本記事は、金原章悦氏の著書『働きやすい会社の仕組みのつくり方』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています

徹底したデータ管理で「ファン」を離さない仕組みのつくり方

割引
(画像=Amaviael/PIXTA)

●頻繁な割引サービスで「きん太=お得」の印象づくり

商品力においては、「価格」も重要な位置を占めています。

そこで重視しているのが、「こんな美味しいものが、この値段で食べられるの!」と、お客様に驚きと感動を提供することです。

といっても、薄利多売の安売りをしているわけではありません。どちらかというと、その逆です。きん太の場合、他のお好み焼屋さんと比較すると、価格は少し高めです。最初から安く価格設定するのではなく、さまざまな割引サービスを頻繁に実施することで、お客様に「こんな美味しいものが、この値段で食べられるの!」というお得感を感じていただけるようにしています。

割引サービスとは、具体的には10%オフのDM(ダイレクト・メール)ハガキだったり、お誕生日月の会員の方にお送りする20%オフのバースデーDMだったり、割引券・半額券つき新聞折込広告やカレンダークーポンだったりです。

折込広告等の割引券・半額券は、1回のご来店で何枚使用してもOKです(「1回のご来店でお一人様1枚まで」といった制限はありません)。また、折込広告の場合、ご利用いただいたお客様には、ご希望があれば会計の際に、さらにもう1枚お渡しして、次回のご来店時にご利用いただけるようにしています。

こうした割引&半額サービスを大盤振る舞いで行うことで、「きん太=お得」という印象をお客様に持っていただくとともに、「きん太に行けば何かある!」というワクワク感を感じていただこう、というわけです。

そして面白いことに、「20%オフ」や「半額」となると、人間は懐が大きくなるのか、「20%オフだから、もうちょっと注文しようか」とちょっと多めに注文してくださるお客様も少なくありません。そのため、割引や半額のサービスをたくさん提供しても、逆に売上が伸び続けます。頻繁な割引サービスは、結果的に「損して得とれ」の戦略となっているわけです。

こうした割引サービスつきのDMハガキやバースデーDM、折込広告などを、来店を促すツールとしてだけでなく、それ以外の目的でも活用しています。

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(画像=『働きやすい会社の仕組みのつくり方』より)

その1つが、「お客様にきん太の存在を忘れられないようにする」ためです。

人でもモノでも、接触回数が多ければ多いほど、私たちはその人やそのモノのことをしっかり覚えているものです。これは、心理学の分野では「ザイオンス効果」(アメリカの心理学者、ロバート・ザイオンスが提唱)と呼ばれていて、接する機会が増えるに従い、記憶に残りやすくなり、さらに親しみも感じやすくなるのだそう。

DMハガキや折込広告が狙っている効果はまさにそれで、ある程度の頻度でお送りすることで、「お好み焼・鉄板焼きん太」という名前を覚えていただき、願わくば親しみを感じていただこう、というわけです。

なお、最近は若い人は新聞をとっていないため、折込チラシの広告効果は弱くなっています。そのため、従来以上にDMハガキを重視する戦略をとっています。店頭でアンケートに答えていただくことで、ハガキを送付する顧客名簿を増やすのです。

●DMハガキのデータを活用して「固定ファン」をつくる仕組み

さらに、DMハガキを、お客様の来店頻度等を管理し、「きん太のファン度」という軸でお客様を分類させていただくツールとしても活用しています。

このハガキは会員登録していただいたお客様にお送りするのですが、会員の方ごとに割り振られたバーコードがDMハガキに印刷されています。お会計の際、レジでDMハガキを提示していただくと、その方が来店されたことやそのときに使ってくださった金額等がデータとして残ります。

こうしたデータに基づいて「きん太へのファン度」という軸で、お客様をいくつかのグループに分類させていただいています。

今のところ、どのグループに属しても、DMハガキを送らせていただく頻度は月に1回ですが、今後はグループごとにお送りする頻度を変えていくことも検討しています。

一方、4カ月以上ご来店くださっていないお客様には、会員であってもDMハガキをお送りしません。というのも、以前、会員のお客様がどういうサイクルでご来店されるかのデータを取ったところ、4カ月以上ご来店されていないお客様の場合、その後に来店される確率がぐっと下がっている結果が出ました。

そこで、DMハガキをお送りするか否かの線引きを「4カ月」とさせていただいているわけです。

あまり関心のないお客様に対して、DMハガキ等を使ってアピールし、「振り向いていただく」のも、販促としては「あり」でしょう。ただ、これは、注いだエネルギーに対して、それほどの効果が期待できません。つまり、費用対効果が悪い。

それよりも、すでにファンになってくださっているお客様に、さらに強力な「固定ファン」になっていただくため、たっぷりのエネルギーを注ぐ。このほうがはるかに効果が期待できます。

ファン度の高いお客様を徹底的に優遇するのです。

2013年以来、8年連続で毎年10%の売上アップを記録している要因として、こうしたDMハガキを活用した「固定ファン」づくりが非常に大きい。

実際、このDMハガキによる集客で年間8〜9億円の売上をつくっています。現在、全体の売上が27億円ですから、DMハガキはそのうちの30%以上を占めているわけです。固定ファンづくりの販促ツールとしてDMハガキがいかに強力かを実感します。

働きやすい会社の仕組みのつくり方
金原章悦(かねはら・しょうえつ)
株式会社テイル代表取締役社長。1968年、京都府出身。京都西高卒業後、京都市内の老舗お好み焼店どんぐりに入店。2年間の修業後、1988年、20歳にて、お好み焼・鉄板焼「きん太」を創業。1997年、「日本一のお好み焼屋」になることを目指し株式会社テイルを設立。「きん太」は関西を中心に京都・大阪・奈良・愛知で合計25店舗の人気チェーン。5年間で8割が閉店に追い込まれるといわれる外食業界のなかで、2013年以降、8年間連続で毎年既存店10%の売上アップを記録し、大きな注目を浴びている。自身は、京都西高時代に甲子園出場を果たし、2008年、京都滋賀オープンゴルフ選手権にてプロアマ戦に出場、ローアマを獲得するなどユニークな経歴でも知られる。家族は、6人の子どもに恵まれ4女2男。京都府城陽市在住。本書は「きん太」を支える人づくりの仕組みをはじめて公開した、待望の1冊。

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