本記事は、金原章悦氏の著書『働きやすい会社の仕組みのつくり方』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています

従業員たちの「考える力」を鍛えるボトムアップの仕組み

組織,ボトムアップ
(画像=tadamichi/PIXTA)

超トップダウン型の組織から、ボトムアップ型の組織に

「社長の仕事は『決定』、幹部の仕事は『実施』」です。

以前から、私は社長として「決定」を行っていましたし、幹部たちには、私が決定したことを「実施しろ!」と強く言ってきました。

ただ、このときの私は、「決定」の前のアイデア出しもすべて自分で行い、「これでいく」と独断し、「実施しろ!」と命令をする形をとっていました。

つまり、超トップダウン型だったわけです。

会社の改革に着手した後も、最終的な「決定」は社長の私が行い、社員たちに「実施」させるわけですから、その意味で、今もトップダウン型と言えます。

ただ、そのプロセスが、昔と今とでは大きく変わりました。

多くの方針について、私は本当に「決定するだけ」。その前の段階での提案出しだったり、戦略の検討だったりといったことは、できるだけ幹部たちに行ってもらい、私は彼らからの提案等をジャッジし、最終的に決定するという形になったのです。

たとえば、人事異動であれば、まず当社の幹部である小西や森川、長谷川などに、「人事異動をするから、それぞれの考えを提案しなさい」と指示を出します。すると、三者三様で提案を持ってきてくれます。そして、それらの提案を私が吟味し、そのうえで、「じゃあ、こうしよう」と最終決定する流れです。

つまり、私の仕事は、下から上がってきた提案等を決定し、社員たちに実行させるだけ。その意味で、ボトムアップ型の組織にするよう仕向けています。

ただ、すぐにこうした体制がとれるようになったわけではありません。全社を挙げて環境整備に取り組み、幹部や社員たちに研修を受講させたりする中で、社員たちがこれまで以上に、主体的に仕事に取り組むようになっていきました。その結果、「何か提案やアイデアを出しなさい」と言えば、的確に応えてくれるようになり、ボトムアップ型に移行できるようになった、という感じです。

そして、こうした変化を私自身が感じられるようになったのは、武蔵野の小山社長に指導していただき3年くらい経ってからでした。

ボトムアップ型の組織は、自律的な社員を育てる

このような意思決定のプロセスが増えていく中で、気がついたことがあります。

それは、社長主導で超トップダウンで決めたことと、社員たちからのボトムアップで決まったこととでは、それが失敗したときの幹部たちの反応がまったく違う、ということです。

私が超トップダウンで決めて失敗したとき、彼らは私に対して「やっぱり社長、失敗したな。ざまあみろ」という反応を示していました(さすがに言葉にはしませんが、そうした雰囲気があります)。

そして、当然ですが、責任は一切取ろうとしません。「社長の指示に従っただけだから」という態度です。もちろん事後処理にはきちんと取り組んでくれます。ただ、「しかたなく」という雰囲気が伝わってくるのです。

一方、幹部たちはボトムアップで決めて失敗した場合、メチャクチャ悔しがります。ここまでは当然の反応だと思いますが、私がビックリしたのは、自分たちの提案で失敗した場合、「自分たちのせいで、社長の顔に泥を塗ってしまった……」と反省してくれることです。トップダウン型で失敗したときには、私に対して「ざまあみろ」という態度をとっていた彼らがです。

さらに面白いことに、「この失敗を無駄にせず、次の成功につなげよう」と、社員たちでああでもない、こうでもないと話し合いを始めます。つまり、これまで以上に主体的に、会社の成長のために働いてくれるようになるのです。

こうした姿を見るにつけ、「うちの社員も、ずいぶんと成長したな」と感慨深い気持ちになると同時に、「ボトムアップ」というのは、そこに関わった社員を自分で考え行動する「自律型社員」へと成長を促す効果があるのだと、改めて気づかされます。

ボトムアップ型を訓練の場に、後継者を育てる

社員たちの成長を実感する中で、現在、考えているのが、さらなるボトムアップ型組織への進化です。

イメージしているのは、意思決定に失敗したら経営的損失や社会的損失につながる可能性があるものついては、社長である私が決定するが、それ以外のものについては、小西や森川、長谷川などの幹部たちが決める、という体制です。

これまで、創業社長である私のワンマン体制で会社を切り盛りしてきました。そんな私も、現在、50代半ばです。テイルの将来を考えれば、今の幹部たちを私の後継となるべく「経営陣」として育てていかなければなりません。

そのためにも、彼らの「経営スキル」を今以上にアップさせていく必要があります。そのため、ボトムアップ型の意思決定を訓練の場に、私が安心してバトンを渡せる経営陣になってもらうべく、幹部たちを鍛えているところです。

働きやすい会社の仕組みのつくり方
金原章悦(かねはら・しょうえつ)
株式会社テイル代表取締役社長。1968年、京都府出身。京都西高卒業後、京都市内の老舗お好み焼店どんぐりに入店。2年間の修業後、1988年、20歳にて、お好み焼・鉄板焼「きん太」を創業。1997年、「日本一のお好み焼屋」になることを目指し株式会社テイルを設立。「きん太」は関西を中心に京都・大阪・奈良・愛知で合計25店舗の人気チェーン。5年間で8割が閉店に追い込まれるといわれる外食業界のなかで、2013年以降、8年間連続で毎年既存店10%の売上アップを記録し、大きな注目を浴びている。自身は、京都西高時代に甲子園出場を果たし、2008年、京都滋賀オープンゴルフ選手権にてプロアマ戦に出場、ローアマを獲得するなどユニークな経歴でも知られる。家族は、6人の子どもに恵まれ4女2男。京都府城陽市在住。本書は「きん太」を支える人づくりの仕組みをはじめて公開した、待望の1冊。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)