本記事は、浜口隆則氏の著書『生き残る会社をつくる「守り」の経営』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています
守りの3大分野Ⅰ:〈備蓄する〉
●「備蓄」の定義と重要性
「守りの3大分野」の一つ目は「備・散・流」の【備】です。
備は「備蓄」の略です。何かマイナスのことがあったときのために備えることであり、そのための「備蓄」をすることです。
このように会社を守るために備蓄する資産のことを「防衛資産」と呼んでいます。「資産防衛」のほうがよく聞く言葉だと思いますが、それよりも考えてほしいのは「防衛資産」です。資産防衛は資産そのものを守ることですが、防衛資産は会社そのものを守る資産のことです。
会社やビジネスを守るためには、それらを守る資産が必要です。資産防衛よりも防衛資産のほうが重要です。資産を防衛しても、会社が残らなかったら、元も子もありません。もちろん、結果として会社が廃業しても、資産が残っていたら再スタートするチャンスを残すことはできます。そういう意味では資産を防衛するのも悪いことではありません。
しかし、優先順位が高いのは、会社を守ってくれる防衛資産を「会社を守ってくれる盾」として準備しておくことです。資産そのものを守るのではなくて、事業を継続させるための資産のことを考えていきましょう。
防衛資産を考えたときに、まず自問すべきなのは「ピンチのときに最も助けてくれる資産は?」ということです。ピンチのときに最も助けてくれる資産はなんでしょうか? 一度、考えてみてください。
直近の大きなピンチと言えば、2020年からのコロナ禍がありますが、そのときに「あって良かった……」と強く感じた資産は何だったでしょうか? 「これさえあればなあ」と感じた資産は、どんな資産だったでしょうか?
多くの成功し続ける経営者が心の底で考えている、ピンチのときに最も自分を助けてくれる資産は「現金」(預金も含みます)です。身も蓋もない話ですが、それが事実だと思います。私自身も全く同じように考えています。そして、実際に、その現預金の備蓄によって助けられました。「Cash is king」と言いますが、まさにその通りだと感じます。
では、なぜ現預金が「私たちの事業を守ってくれる最も重要な防衛資産なのか?」と言うと、ものすごくシンプルな理由です。
それは、最も「交換可能」な資産だからです。
単純に「お金は重要だから」とか「お金が好きだから」という理由ではなく、お金が持つ最も重要な機能である〈交換可能性〉に理由があります。お金は他の資産に換えていくことができます。これが、お金が持つ最高の機能であり特性です。交換可能性という意味では、お金は他のどんな資産よりも優れています。
たとえば、自社ビルなどに代表される不動産という固定資産を持っていて、それらが高い価値を持っていたとしても、それを他の資産に交換するためには、時間と労力が必要です。そうやって交換に時間がかかっている間に、会社が倒産してしまう可能性は十分にあります。
ですから、交換可能性の高さという意味で、防衛資産として「現預金残高」が最も重要です。
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