SDGs目標達成の問題点

SDGsの取り組み目標を目指す過程で見られる問題点を見ていこう。

中だるみ・途中放棄

SDGsの取り組みで多いのが当初の勢いがあっという間に失われ、あいまいな成果となってしまう問題だ。原因としては、企業の現状や能力にそぐわないなど、目標値の設定が不適切であることが多い。実現不可能な目標から現実的な目標への見直しを行い、長期・中期・短期で段階設定をする必要がある。一つひとつの施策が履行されず取り組みが立ち消え状態となるケースも考えられる。

内部の理解不足や現場との意識共有ができていないために社内の協力が得られないことから発生しがちな問題だ。取り組みの意義を全社的に理解することに時間をかけ、土台を固める作業を実施することが大切である。社内での合意形成にはある程度の時間がかかることに留意しておこう。社員のSDGsへの理解度の低さは、SDGs推進を阻む最大のリスクとなりかねない。

目標の実像がSDGsの観点にそぐわない

SDGsの活動のはずが実は目先の利益が目的となってしまっていることもある。外部からの非難を受ける可能性があるため、要注意だ。原因はSDGsの社会的な流れを単純な「ビジネスチャンス」と考えていることにある。たとえば、発展途上国の教育水準の向上を謳い、教材販売を行うといったものがある。地元の経済状況を把握しない価格設定では、富裕層しか購入できずSDGsの考えとは一致しない。

企業イメージの向上のために取り組み姿勢のみをアピールしているが内実を伴わないとSDGsウォッシュと見なされる恐れがある。そのため取り組み前の目標・実施内容とSDGsとの整合性の十分な確認が重要となる。また実施途中でもズレをなくすための定期的なチェック・評価も求められる。社内だけではなく第三者的立場からの客観的な意見を取り入れるとSDGsからの逸脱を回避できるだろう。

企業がSDGsの問題点を克服するためには

企業がSDGsの取り組みにおける問題点を解決、回避するためのポイントを見てみよう。

自社の課題を把握した上で取り組みを進める

SDGsの取り組みに対して自社のどの部分が障害となりそうなのか、あらかじめ課題を把握しておくことで円滑な推進が可能となる。企業理念との一致・社内の理解・意識共有を目指して丹念に会話を重ねていくことが必要だ。社内コミュニケーションが不足している状態ではうまくいかないため、活発な討議によりSDGsへの理解を深める工夫も欠かせない。

真剣な話し合いを通じて社員の「自分ごと」としての意識を引き出すことが期待できる。各部門や支社、下請けなどのマネジメントの最適化により、SDGsウォッシュを回避する全社の統一的な行動を図っていくことも重要だ。SDGsの施策について人員・時間・コストを捻出する際には、回収や将来的な利益との関係性を検討する。目先の損得に捕らわれてばかりいると効果的なSDGsの取り組みができない。

自社独自の取り組みを考える

どれほど他社の取り組みが素晴らしく見えても真似事では継続できない。たとえ同程度の規模であっても社員の構成や企業の成長段階など置かれている環境は異なる。参考例を踏まえながら自社ならではの取り組みを考えていくことが必要だ。大々的に打ち出しても後が続かないのでは意味がない。段階を踏みながら拡大・継続していく姿勢が最終的な目標達成への近道となるだろう。

本業とからめた独自性のある取り組みでは、建具・パーティションを扱う企業による高齢者が使いやすい福祉施設向けのドアの開発といった例がある。この例のような本事業の延長上であれば多少の失敗も大きなダメージにはならない。「なぜ今、うちの会社がコレを行うのか?」という自信が持てる取り組みこそが対外的にも説得力のあるSDGsの活動となる。