容によって管理料が定められます。一般的な管理業務としては、次のような業務が考えられます。

①賃料の集金代行
②賃貸物件の清掃・補修等の手配・立ち会い・点検
③賃貸借契約の締結、更新、解約などの手続き

これらの業務内容に応じて、近隣の相場などを勘案の上、管理料を定めることが必要です。また、管理業務の内容、管理料などは管理委託契約書に記載します。

管理料は契約で自由に定めることができます。ただし、その管理手数料が世間一般的に行われている管理会社の手数料と著しくかけ離れていると、租税負担を不当に免れるための行為と見なされ課税当局から否認されますので、一般的相場の管理手数料を参考に、管理専門会社の管理業務の内容、管理戸数等から管理料を決定しましょう。

管理住戸の大きさ、立地条件、建物構造等でも管理料は変わります。

管理専門会社は空室リスクを負わないので、それを負うサブリース会社(次項で説明)よりは管理料は低くなります。

「アパート・マンション経営を法人化したい!」と思った人は知っておきたい4つの形態①
(画像=『アパート・マンション経営は株式会社ではじめなさい』より)

◆管理専門会社の長所

管理専門会社はほかの不動産管理会社の形態に比べて、スキーム(枠組みを伴った計画)を簡単に作れるというのが最大のメリットです。

会社を設立し、管理委託契約書を作る(オーナー⇔管理会社)、テナントへの管理会社選定の通知で業務をスタートさせることができます。

◆管理専門会社の短所

管理専門会社による方式は所得移転できる金額に限りがあります。前述のとおり、管理料は管理の業務の実態に応じて相場をもとに算定されることになりますが、通常、家賃収入の5%~8%が限度ですので、これが所得移転できる金額の限度となります。

したがって、家賃総額の5~8%だけが会社の収入となることから、家賃収入の総額が問題となります。会社設立のためのコストやその後の維持管理コストはこの収入でまかなわなければなりません。

管理専門会社のスキームによる節税金額よりも、維持管理のコストのほうが高くなってしまうケースも想定されます。

「アパート・マンション経営を法人化したい!」と思った人は知っておきたい4つの形態①
(画像=『アパート・マンション経営は株式会社ではじめなさい』より)

法人化形態その2 サブリース会社

個人が所有する不動産を移動することなく、オーナーは所有する建物をサブリース会社に一括賃貸します(=転貸。借りた物件を別の人に貸すこと)。

サブリース会社は自己の責任で、自己を貸主としてテナントへ転貸します。建物のメンテナンスや清掃などの管理、入退去時点検などの管理ももちろんサブリース会社が行います。

オーナーは家賃収入を受けるだけ。この一括賃貸の場合、サブリース会社の想定手数料は10%~15%となります。サブリース会社は世間相場でテナントに賃貸しますが、オーナーとはその相場家賃の10%~15%低い家賃で賃貸借契約を結びます。

世間相場の変動と空室家賃保証がサブリース会社のリスクとなるため、管理専門会社より高い手数料となります。

◆サブリース会社の業務の内容

サブリース会社のスキームでは、不動産の所有者は個人のままで、サブリース会社が借り受けます。サブリース会社の業務の内容としては、次のような業務が考えられます。

①賃料の直接集金
②賃貸物件の清掃・補修等の手配・立ち会い・点検
③賃貸借契約の締結、更新、解約などの手続き
④賃貸物件のリフォーム
⑤保証家賃の支払い

個人オーナーからすると、空室のリスクに関係なく、安定して家賃収入を得ることができるメリットは大きいでしょう。不動産の管理もすべてサブリース会社が行うので、その分も保証家賃に加味されます。契約形態は、賃貸借契約書(オーナー⇔サブリース会社)、転貸借契約書(サブリース会社⇔テナント)となります。オーナーは、テナントへの賃貸人変更の通知もしなければなりません。

なお、基本的に保証家賃の金額は自由に定めることができますが、同族会社のサブリース会社の場合、その保証家賃の金額が世間一般的に行われている保証家賃の金額と著しくかけ離れていると、租税負担を不当に免れるための行為と見なされ、課税当局から否認されます。

一般的相場の保証家賃の金額を参考に、サブリース会社の管理業務の内容、空室リスクを負う等の内容から、保証家賃の金額を決定します。管理戸数、立地条件、建物構造等でも保証家賃の金額は変わります。

サブリース会社は空室リスクを負うため、管理専門会社の管理手数料よりは家賃差額は高くなります。

「アパート・マンション経営を法人化したい!」と思った人は知っておきたい4つの形態①
(画像=『アパート・マンション経営は株式会社ではじめなさい』より)

◆サブリース会社の長所

サブリース会社は、管理専門会社と土地建物所有会社の中間に近い位置づけです。管理専門会社に比べ、手数料は増えますので、所得移転できる金額は増えます。

また、サブリース会社はテナントとの賃貸借契約を直接行うことになりますので、もともと個人オーナーとしてテナントと結んでいた賃貸借契約の貸主変更をしなければなりません。賃貸人変更によっても賃貸契約は前契約を引き継ぎます。契約内容の変更は契約期間満了まで変更することはできません。

◆サブリース会社の短所

サブリース会社の短所は、保証家賃で世間相場の判断を誤ると、手数料に影響を及ぼすという点です。想定の収入が得られない危険もあります。一般的にいわれている10%~15%の手数料はプロの不動産会社のもので、オーナー家族主体のサブリース会社ですと、相場を見誤る危険があります。

このサブリース方式も、会社設立のためのコストやその後の維持管理コストを考えると、管理型会社と同様に、節税金額よりもコストのほうが高くなってしまうケースも想定されます。

サブリース会社を利用することによる節税額とコストのシミュレーションをするなど、具体的プランは専門家に相談してください。

「アパート・マンション経営を法人化したい!」と思った人は知っておきたい4つの形態①
(画像=『アパート・マンション経営は株式会社ではじめなさい』より)
アパート・マンション経営は株式会社ではじめなさい
山端 康幸
税理士法人東京シティ税理士事務所 所長。税理士。
土地活用や相続税対策に関する不動産税務を専門とする。
不動産税務専門税理士として40 年の経験を有する。
クライアントもアパート・マンション経営者が多く長期的な資産活用の税務コンサルタントを業務としている。
明治大学リバティアカデミー講師・全国宅地建物取引業協会講師・不動産コンサルティング協議会講師・賃貸不動産経営管理士協議会講師などを歴任、その他新聞社など主催のセミナーを数多く行う。

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『アパート・マンション経営は株式会社ではじめなさい 』
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