地球の画像
(さこうれい子 / PIXTA(ピクスタ))

目次

  1. 1. 脱炭素投資とは
    1. 1.1. 脱炭素投資が注目されている経緯
    2. 1.2. 脱炭素:環境投資によるコロナ禍からのグリーンリカバリー
    3. 1.3. 日本における脱炭素化への取り組み 
    4. 1.4. 脱炭素がもたらす影響
  2. 2. 脱炭素投資のメリットとリスク
    1. 2.1. 脱炭素投資のメリット
    2. 2.2. 脱炭素投資のリスク
  3. 3. 脱炭素投資の具体的な投資対象
    1. 3.1. 脱炭素関連銘柄の一例
    2. 3.2. 投資信託銘柄の一例
  4. 4. まとめ:ノーブレス・オブリージュとしての脱炭素投資

地球規模の気候変動が深刻化するにつれて、その元凶の1つとされる温室効果ガスの排出削減は世界的な課題になりつつある。世界各国は競い合うように脱炭素化への目標を設定し、その実現に向けて具体的に動き始めている。米国や中国といった排出量上位の国ですら排出削減に動き出しているなか、日本でも2050年までにカーボンニュートラル(脱炭素化)を実現するとの壮大な目標が打ち出された。

今後は脱炭素であることが「目標」から「必須」に変化し、さらに脱炭素でないことが企業のリスク要因になることが予想される。しかし、その一方で脱炭素化は、再生可能エネルギー分野や代替エネルギー分野、環境分野などで新たな投資機会をもたらしている。

本記事では、脱炭素化時代に注目したい新たな投資機会や具体的な銘柄などを紹介する。

1. 脱炭素投資とは

脱炭素投資とはどんな投資なのか? 最初に脱炭素投資の概要をマスターしておこう。

1.1. 脱炭素投資が注目されている経緯

脱炭素投資とは、脱炭素化を推進する企業やプロジェクトなどへの投資のことだ。地球全体の気温は年々上昇しており、その影響と見られる異常気象が世界各地で頻発している。これを食い止めるには温室効果ガスの排出を抑制する必要があると考えられており、その元凶とされる二酸化炭素を増やさないようにするのが脱炭素化である。

日本は2020年に当時の菅義偉首相が「2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す」と宣言、これが日本政府による明確な脱炭素化への意思表示となった。世界有数の二酸化炭素排出国であるアメリカではジョー・バイデン大統領が「2030年までに2005年比で50~52%の削減」を宣言、さらに中国も「2030年までに排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラルの実現を目指す」と宣言している。

EU諸国と比較すると温室効果ガスの排出削減に消極的だったアメリカ、中国だが、両国がこぞって脱炭素へ舵を切ったことで地球環境問題への積極的な対応は世界的な流れとなった。

こうした背景により、脱炭素関連の企業やプロジェクトへの投資がにわかに注目を集めるようになった。

1.2. 脱炭素:環境投資によるコロナ禍からのグリーンリカバリー

新型コロナウイルスの世界的な蔓延は、各国の経済に大きなダメージをもたらした。「コロナ後」を見据えた経済の再構築に向けて、脱炭素は大きなビジネスチャンスだと捉える見方がある。

単にコロナ前に戻るのではなく、環境投資によって経済を再生しようというわけだ。これは世界各国の経済政策にも表れており、「グリーンリカバリー」と呼ばれている。

1.3. 日本における脱炭素化への取り組み 

2050年までに脱炭素化を目指すと宣言した日本では、脱炭素関連のプロジェクトが続々と動き出している。脱炭素化への貢献度が高い企業を選んで運用する投資信託の設定や、再生可能エネルギー関連のベンチャー企業の勃興など、投資家としてはこうした動きに注目するべきだろう。

1.4. 脱炭素がもたらす影響

脱炭素化は人類にとって大きな転機となり得る。産業革命以来、大量にエネルギーを消費して豊かな社会を実現してきた実績を敢えて捨て、全く新しい価値観による経済的な豊かさを目指すことになるからだ。

こうした動きから最も割を食ってしまうのは、石炭火力発電をはじめとする化石燃料関連の産業だろう。ESG投資の流れから、こうした関連産業への投資が今後細っていくと考えられる。

2. 脱炭素投資のメリットとリスク

脱炭素投資にはどんなメリットやリスクがあるのだろうか。ここではメリットとリスクのそれぞれについて解説する。

2.1. 脱炭素投資のメリット

世界各国が脱炭素化プロジェクトに巨額の予算を投じていることから、潤沢な資金が脱炭素関連産業に流れる可能性が大きい。将来的な成長産業になる見込みもあり、長期的な投資対象として注目される。

2.2. 脱炭素投資のリスク

投資先としては理想的に映る脱炭素関連分野だが、もちろんリスクもある。最も大きなリスクは産業そのものが未成熟であり、投資先となる企業にはベンチャー企業が多いことだ。経営の足腰が脆弱な企業も少なくなく、脱炭素という衣を着せなければ大金を投じることに躊躇するような企業もある。

また、過度の期待によるバブル化も懸念されている。世界最大の運用会社であるブラックロックは世界の投資マネーの2割程度(およそ2,000兆円)を脱炭素関連にするという目標を掲げているが、これほど特定の分野に投資マネーが集中するとバブルの危険性が懸念される。

2021年に起きた中国の恒大集団による巨額債務デフォルト問題では、その規模は約33兆円である。

脱炭素を掲げていれば何もかもがバラ色というわけではなく、投資先として十分な精査が必要であることは言うまでもない。

3. 脱炭素投資の具体的な投資対象

ここでは脱炭素投資を実現するための投資対象を紹介しよう。いずれも脱炭素銘柄として投資家からの注目を集めており、今後も株価の上昇が見込めるかもしれない。

3.1. 脱炭素関連銘柄の一例

数が多いのですべてを紹介できるわけではないが、有望な銘柄をいくつか挙げてみた。

岩谷産業(8088):
LPガス事業を本業とする同社は、環境分野への投資にも積極的。脱炭素との関わりとしては水素事業が注目されている。

レノバ(9519):
太陽光発電、養生風力発電など再生エネルギーによる発電所を開発、運営する。

タケエイ(2151):
バイオマス発電事業を手がけ、そこからさらに太陽光発電事業にも進出していることが好感される。

ユーグレナ(2931):
微生物であるミドリムシからバイオ燃料を生産。カーボンニュートラルを達成できる燃料として注目される。

3.2. 投資信託銘柄の一例

前項の個別銘柄に続いて、ここでは脱炭素関連の投資信託も紹介しよう。

脱炭素ジャパン(野村アセットマネジメント):
脱炭素関連の優良な国内企業に投資するファンド。組入れ銘柄にはEVや省エネ、リサイクル関連などの企業が並ぶ。

脱炭素テクノロジー株式ファンド(カーボンZERO)(大和証券):
「脱炭素ジャパン」と同様に脱炭素関連の有望な銘柄で運用するファンドだが、「脱炭素ジャパン」との違いは日本だけでなく世界各国の銘柄も組入れている点だ。

脱炭素関連世界株式戦略ファンド(三井住友トラスト・アセットマネジメント):
こちらも世界各国の脱炭素関連銘柄に投資をするファンド。設定来、順調に純資産額を伸ばしており投資家かの注目度も高い。

4. まとめ:ノーブレス・オブリージュとしての脱炭素投資

コロナ禍からの経済再生が世界各国の課題となっている背景もあり、これからの成長分野である脱炭素への期待値は大きい。単に手持ちの資産を増やすだけでなく、社会貢献度の高い分野に資金を投じることは「持つ者の義務」を説くノーブレス・オーブリージュの精神にも合致する。

投資によるリターンを狙いつつも社会に貢献するのが、これからの富裕層のあるべき投資スタンスである。富裕層こそ、この現実から目を背けてはいけない。それが社会的な支持を獲得し、資産や事業の成長につながる時代なのだから。

田中タスク

田中タスク
エンジニアやWeb制作などIT系の職種を経験した後にFXと出会う。初心者として少額取引を実践しながらファンダメンタルやテクニカル分析を学び、現在は自動売買を中心に運用中。FXだけでなく日米のETFや現物株、商品などの投資に進出し、長期的な視野に立った資産運用のノウハウを伝える記事制作に取り組む。初心者向けの資産運用アドバイスにも注力し、安心の老後を迎えるために必要なマネーリテラシー向上の必要性を発信中。