本記事は、金原章悦氏の著書『働きやすい会社の仕組みのつくり方』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています

環境整備がもたらした5つの変化

アップ
(画像=bee/PIXTA)

●環境整備で会社が均一化され、仕事の効率がアップ

私が社員たちへの接し方を180度変えたことで、社員たちがそれに少しずつ反応してくれるようなり、彼らの仕事への姿勢や態度、取り組み方などもだんだんと変わっていきました。

それと連動するように、導入した新しい制度がうまく機能し始め、それぞれの効果について、私自身が実感できる機会も増えていきました。この章では、それらの柱となる「環境整備」「経営計画書」「人事評価制度」の3つが、テイルにどのような変化をもたらしたかについて述べていきます。

会社を組織としてまとめるには、社長が先頭にたって、何か大きなことに取り組む必要があります。そして、その中で社員を教育する仕組みをつくらないといけません。

まず行ったことは、環境整備を定着させる仕組みづくりです。「環境整備」とは、簡単に言うと「お掃除」です。お店を綺麗にする取り組みです。

お店で働いている社員、パート、アルバイトさんに、お掃除をしてもらう場所を決めます。その場所を、社長と社員5名で月1回、全店舗を回り、綺麗にできているか、できていないか点検し、点数をつけます。これを環境整備点検と言います。

点数の良いお店、悪いお店があり、それに対して振り返りをさせて、翌月の点検に向けて良い点数がとれるように取り組ませる仕組みです。

環境整備点検で私が一番大切にしているのは「お客様目線」です。

お客様目線になって、きん太で食事をしたとき、どのように感じるのか? そこを重点に置き、教育をしています。

POPは綺麗に揃っているか? モノの定位置は綺麗に揃っているか? 玄関は綺麗か? 窓はピカピカになっているか? おトイレは綺麗か? テーブルの上の調味料はどうか? メニューは揃っているか? といった具合にチェックシートを用いて点検者がチェックします。

これを2010年から11年間、毎月行っています。その結果、会社が大きく変わりました。大きな変化は5つあります。

①お店が綺麗になり、見た目がよくなった

環境整備によって、「綺麗という状態はどのような状態でなければいけないか」綺麗という価値観を指導し、ここまで綺麗にしなければならないという指導をします。モノが整えられ、揃っていきますから、見た目がよくなります。雰囲気がよくなり、社員も明るくなりました。

②均一化が進み、ルールが明確になる

均一化が進み、各店のルールが明確になります。特に掲示物、POPなどの貼り方が明確になり「何をやらなければいけないのか」「何をしてはいけないのか」マニュアルなど、仕事のやり方、考え方が揃っていきます。

③仕事の効率化が進む

モノや食材等の配置場所が決まると、見た目にもスッキリし、かつ作業効率もアップします。

さらに、それらの配置場所は、店舗間で横展開されていき、現在ではどの店舗においても、モノや食材等が同じ場所に置かれている状態になっています。

このようにモノや食材の管理ができるようになると、モノや食材の量が減って、必要最低限になり、その結果、原価率が32%から28%に下がりました。

また、新店をオープンするときには、基本的に従来の店舗と同じ場所に配置すればいいので、配置について余計な労力がかからず、オープン準備に必要な時間も短縮できるようになりました。

仕事の効率化は、労働時間の削減にもつながり、月300時間だったのが、現在では200時間強。平均残業時間も月60時間から、月30時間にまで減りました。

④不正がなくなっていく

以前は、食材の量や数などの定量管理をしていないため、在庫の紛失や盗難がありました。定量管理のレベルが上がることで不正発生率が減っていきました。綺麗に整った明るい店舗では、さすがにお金を横領したり、商品を盗んだりといったことがしにくくなるようです。

⑤業績アップにつながっている

環境整備点検で、社員が学ぶのは「お客様目線」です。「お客様からどう見られているのか」を意識し、そこから「お客様の目線」に気づく習慣が身について仕事に取り組む社員やパート・アルバイトが増えていることを実感しています。

結果的に原価率の改善とあわせて、会社の利益アップにも確実につながっていると確信しています。

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(画像=『働きやすい会社の仕組みのつくり方』より)
働きやすい会社の仕組みのつくり方
金原章悦(かねはら・しょうえつ)
株式会社テイル代表取締役社長。1968年、京都府出身。京都西高卒業後、京都市内の老舗お好み焼店どんぐりに入店。2年間の修業後、1988年、20歳にて、お好み焼・鉄板焼「きん太」を創業。1997年、「日本一のお好み焼屋」になることを目指し株式会社テイルを設立。「きん太」は関西を中心に京都・大阪・奈良・愛知で合計25店舗の人気チェーン。5年間で8割が閉店に追い込まれるといわれる外食業界のなかで、2013年以降、8年間連続で毎年既存店10%の売上アップを記録し、大きな注目を浴びている。自身は、京都西高時代に甲子園出場を果たし、2008年、京都滋賀オープンゴルフ選手権にてプロアマ戦に出場、ローアマを獲得するなどユニークな経歴でも知られる。家族は、6人の子どもに恵まれ4女2男。京都府城陽市在住。本書は「きん太」を支える人づくりの仕組みをはじめて公開した、待望の1冊。

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