本記事は、伊庭正康氏の著書『超効率的に結果を出す テレアポ&リモート営業の基本』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています
契約に至りやすい「お役立ち資料」とは?
●資料のポイントは「ありがとうね、教えてくれて」
提供すべき情報とは、「契約に至りやすい資料」です。もっと簡単に言うと「ありがとうね、教えてくれて」と思ってもらえるお役立ち情報です。
例えば、求人広告の営業では、若手の定着率アップを実現するノウハウだったりします。こうした資料を画面で共有し、次のようなトークをします。
営業「ところで山田様、いかがでしょうか。最近、若手の定着率はこのような状況になっているんですけれども、山田様のところで、こういった課題への認識は高くなっているんでしょうか?」
お客様は「ないわけじゃない」と、おっしゃったりします。若手の離職に悩んでいる企業は多いので、この資料が「お役立ち情報」になるわけです。
また、定着率は良かった場合でも、次のようなトークで先方の困りごとをヒアリングすることができます。
営業「人材に関する課題は、何かほかにあったりしますでしょうか?」
先方の課題を伺うことができたら、また新たな資料をお見せしたり、別の情報を用意して、後日改めて連絡したりします。
こうして先方に役に立つ情報を提供することによって「ありがとうね、教えてくれて」と思ってもらえる機会をつくっていきます。
資料がなければ「ありがとうね」と思ってもらえる場面をつくれません。お役に立てる情報を提供することで先方の情報が引き出しやすくなるのです。
●何かを提供されたら、お返しをしたくなる
人間には「返報性の法則」というものがあります。
相手から受けた行為に対して、何かを返してあげないと居心地が悪くなる心理のことです。プレゼントをもらった相手には、お礼をしないと心苦しく思ったりしますよね。それです。
ただし、「ありがとうね、役に立ったよ」だけで終わってしまってはボランティアになってしまいます。
「契約に至りやすい資料」は、お客様が困っていることと、こちらがプレゼンしやすいものの中で、お互いにメリットがあるものにする必要があります。
プレゼンがしやすくても、こちらの都合で押し付けるような資料では、お客様の困りごとと一致しないので、契約に至りません。
プレゼンしたい商材と関係がなく、お客様の困りごとも解決しない資料を用意しても、お互いにとって時間のムダでしかありません。
お客様と自分たち、双方にとってメリットのある情報を提供し、お客様から「ありがとうね、教えてくれて」と思ってもらえる──そんなWin-Winの関係になれる資料を用意するのが、リモート営業を成功させるカギとなります。
●リモート営業を「AIDMAの法則」で解説
テレアポやリモート営業では、お客様の心理を把握することが重要になります。そこで、「AIDMA(アイドマ)の法則」の5つの段階を覚えておきましょう。
これはアメリカの販売・広告の実務書を執筆していたサミュエル・ローランド・ホール氏によって提唱された、消費者の購買行動を理論化した古典的な概念です。何かを購入する際、人の心理には次のような動きがあるというものです。
①Attention:営業担当者からの連絡 ②Interest:情報に興味を持つ(警戒心を解く) ③Desire:もっと知りたい、欲しいという欲求 ④Memory:自分の問題と結合させる ⑤Action:ヒアリング・プレゼンの合意
①「営業担当者からの連絡」と②「情報に興味を持つ(警戒心を解く)」は電話でもできますが、③「もっと知りたい、欲しいという欲求」と④「自分の問題と結合させる」は、オンラインで情報共有をしたほうが引き出しやすく、⑤「ヒアリング・プレゼンの合意」に導きやすくなります。下図をご覧下さい。
また、③から⑤は営業担当者のスキルに左右されますが、オンラインで資料を見せることによって、スキル不足を補うというメリットもあります。
情報を提供するスタイルでリモート営業をしている人は、まだ多くはありません。お客様に提供できる資料が「商品の情報」しかない会社が多いからです。
でも商品の情報だけでは、なかなか興味を持ってもらえません。
企業研修でも「商品紹介をする前に情報提供をしましょう」とお伝えしているのですが、会社や業界によっては自分で情報資料をつくることが禁止されていることも少なくないようです。個人情報の漏洩を防ぐために自己紹介ツールさえ禁じられている会社もあります。
リモート営業では「お役立ち情報」が極めて重要です。個人で用意できない場合は、会社と話し合って用意してもらえるように働きかけてみてください。
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