『米アマゾン、ブラックフライデーに環境団体から抗議受ける』そんなタイトルがロイター通信のヘッドラインに並んだのは2021年11月29日のことだった。記事では環境保護団体のエクスティンクション・リベリオン(絶滅への反逆)が、ブラックフライデーに合わせて欧州にある15カ所のアマゾンの倉庫で抗議活動を行ったことを伝えていた。エクスティンクション・リベリオンは「ブラックフライデーが過剰消費への脅迫観念を象徴している」「アマゾンなどの企業が利便性を求める消費者の気持ちを利用して自然界を犠牲にし、消費をあおっている」と批判、一時はアマゾンの英国内の倉庫13カ所とドイツとオランダの倉庫を封鎖する事態となった。

オンラインショッピングが大好きな筆者には、色々と考えさせられるニュースである。筆者はアマゾンに「あおられている」とは思わないし、強迫観念にとらわれているわけでもないが、クリスマス・シーズンを迎えるこの時期はつい財布の紐が緩んでしまう。一方で、梱包に使用された大量の段ボールやパッケージをリサイクルのごみに出す度に罪悪感を覚えることも確かだ。リサイクル素材のパッケージが主流になりつつあるとはいえ、もう少し効率的にごみを減らす方法はないものだろうか? とはいえ、アマゾンの倉庫を封鎖するのは行き過ぎではないか、とも思う。

さて、世の中にはアマゾンのように環境保護団体から非難される企業がある一方で、環境課題に積極的に取り組んで財を成した「グリーン・ビリオネア(Green Billionaires)」と呼ばれる人々もいる。EV(電気自動車)企業テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)や、EV用電池で世界最大手であるCATLの曾毅(ロビン・ゼン)氏などだ。今回は「グリーン・ビリオネア」の話題をお届けしよう。

イーロン・マスク氏が「グリーンランキング」のトップに

地球温暖化,儲かる
(画像=MarBom / pixta, ZUU online)

11月21日、ブルームバーグは「グリーンランキング(Bloomberg Green’s ranking)」を発表した。EVやバッテリー、太陽光発電など温暖化防止に貢献すると見られる商品を開発、あるいはそれらに投資することで莫大な富(グリーン純資産)を築いたグリーン・ビリオネアは「地球上で最も裕福な人」とブルームバーグは紹介している。

まず注目されるのが「グリーンランキング」のトップに立つイーロン・マスク氏だ。ブルームバーグが集計した11月21日時点のマスク氏の純資産は2,883億ドル(32兆5,513億円)となっている。一方、マスク氏のグリーン純資産は2,479億ドル(約27兆9,621億円)で、純資産全体の86%に相当するとブルームバーグは伝えている。

ちなみに、マスク氏はテスラの子会社で太陽光発電システムなどを提供する企業ソーラーシティの会長も務める。ソーラーシティはマスク氏の従兄弟が2006年に米カリフォルニア州で設立した企業であるが、2016年には全従業員の20%を削減するなど苦しい経営を強いられ、約26億ドルでテスラに買収された経緯がある。買収当時、マスク氏はテスラとソーラーシティの株式をそれぞれ22%保有していた。

テスラのソーラーシティ買収は、(テスラの株主である)組合年金基金や資産運用会社の反発を招く結果となった。組合年金基金や資産運用会社は、マスク氏が資金難のソーラーシティを26億ドルで買収するよう「テスラの取締役に強要した」として株主代表訴訟を起こし、買収に費やした金額を(テスラに)返還するよう求めている。一方、マスク氏は今年7月のソーラーシティ買収に関する株主代表訴訟で「持続可能エネルギーへの移行を加速するという自社(テスラ)の長期目標にとって太陽電池パネルを手掛けるソーラーシティは不可欠だったため買収する必要があった」と証言した。

ブルームバーグの「グリーンランキング」のトップに君臨するマスク氏であるが、テスラのソーラーシティ買収に関する訴訟の行方次第ではグリーン純資産に大きな変動があるかもしれない。加えて、次のパートで紹介する中国勢の追い上げも気になるところだ。

「グリーンランキング」で存在感を強める中国の起業家たち